第55話・TRUST!異世界のポーション裏事情
「俺ここに来たの、すっげー久しぶりな気がする」
目の前には冒険者ギルド。
「夕飯は外で食べてラクしましょ」と華蓮の誘いを断りきれず、重い体を引きずって来てみたはいいものの……。
もう数週間、数ヶ月来てなかったんじゃってくらい懐かしい気がする。
実際は冒険者ギルドの食堂の手伝い以来で、そんな間が空いてる訳じゃないんだけど……。
久しぶりだとこの建物、威圧感がすげぇ。
「ちょっと緊張してきたかも……」
「……なんで?」
「久しぶり過ぎて……ギルマスとも全然会ってないしさ」
「私は二日に一度くらいは来てるから、マスターともたまに会うわよ?」
「……華蓮だけで行ってきてくんねぇ?」
「馬鹿なこと言ってないで。さ、入りましょ」
「へーい……」
俺の緊張を軽くいなされ、いざ冒険者ギルドの扉を開く。
昼もとうに過ぎて、どちらかというと夕方に差し掛かる時間帯だからだろうか。
冒険者の数もまばらにしかいない。
「中入ったら別にどってことなかったわ」
「良かったじゃない。とりあえず受付に行くわね」
「へいへーい」
「あ、カレンさん! こんにちはぁ!」
「こんにちは、モニカさん」
俺達が受付に行くよりも先に声が掛かった。
その声の主は、俺達が初めて異世界に来た時に、色々と手続きをしてくれた受付嬢モニカ。
てゆーか華蓮のやつ、いつの間に名前で呼び合う関係になってたんだ。
雑談するほどの関係でもない俺は、とりあえずぺこりと会釈だけする。
それにしても──
華蓮は意外にも異世界に馴染んでるような気がして、兄としても嬉しい。
が。
俺の方がコミュ力高いからとアレコレさせてきたよな、華蓮。
お前の方が高いんじゃね……?
「ソータさんもお久しぶりです! お二人で採取ですかぁ? でももうすぐ夕方になりますし危ないですよぉ」
「お久しぶりっす。いや、今日は依頼じゃなくて……」
俺はチラリと華蓮の方を見る。
話のメインは錬金術だし、仲も良いみたいだし、ここは兄として妹に任せてみようと思う。
決して、説明が面倒だったわけではない。
そう、断じて。
華蓮がカバンからポーションを一瓶取り出し、カウンターに乗せる。
「実は私、初めてポーションを作ってみたんです。それでそれを見てもらいたくて……」
「ついに錬金術デビューされたんですねぇ! おめでとうございます~!」
「ありがとうございます。でも効果とか効能とか、よく分かってなくて……」
「なるほどですねぇ」
「作り方とかもあってるのか分からないし……」
「なるほどぉ……ちょっと失礼しますねぇ」
モニカさんがポーションを手に取り、色んな角度からまじまじと見つめる。
「少し色味が強い気がしますが、見た目は紛れもなく回復薬ですねぇ」
「すげぇ……見ただけで分かるんすか?」
「さすがに効果のほどは分かりませんが、これでも冒険者ギルドの職員ですからねぇ。ここでも取り扱っていますし、毎日見てるんですよぉ」
「なるほど……ちなみに効果なんすけど、回復薬は傷を治すだけって感じで合ってます?」
黙ってようと思ってたけど、つい興味が湧いて聞いてしまう俺。
「はい、そうですよぉ! 回復薬は傷を癒すものです。グレードによって効果が違いますが、最上級のものですとお腹に穴が空いても塞がるみたいですぅ!」
「へ、へぇー……」
ポーションを掲げながら、満面の笑みでモニカさんが言う。
そんなことを、そんな良い笑顔で言われても怖いわ。
「まぁさすがに、そんなポーションはお目にかかったことありませんけどぉ……」
「グレードによって見た目が変わったりとかしてるんすか?」
「私もそんなに詳しいわけではないんですけど、各ギルドには鑑定器が置いてありましてぇ。基本的にはそれで鑑定してから販売する形となります」
「へぇー!」
「鑑定器を置かずに販売しているところや、錬金術師から直接買う場合は……自己責任となりますぅ!」
「うーん、めっちゃ怖い話っすね……」
「街中で買うものに関してはそんなに心配いらないですけどねぇ、信用問題にも関わってきますし」
「確かに変なことしたら街に居られなくなりそっすね……」
回復薬として買った後に使おうとして「実はただの水でしたー!」なんて目も当てられないもんな……。
俺達も気を付けなきゃな……って、ん?
「鑑定器がないと販売って厳しいっすか……?」
「最初は厳しいかもしれませんが……少しでも固定のお客様が出来れば軌道には乗るかと思いますよぉ」
「売れるまでが大変ってことっすね」
「そうですねぇ」
「ちなみに鑑定器って高いんでしょうか?」
これまで黙ってた華蓮が口を開く。
確かに鑑定済みの保証があれば初動は悪くなさそうだ。
ルーグさん達に使ってもらって、あとはフィンさんの口コミに期待するのもありか……?
でも毎回サクラみたいな真似してもらうのもなぁ。
「そうですねぇ、金貨500枚はくだらないかと!」
──ピシッ
俺と華蓮が石化した。
ご、ごひゃ……!?
「色んな技術の詰め合わせたものらしいのでぇ……」
「……む、無理ね」
「無理だな……」
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