第53話・MIX!異世界でイーヒッヒッ
「さーてと、まず回復薬でも作ってみっか?」
「そうね、ミンミン草ならたくさんあるし」
「必要なもんは?」
前に買っておいた錬金術の本を見ながら華蓮が言う。
「えーと……ミンミン草だけみたい」
「それをどうするかとかは書いてあんの?」
「……書いてないわね」
「やり方とか……」
「書いてないわね……ただのアイテム図鑑みたい」
「と、とりあえずミンミン草に手をかざしてスキル唱えてみるとか?」
「やってみる。え、と……《調合》」
華蓮はテーブルに置いたミンミン草に手をかざしスキルを唱える。
……が、変化する様子はない。
「……」
「……」
まずは適当に調合してみるかー! くらいのノリだったのに、こんな最初で躓くとは思ってなかった。
世の中の錬金術師は、アカデミー的なところで勉強でもしてるのか?
取説もなしに無理だろ、こんなん。
「あっ! 前に錬金術に必要だって何か色々買わされたよな?」
「そうだったかしら?」
「そーだよ、店のおっちゃんがあれもこれもって壺とかフラスコとか乳鉢とか!」
「そういえば……?」
「乳鉢はすり潰すのに便利で台所に置いてあるけど、他はどこに置いてあるんだよ」
「壺もフラスコも花瓶にしてるけど……とりあえず壺持ってくるわね」
そーいやいつもカウンターの上に花が一輪飾ってあったけど、これフラスコだったのか……。
今日まで出番がなかったとはいえ、花瓶にするのはどうなんだ?
いやまぁ、使い道なかったんだけどさ……。
うーん、でも道具が揃ったところでどうにかなるんか?
俺達は壺やらフラスコを錬金術に使うだろう程度の知識しかないのにさ。
「お待たせ。先に洗っちゃうわね」
「おう……」
バスケットボールくらいの大きさの壺を抱えて華蓮が二階から降りてきた。
そのまま台所へ向かい、近くの森で取ってきたっぽい花を取り出して壺を洗う。
「さ、準備オッケーよ」
「オッケーよ、って言われてもなぁ……」
やり方が分からんのは変わってないつーの。
「うーん……この壺にミンミン草入れてやってみるとか?」
「ねぇ。壺って言うけど、これって釜じゃないかしら?」
「そんなんどっちでも……あ」
そーだよ、釜じゃん!
「なに?」
「いや、錬金術といえば釜なんだよ!」
「そ、そうなの?」
「釜に材料入れて棒とかで混ぜるんだよ!」
「……そうなの?」
「ほら、ガキの頃にCMで観たろ! 混ぜれば混ぜるほど色が変わって……って練る知育菓子!」
「あれ魔女じゃない?」
「それはそう。じゃなくて。とにかくゲームとか漫画だと釜でグルグルしてんだって!」
「ふーん……?」
いまいちピンと来てない様子の華蓮。
まぁぶっちゃけ俺も釜にテンション上がっただけで、実際の錬金術が釜にどう関係するとかは知らんけどさ。
「とにかく釜にミンミン草入れてやってみようぜ!」
「釜に入れただけでそんなに変わるかしら?」
「そー言われるとそうだけど……これでダメならレインさん辺りにでも聞いてみっか」
「そうしましょう」
釜から溢れるくらいにミンミン草を入れる華蓮。
ざ、雑だな、こいつ。
まだ分量とか分かんねーから、仕方ないっちゃ仕方ないのか。
「いくわね」
「おう!」
「《調合》」
華蓮は釜に手をかざし、スキルを唱える。
すると釜自身が反応したかのように少し光り、しばらくするとその光は中のミンミン草へ移る。
そして光ったままのミンミン草が、徐々に形を変えていく──
「……? 光ったままだな」
「完成……なの?」
「分かんねぇ。でもルーグさんがポーション使ってくれた時さ、少し光ってたよな?」
「覚えてないけど、こんなに光ってなかった気がする……」
「だよなぁ」
下手に手を出すのも怖くて、釜を見つめ続ける俺達。
「変わんねーな……」
「……混ぜてみる?」
「混ぜる?」
「イーヒッヒッ……って」
「……やってみろよ」
「……」
俺を睨みつける華蓮。
お前が言ったんじゃねーか!
無言で台所へ向かい菜箸を持ち、そのまま無言で釜を混ぜ始める。
「イーヒッヒッ」って言わねーのかよ!
などとは言うまい。
引っぱたかれそうだし。
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