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後継のギガダスト  作者: 産土
死酸島ニューゲーム編

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14/25

14

4話目です。

 


「あ・り・が・とぉ」


 予想外の生温かいビキニアーマーで不覚にも動揺したペスティサイダーは、仮面の奥でニヤついているだろうデトネイの顔を幻視しながら、壁に吹き付けてしまったバブルフォームを剥がしてインベントリに収納していく。


 ペスティサイダーは気を取り直して操縦席に戻り作業を再開した。


 近くでは簡易足場の上でカチャカチャと革製のショートパンツの上に回収したビキニアーマーを履き直すデトネイが居るが、ペスティサイダーは目を逸らし頭の隅から追いやる。


 ペスティサイダーは口内のバブルフォーム…発泡構造となった黒い端材を口からモワモワと吐き出し手の上に塊を作った。

 その大きさは彼の頭の五倍はあり、発泡構造で膨らんだのを差し引いても明らかに量が多い。

 とても口内に収まる小さな欠片とは思えないが、これも【泡沫】そして、大きなモノを扱う難易度が低下する【大型】や【樹液】の効果だった。


 様々なソイルの効果を受け、モコモコな見た目に反して粘土のような確かな抵抗を感じる黒いバブルフォームの塊から拳大の塊を二つ千切り取り、それぞれを別の形に成形して硬化させる。

 最後に仕上げとして【巨人の手】【付与】【強化】によって【耐性】などの耐久力を上昇させる能力を追加効果として付与していく。


 そうして出来上がったのはコップサイズの蓋付きの黒い壺だった。


「これなら【耐性】の拡張スロットに死酸島の砂をセットできる!」


「おめでとぉ、服を作り始めたのかと思ったのに壺なのねぇ…オマエたりないの?」


 デトネイにパチパチと控えめな拍手を送りながら、いい加減に下着くらい履かないの? 諭されるペスティサイダーだったが、念願の死酸に耐えられる容器の完成で浮かれる彼の耳には届いていない。


 熟した果実のような紅い目を子供のように輝かせたペスティサイダーは、引き続き若草色の裸体を晒したまま、死酸島の砂を採取するためにアシッドブレイクの外に飛び出していった。


 五分後。


「おかえりぃ」


「ぉお…ただいま…?」


 くつろぐデトネイの挨拶に困惑と同時に不思議な温もりを感じながら、アシッドブレイク5号の操縦槽に戻ってきたペスティサイダーはボロボロだった。


 若草色の頭髪は失われ、髪と同色の皮膚は焼けただれて変色し、肉や骨が見えている部分があり、左の眼窩からは腐り落ちた果実のように潰れて原型を留めない目玉の残骸が閉じた瞼の隙間からぶら下がっている。


 取り返しのつかない失敗をしてきたかのような姿だったが、死酸島の砂の回収に成功している。


 彼は死酸島の環境ギミックを突破する方法を遂に手に入れたのだ。


「これで本当のアシッドブレイクが作れるぞ」


 カチカチと手甲で拍手を送るデトネイは、座っていた操縦席の半分を譲り、バフバフと座面を叩いた。

 自分の席のような振る舞いをする彼女の行動を特に気にせずにペスティサイダーはそのとなりに身体をねじ込む。


「ところで、名前はガングエイコンじゃないのぉ?」


 デトネイは、特定のプレイヤーと交流を深めたレゴリス教団NPCとして専用ギガダストの建造クエストをペスティサイダーに出したことがあった。


 ペスティサイダーが自身が建造するギガダストにガングエイコンと名付け、異様に執着しているのを把握していた。

 なのに聞き慣れない機体名を使い、所持しているはずのユニークアイテムを使う様子がないペスティサイダーの行動が不思議でならない。


 デトネイはあの隕石は試練を与えるために不死身の後継者たちから様々なものを…ギガダストさえも奪うことを知らされている。


 そんな状態で、不死身であろうと難易度が高い死酸島に飛ばされたペスティサイダーが奪われないユニークアイテムを使わない理由がわからなかった。


「あんっ」


「今はアシッドブレイクだ」


 デトネイの外套を乱暴に掴み、自身よりも位置が高いデトネイの頭を引き寄せ、普段よりも低い声でペスティサイダーはそれに触れるなと告げる。

 ボロボロの身体で強い感情のこもる言葉をぶつけられた彼女はブルリと身体を震わせて外套の下で自身を抱きしめる。


「ふぅぅぅぅ…」


 静かに熱い息を吐いた。


 そんな様子には気づかず、アシッドブレイク5号の疑似生命と接続したペスティサイダーの肉体の傷は瞬く間に癒えていくが、ガングエイコンを失った悲哀は深くなった。


 他人から指摘されたことでより強く喪失感と味わっていた。


 なんでこんな楽しい状況でガングエイコン13号がないのだと。


 彼の視界は狭まり、機体視界に焦点が合わせられる。


 となりで何かに耐えるように震えるデトネイの上昇していく体温も一切無視して、強化された【耐性】で得た能力を使いアシッドブレイク6号の仕上げを始めた。


 そのせいでペスティサイダーは隣で呟かれたその情報を聞き逃してしまう。


「んんっ、なるほど…まだ生きてるの…ワタシとしたことが、オマエの技術を…ガングエイコン13号を過小評価していた」


 ペスティサイダーがユニークアイテムを使わない理由を悟るデトネイは、小さな声でそう呟くと、隣で真剣な表情でギガダスト建造に集中するペスティサイダーの横顔に無言で熱い視線を注いだ。




コメント、ブクマなど評価色々、募集中です。


次回更新は明日18:00の予定です。

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