第51話・TEST!異世界で新スキルの可能性に賭けてみました
「美味いな、これ!」
「本当に……これがクロミの実だなんて信じられません」
翌日。
みんなの冒険前の腹拵えも兼ねて、少し遅めの朝飯を振舞った。
もちろん生姜焼き。
朝から重くね? とは思ったけど、昨日来れなかったルーグさんとセラさんに絶対食べて欲しい! とフィンさんの希望でそうなった。
セラさん以外、冒険前にそんな食っていいのか?ってくらい食いまくるルーグさん、フィンさん、レインさん。
冒険には行かない華蓮も食いまくる。
俺も朝飯はちゃんと食べる方だけど、おかわり三杯とか無理なんだけど。
どうなってるんだ、こいつらの胃袋。
「っはーっ! 食った食った!」
「ね? 美味しいでしょー!?」
「ああ、こんなに美味いなら昨日も食いたかったな!」
「このハクマイも、ショーガ焼きに合うよねー!」
「ハクマイもほんのりと甘みがあって美味しいです……」
「いや、ショーガ焼きはパンに挟んでも美味いと思う」
「それ絶対美味しいと思います、レインさん!」
「カレンもレインも食いしんぼだなー!」
「うるせー」
飯を食い終わってからも、生姜焼きや白米について議論している。
おい、お前まで参加するなよ華蓮。
うーん、でも確かにパンに生姜焼きとキャベツを挟んでも美味そう。
昼飯用に用意してみるか……めっちゃ喜びそう。
多めに作っておいた生姜焼きとキャベツをパンで挟み、布で包んで麻紐で軽く縛る。
紙がありゃ楽なんだけどなぁ。
「はい、昼飯っす。少し多めに作っておきました! 夜とかの分はいいんすよね?」
「ああ、ありがとう。今回は隣町への護衛で、往復で四、五日は掛かる。腐っちまっても嫌だしな」
「ソータさんの料理が食べられないのは残念ですが……」
「帰ってきたらいっぱい食べたーい!」
「ははっ、たくさん用意しときます!」
「やったー! 楽しみー!」
「そういや……」
携帯食をそれぞれしまう中、レインさんが口を開く。
これまで無口だと思ってたレインさんは、食事を振る舞うようになってから意外と喋ってくれるようになった。
パーティの中では唯一気難しそうな人だったし、飯を気に入ってくれて打ち解けられたのは素直に嬉しい。
「なんすか?」
「お前のスキル、結局なにをどこまで出来るんだ?」
「さぁ……まだ試してないんでなんとも言えないっすね……」
「試しておけよな」
「そ、それはもちろん……」
すっかり忘れてたなんて言えない。
さすが魔術師のレインさん。
スキルの把握には厳しいんだな。
「私がしっかり兄さんを見張っておきます。皆さんが帰ったら新作を食べられるように」
「ああ、頼むぞ」
それが目的かーい。
確かにまだ不明なことも多いし、把握しておきたかったけどさ!
それよりもなんで華蓮は、即座にレインさんの意図を理解してるんだよ……。
「また新作食えるのか? なら張り切って依頼を終わらせないとな」
「わたくしも楽しみです」
「ショーガ焼きよりも美味しいのー? 楽しみー!」
「楽しみだよなぁ」
ルーグさんとレインさん、少しニヤついてるし!
くっそー、見てろよ!
ぜってー美味いもん食わせちゃる!
でもハードルぶち上げるのはやめてくれ……。
「そんなことより……時間大丈夫っすか?」
朝から依頼があると言っていたから、この時間に集まったはず。
……なのに、そんなのんびりしてていいのか?
「やべっ、そろそろ行かねーと」
「お腹いっぱいになったし頑張ろー!」
「ソータさん、ご馳走様でした。行って参りますね」
「検証忘れんなよ」
「分かりましたって……」
「皆さん、お気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとな! じゃあ行ってくる」
バタバタと慌ただしく出掛けていくメンバー。
朝から騒がしいのも久しぶりで悪くはない。
けど朝から六人分の食事を作ったし、騒がしさもあって疲れた……。
俺がテーブルで少しうなだれていると、食器を片しながら華蓮が口を開く。
「誰かと一緒に朝ご飯食べるなんて久しぶりで楽しかったわね」
「俺は正直少し疲れたけど……楽しかったのは間違いないな!」
「さてと……私達も薬草採取の依頼でも受けに行く?」
「んー、その前に《自動調理》の検証しようかと思うんだけど」
「そうね……そのままお昼に出来るし」
「何作ろうか」
「検証だし、また生姜焼きでいいんじゃないかしら」
「昨日も今日も生姜焼きで飽きねーの?」
「あと一週間はイケるわ」
「マジかよ」
昨日の晩飯に続いて、今日の朝飯に昼飯も生姜焼き。
いくら日本食が恋しくても三食連続はいかがなものだろうか。
俺は別のもん食いたいけど……華蓮に食のことで逆らうまい。
「切る工程は問題なく出来てたし、調理自体も出来るのかやってみっか」
「どうやって?」
「俺も詳しくは分かんねーけどさ……」
玉ねぎは皮を剥いて丸ごと、生姜は一欠片、魔獣肉はブロックのまま、あとは調味料。
とりあえず生姜焼きの材料を皿の上に乗せる。
材料を乗せた皿に手をかざし、意識を集中して生姜焼きをイメージ──
「《自動調理》!」
皿全体を光が包み込み、しばらくすると光が消える。
ドッ……。
「……!?」
「兄さん!?」
「あぇ……?」
光が消える瞬間は見た。
それと同時に俺は床に倒れ込んでいた。
「や……べ、ちょう……つかれ、た……」
「そ、そのようね……」
「で、出来てる、のか……?」
「言いにくいんだけど……お肉と玉ねぎの所々が生っぽいわね……」
「ま、まじかよぉ……」
「い、炒め直せば食べられそうよ……?」
「そ、そういう問題じゃ……ねぇ……」
がくっ。
その言葉を最後に、俺は意識を完全に失った。
まさか丸二日、寝込むことになるとは思わなかった。
……使い所を間違えると死ぬな、こりゃ。




