第48話・HARVEST!異世界で初めての冒険にしゅっぱーつ!
俺達は冒険に出ていた。
そう、目的はクロミの実、ただ一つ。
醤油を日常的に使いたい──
てなわけで、クロミの実の大量ゲットを目指していざ冒険!
目的地は街から少し離れただけの近くの森。
魔物らしい魔物も出ず、駆け出し冒険者にうってつけの場所らしい。
それは冒険なのか?ってツッコミならノーサンキューだぜ?
そんな訳で案内役を買って出てくれたフィンさん、そんなフィンさんに無理矢理引っ張られたレインさん、俺と華蓮の四人で森へと向かったのだった。
「ったく、なんで俺まで……」
「イイじゃんー! 採取も楽しーよー?」
「せっかくのオフだったのによ……」
「ま、まぁまぁ! 昼飯は美味いの用意してますから!」
「やったー! ね、レインー来てよかったでしょー?」
「レインさんはハンバーガーお好きでしたよね? 新作なので楽しみにしてて下さい!」
「お、おう……」
ぶつくさと文句を垂れていたレインさんも、華蓮のハンバーガー発言に押されてか黙ってしまった。
レインさんって身体も細身だし、食も細そうなのに意外と食べるんだよな……。
その辺は華蓮と通ずるものがある。気がする。
さーて、採取採取!
「うおお、なんか見たことないのがいっぱいある!」
「この辺は薬草が多いよー!」
「この森には毒性のあるものは少ないが……分からないものには触れるなよ」
「うっす!」
「本当は全部持ち帰って解析したいけど、キリがないわね……」
「マジでそれな!」
異世界にある物が、全て現代食材に変換出来る訳ではない──
と気付いたのは、以前いくつかの食材を試した時だった。
現代と同じような野菜はスキルを使っても特に変わりなかったし、薬草なんかは変換出来るものと出来ないものがあった。
スキルを使うのもそれなりに体力を消耗するし、むやみやたらに使うのはやめよう。
俺と華蓮はそう約束していた。
とは言え──
醤油の原料となるクロミの実を知った今、そんなこと言ってられねぇ!
華蓮に関しては、体力の続く限り醤油に変換する! と息巻いていた。
俺はというと、一度解析しちゃえばそれ以降する必要がないらしく……。
必要スキルではあるけど……なんていうか、あまり使い所がないスキルに少しがっかりしている。
まぁ料理をするために体力温存しておける、と考えよう。うん。
か、悲しくなんかないんだからねっ!
「ソータ、カレーン! ほら、あったよー!」
「おっ!」
森に入って十五分もしないうち、クロミの実はあっさりと見つかった。
低い草木にたくさんの実が付いていて、見た目はまるで野いちごがなっているようだった。
「野いちごみたいね……」
「こうして見ると美味そうだよなぁ……」
「クロミの実を知らないガキは、森に入っておやつ代わりにって一度は口にするんだ」
「そーそー! 割れるまでは匂いもしないしねー!」
「私も知らなかったら食べちゃうかも……」
「俺も……ってか、レインさんも食っちゃったんすか?」
「……うるさい」
ひと舐めしただけであの渋さ。
口の中で破裂したらそれこそ毒なんじゃ……?
「お、大人は止めたり教えたりしてくれないんすか……?」
「……好奇心が強いガキが、目の前に美味しそうな実があって食うのを止めると思うか?」
「……思わないっすね」
「そういうことだ」
うん、俺と華蓮なら絶対食ってるわ。
「よ、よーし! 早速採取しますか! 華蓮、瓶出してくれ!」
「分かった」
華蓮はアイテムボックスから大きめのガラス瓶を取り出した。
「では取ったらこちらに入れて下さい。……出来るだけ割らないように」
「割れたら大変だもんー! 気を付けなきゃねー!」
「収穫したら昼飯にしますか!」
「さっさと終わらせるぞ」
数分後、ガラス瓶の半分くらいに実が集まった。
割れないようゆっくりやったけど、四人でやると早いなー。
「……てか根こそぎ取っちゃったけど、いいんすかね……」
「クロミの実を欲しがるやつなんていないし、問題ないだろ」
「それにどこでも生えてるしー! もっと森の奥に行けばいくらでもあるよー?」
「なら良かった……! クロミの実は定期的に欲しいっすからね!」
「兄さん、ガラス瓶もう一つあるけど……」
「こんだけあればもういいだろ……さて、昼飯にしますか!」
「やったーあ!」
俺はアイテムボックスから、朝作っておいたハンバーガーを取り出す。
「さー、どぞ! テリヤキバーガーっす!」
「テリヤキー?」
「あの醤油から作ったソースなんす!」
「お、美味しいのー……?」
「大丈夫なのかよ……」
「味見もしてるっす!」
「私はハンバーガーの中で、テリヤキソースが一番好きです」
少しテンションの下がった二人に、自信満々に答える俺と華蓮。
魔獣肉パティ、輪切りのトマトと玉ねぎにレタスをサンド。
そこにテリヤキソースをたっぷりと塗った、特製テリヤキバーガー。
……マヨネーズはないから少し寂しいけど。
ビジュアルに関しては文句なしの出来栄えだ。
「いただきまーす」
ばくっ。
華蓮がいち早くかぶりつく。
もぐもぐと満面の笑みで食べてるのを見て、フィンさんとレインさんもそれに続く。
「な、なにこれえ……!」
「……!」
二人は目を見開き、顔を見合わせると勢いよく食べ進める。
よっしゃ、気に入ってもらえたみたいだ。
やっぱり醤油は正義だな!
「ね、美味しいでしょう?」
「ごくん……うんっ! 美味しいー!」
「……美味い」
「でしょ! でも醤油の凄さはこんなもんじゃないっすからね!」
……ちょっと大袈裟に言い過ぎたかもしんない。
いや、俺は醤油の凄さを伝えたかっただけなんだ。
「食い終わったら、もう一つのガラス瓶を満タンにするまで収穫するぞ」
まさかのレインさんがこんなこと言い出すなんて。
……実は華蓮に負けず劣らず、食いしん坊なんすか?
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