第54話・POTION!異世界の定番に冷水かけんな!
釜の中のミンミン草は光ったまま。
それを無言で混ぜ続ける華蓮。
しばらくすると。
徐々に液体のようなものに形を変えていくのと同時に、光を失っていく──
光が消えてからじっくり覗き込んでみる。
釜に満タンに入れたはずのミンミン草は、釜の半量にいかないくらいの液体になっていた。
「……出来た、のか?」
「わ、分からないわ」
「この後、どーすりゃいいんだ?」
「そういうのは兄さんの方が詳しいでしょ?」
「詳しいったって……俺だって制作過程なんてよく知らねーよ?」
「私なんかもっと知らないわよ?」
「いや、そりゃそーかもしんねぇけど……。とりあえず小瓶に入れてみるか……少し買っといたよな?」
「十本セットのうち八本残ってる」
「二本どこやったんだよ」
「醤油を入れて一つはルーグさん達に。もう一つは念の為に営業用にカバンに入れてるわ」
「いつの間に……まぁ五本分くらいだろうしいいけどさ」
華蓮のちゃっかりした話を聞きつつ、小瓶に漏斗を差しお玉ですくって流し込む。
これ、もっと良い方法はないんか……?
ぶっちゃけゲームとかだとさ!
ポーションが瓶に入った状態で「成功!」みたいな感じで終わりだし、こんな地道な作業なんかはスルーするじゃん?
現実だとこんなもんなのか……。
「この本数だからいいけど、地味に手間ね……」
「それなぁ……」
「もっと量を作るとなるとしんどそう……」
「途中で瓶を倒しそうだよな」
「やっぱりもう少し、錬金術の勉強した方が良さそうね……」
「だなぁ。近々、道具屋で聞いてみるか?」
「そうねぇ……っと、出来た!」
「おぉー……!」
小瓶に入ったポーションらしきモノを改めて見ると、透明な液体で綺麗な薄緑色をしている。
これぞポーションって色だ。
……うおおお!!
テンション上がる!!!
個人的には米が食えた時よりも上がってるかもしんねぇ!!!!
「すげぇ、すげぇ! マジでポーション出来ちまった!」
「確かに綺麗だけど、そんなに興奮すること……?」
「ばっか、おめー! ゲームと言えばポーション! ポーションと言えばファンタジー!」
「……何を言ってるのか全然分からない」
「……俺もちょっと分かんなくなってた」
華蓮の冷ややかな目のおかげで、少し落ち着いた俺。
てゆーか、強制終了させられた感。
いいじゃんか、たまにはテンションぶち上がったって!!
てゆーか、お前もテンション上げろよ!
ポーションが出来たんだぞ!?
華蓮にとってポーションが出来たことはそんな大事ではないらしい。
まぁ、華蓮にしてみれば《異材精製》の方が感動するか……。
でも……でもさー!!
そんな俺を尻目に、華蓮がポーションを一つ手に取ってまじまじと眺めながらぽつりと呟く。
「ねぇ、これはどこで売るのがいいのかしら?」
「うーん、そうだなぁ……。ゲームだと道具屋とかで売ってるけど、ルーグさんかギルドで聞く方が確実だよな」
「ルーグさん達はあと二、三日は帰ってこれないし、ギルドの方がいいかも」
「隣町まで護衛つってたしな、それがいいかも」
「準備したら行く?」
「行きたいけど、正直まだ身体がしんどいんだけど……」
「ポーション飲む?」
手にしたポーションを、ずいっと差し出す華蓮。
試してみたいって顔に出てんぞ。
「いやこれスタミナポーションじゃねーしさ……」
「……そもそも回復薬と活力薬って、実際どう違うの?」
「え? それは、えーと」
あれ? そう言われると俺も分からん。
「ゲームだと傷を負ったり、HPが減ったら回復薬。なんだよな」
「活力薬の方は?」
「スタミナ……を回復させる? レインさんも疲れには活力薬って言ってたよな」
「HPとスタミナは別物ってこと?」
「まぁそりゃゲームの話だしなぁ……レインさん帰ってきたら、その辺も聞いてみっか」
「そうね……どちらの方が売れやすいかとかもチェックしなきゃ」
「お、おう」
「じゃあ、少し休憩したらギルドに行ってみましょう!」
「お、おう……」
俺のしんどさはスルーすることに決めたらしい。
動けないほどではないからいいけどさ……。
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