第56話・WAIT!異世界でポーション売りたいだけなのに
「結局、回復薬なのは間違いないらしいけど、グレードまでは分からなかったわね」
「鑑定器は貸してもらえなかったしなぁ」
ギルド食堂で夕飯を食い終わった俺達は、とぼとぼと帰路に着く。
すっかり日は落ちて、ひんやりした風が気持ちいい。
「高価な物だし貸し出せないのは分かってたけど、まさか鑑定すらしてもらえないとはなぁ……」
「最低でも金貨500枚だもの、仕方ないわよ」
「取引している錬金術師との信頼関係が~って言ってたけどさぁ。それとこれとは違くね?」
「個人の鑑定で面倒なことがあったとか、デメリットがあるとかじゃない?」
「なんだよそれぇ……」
「私に言われても分かるわけないでしょ」
鑑定に関しては、出来ないの一点張りだった。
くっそー!
門前払いみたいなことされたら、ギルドへの不満感が高まるだろ!
……俺の不満が溜まったところでギルドとしてはどうでもいいかもしんないけど。
いやまぁ、俺自身も別に溜まってはないが。
「てか、鑑定はどこで出来るのか聞いて来りゃ良かったな」
「それこそ回復薬を売ってるお店じゃないかしら」
「そこでもギルドと同じく門前払いだったら、俺はグレる」
「……好きにしたら?」
「俺がグレたら……うーん……。あっ、メシのグレードが下がるぞ!?」
「……そしたら私がグレればいいのね?」
「人間、やっぱり清く正しく美しく生きなきゃだよな!」
華蓮に飯関係で何かをしたら駄目。
昔、一度だけ華蓮のおやつを横取りした。
いやもう、ただの軽いノリでね?
なんなら「うっそぴょーん」で返すつもりだったしね?
その時の華蓮の怒り方といったらもうね。
うん、この話はやめとこう。
「ま、まぁさ! とりあえずルーグさん達に使ってもらうのがいいっぽいな!」
「そうね。小さい切り傷でも治れば、もうけものじゃないかしら」
「材料はミンミン草だけだしなー」
「それにしても……」
「んあ?」
華蓮がその場で立ち止まり、少し考え込む。
そして意を決したかのように口を開いた。
「……お腹に穴が空くって、どういうこと?」
「あ? あー。んーと……」
気になってるのそこかよ!
確かにリアルに考えると怖いけども!
だけどゲームや漫画だとそういうシーンはたくさんある。
だから俺も流れで普通に受け入れてちゃってたけど、ここは一応、俺達の中では現実世界なわけで。
漫画なんて読まない華蓮からしてみれば「腹に穴が空く」なんて、非現実的すぎて受け入れ難いんだろう。
……いや、俺も怖いし受け入れたくはないけどね!?
「ほら、映画とかでもあるじゃん? それがまぁここの世界でも日常的にあるっつーか、なんつーか」
「ファンタジーすぎて目眩がしそう……」
「でもほら、現実だと切ったり切られたりした傷が一瞬で治るなんてことないしさ!」
「現実だと事故以外で切られることなんて、なかなかないわよ……?」
「受け入れろ、ここはもう異世界なんだから」
「分かってるけど……」
頭では分かってるけどやっぱり受け入れ難いらしい華蓮は、腕を組み頭を捻っている。
いやまぁそうだろうけども。
でもそれ言い出したら、ステータス画面なんてファンタジー中のファンタジーじゃん……?
「まぁ俺らはそういう冒険とは無縁だしさ。あんま気にせずいこうぜ!」
「……兄さんのその楽観的な性格羨ましいわ」
「褒め言葉として受け取っとく」
再び歩き始めた俺達。
しばらく無言でいると、華蓮がまた話し始めた。
「グレードが分かってないものをルーグさん達に使ってもらうのって悪くない?」
「まぁそうだけど、あくまで検証目的でって言えば大丈夫じゃね? 擦り傷くらいのに使ってもらってさ」
「そっか……。毎回お腹に穴が空くわけじゃないのね」
「おま……冒険をなんだと」
「だってモニカさんの説明が強烈すぎて!」
「笑顔なのがまた怖いよな」
「そうなの、たまに怖いの!」
「でもまぁ、良い人なんだろ?」
「うん、それはすっごく。ポーション作ってみればってアドバイスくれたのもモニカさんだし」
「へぇー。なんだかんだ、華蓮がこの世界に馴染んでて良かったよ」
「まだ戸惑うことも多いけどね」
「ゆっくりいけばいんじゃね。……つーか、家でる前と状況変わってなくね?」
「そう? とりあえずルーグさん達の帰りを待つってことに決まったじゃない」
どっちが楽観的なんだか……。
読んで頂きありがとうございます!
応援して頂けると励みになります。




