第38話・MISSION!異世界の食堂を改革せよ!
「……ところで、お前の料理の腕を見込んで一つ頼みがあるんだが」
「俺を見込んで……!?」
おいおい、まいったなぁ。
華蓮じゃなく、俺を見込んでだって?
なんだよもー、初めから言ってくれよ!
怒られるだけだと思って無駄にビクビクしてたわ!
「俺に出来ることならいくらでも!」
「おっ、さすがはソータだな」
俺が拳を作って胸を叩くと、マスターはニカっと笑いながら腕を組んだ。
「それで何すればいーんすか?」
「ああ、実はな。冒険者ギルドの食堂のことなんだが──」
冒険者ギルドの食堂。
存在は知ってたけど、冒険者じゃない俺達は使ったことはなかった。
つーか強面の人が多すぎて、そこで飯食うの怖かったんだよね。
「トマトソースがあっという間に広がっただろ?」
「ええ、まあ、はい、すんません」
悪くないのについ謝っちまう小心者の俺。
「ギルド食堂でもいわゆる流行りっていうのか? そういうモンが欲しくてな」
「はぁ……」
「冒険に行く前、帰還した後。ギルド食堂で食うやつが多いんだが……」
「トマトソースが広まったから、利用者が減ったということですか?」
静観していた華蓮が口を開いた。
その問いに大きく頷くマスター。
「まぁ昨日の今日で早計かとは思うんだがな……」
そしてチラリと副マスターを見る。
ということは、言い出したのは副マスターってことか?
「午前中に様々な店を見て回りましたが、どこもトマトソースを使った料理を提供していました。ですが、そのほとんどがパンや肉にかける程度の使い方です」
「まぁそれが無難な組み合わせっすからね」
「どの店も今後トマトソースを使った独自の料理を増やしていくでしょう」
「あくまでソースだから、それをどう使うかは料理人次第っすけどね」
「ええ。ですから冒険者ギルドとしては、いち早くトマトソースを使った独自の料理を編み出したいのです」
書類を見ながら眼鏡をくいっと上げる副マスター。
「なるほど……?」
「そこでだ」
ギルドマスターはニヤリと笑った。
「今度はうちの食堂にも力を貸してくれねぇか?」
「トマトソースを使ったレシピを考えろってことっすか?」
「その通りだ。もちろん報酬は払う」
「もちろん良い──」
「待って、兄さん」
快諾しようとした瞬間、華蓮に口を抑えられた。
なんだなんだ、今度は何企んでるんだよ。
「内容は分かりましたけど……掲示板の依頼とは異なりますよね?」
「ああ。掲示板は依頼人は様々だが、この件に関してはギルドマスターからの依頼と思ってくれ」
「……となると、冒険者ランクには関係ない依頼ということですか?」
「ああ、そうなるな」
「そうですか……」
なるほど、華蓮の考えが読めた。
掲示板の依頼に関しては、未だに薬草採取しかしたことがない俺達。
初心者用依頼だから、ランクだって全然上がっていない。
だからこれを依頼掲示板と同等にしてくれって言いたいんだな。
よーし、それなら兄として一肌脱ぐか!
「ぼ、冒険者ランクが上がると、俺のやる気も上がるなぁ!」
棒読みすぎた。
噛むより恥ずかしいわ、これ。
「なるほどな」
意図を察してくれたのか、くくっと笑うマスター。
「そうだな、成功した暁にはランクを上げる……ってのはどうだ? もちろん金も払う」
「ありがとうございます、頑張ります。兄さんが」
「うん、まぁ、頑張るけどな」
そこは「二人で頑張ります」で良かったんじゃないですかね。
「どんな料理かは、俺に任せてもらっていいすっか?」
「ああ。それともう一つ条件として、魔獣肉を使ってくれ」
「はい?」
「冒険者ギルドは買い取りもしてるからな」
「いや、そーじゃなくて。魔獣肉ってそこそこ高級で、尚且つ扱いにくいやつですよね」
「お、なんだ、知ってるのか?」
「いや、まぁ……」
魔獣肉は美味かったけど、臭み消しとか大変なんだよな……。
ヨーグルトはさすがにないだろうし……。
「いやてか、後出しずるいっすよ!!」
「お前、最初に『出来ることなら何でも』って言ってただろ」
「……ぐっ!」
「兄さん、頑張って!」
ちょ、調子乗るんじゃなかったああああ!
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