第36話・KNOCK!異世界に休日はありません
「うぅぅ……腕いてぇ……」
ベッドの上で呻きながら、俺はのそのそと身体を起こした。
昨日の屋台騒ぎから一夜。
あれから閉店まで、ほぼノンストップでトマトソースを作り続けた結果──腕が終わった。
料理をして筋肉痛なんて初めてなんだが??
重い身体を引き摺りながら一階に降りると、テーブルに突っ伏してだらけきってる華蓮がいた。
うん、華蓮も相当疲れてるっぽい。
「おあよーさん……」
「おはよ……」
さすがの華蓮も疲れてるのか、顔を伏せたまま挨拶だけ返ってきた。
俺も向かいに座り、同じポーズでだらける。
「ヤバかったな、昨日は……」
「……そうね……本当に……」
「俺、最後の方なんか記憶ないんだけど……」
「……どうやって帰ってきたのか分からないわ……」
俺はトマトと玉ねぎを切って炒めて混ぜて、華蓮はそれを配ったり説明したりと延々と繰り返す。
その間にもどんどん人は増え続け、途中から何が何だか分からなくなってきてた。
気付けば屋台の周りでは、知らんおっちゃん達の叫び合う声なんかも響いてた。
「こっちの方が合う!」
「いーや、こっちの肉の方が!」
「パンが美味くなるならパンに付けるべきだ!」
「だから魚だって言ってんだろぉ!?」
とか、どうでもいいことで言い争いを始めたりさ。
そのうち収集がつかなくなってきて、商人ギルドの人達が仲介に入って終わった。
その後どう収まったのかもよく覚えてない。
気付けば帰宅していた俺達は、夕食も取らずにベッドに倒れ込んだ。
……気がする。
「にしても、つっかれたよなぁ……」
「まさかあそこまで人が来るなんて……」
「思わねーよなぁ……」
「思わなかったわ……」
ぐきゅるるる……。
ほぼ同時に俺達の腹が鳴る。
俺達はこんな状態なのに、腹の虫は元気だなぁ……。
「つーか、腹減ったよな……」
「減った……昨日のお昼から何も食べてないもの……」
「もうちょい休憩したら作るからさ……」
「お願い……買いにいくのもしんどいもの……」
「そんかわりさ、今日は休日ってことにしねぇ……?」
「賛成……ご飯食べたらまた横になりたいわ……」
その時だった。
コンコン、と玄関の扉が叩かれる。
「誰だよこんな時間に……」
「こんな時間ってもう昼よ……」
俺も華蓮も動こうとしない。
つーか動きたくない。
「誰だか知らんけど、居留守しよーぜ……」
「……そうね、そうしましょう……」
俺と華蓮は息を潜める。
いや、ただただぐったりしてるだけだけど。
──コンコンコン
「…………」
「…………」
無視。
──コンコンコンコン
「…………」
「…………」
しつけーな。無視。
コンコンコンコンコンコン!!
「くっそ、しつけぇ……」
「そのうち帰るんじゃないかしら……」
華蓮の鋼のメンタルはビクともしないようだ。
俺はそろそろ耐えきれなくなってるっつのに。
「しゃーねぇ……出るか……」
「いいけど、手短にね……」
俺はのそっと起き上がり扉へ向かう。
扉を開けると、マードさんが立っていた。
「いやいやいや、どうもソータさん」
「どもっす……」
「凄くお疲れですね……?」
「まぁ、はい……お陰様で……」
扉を支えに立っている俺を見たマードさんは気まずそうに笑っていた。
「昨日は行くのが遅くなり申し訳ありません。相当大変だったようで……」
「あはは……いやでもマードさんのせいじゃないんで……」
「あの、少しお邪魔しても……?」
「えっと、俺も華蓮もこんな状態っすけど……」
「ええ、お疲れのところ申し訳ないのですが……。あとこれ、差し入れも買ってきましたので……」
そう言ってマードさんは紙袋を軽く持ち上げる。
……飯!?
「俺達、昨日から何も食ってなくて……助かるっす……!」
「では失礼して……」
「話は飯食いながらでもいいっすか? 華蓮、飯だぞ!」
「もちろんですとも!」
「マードさん、ありがとうございます……」
ようやく顔を上げ、マードさんの方を向く華蓮。
もしマードさんが手ぶらで来てたら、狸寝入りに切り替えてたんだろーな、華蓮は……。
やっと飯にありつけた俺達。
しばし無言で食べるのを、マードさんはニコニコと待ってくれていた。
……俺達、食いながら「美味い」しか言わなかったもんな。
結局食い終わるまで、話なんか進むわけもなかった。
俺達が食べ終わったタイミングで、マードさんが切り出す。
「それで本題なんですが……ギルドマスターがお会いしたいと」
「……へ?」
一瞬、思考が止まる。
「な、なんでっすか!?」
思わず声が裏返った。
ギルドに呼び出し!?
待て待て待て。
俺達なんかやった!?
「昨日の件──ですか?」
「えっ、おま、なんでそんな冷静なん!?」
「昨日の騒ぎからしたら、そんな驚くことでもないでしょ?」
「ええー……」
「ええ、はい……多分、その件かと」
騒ぎになったから怒られるとか……?
せっかく落ち着いたと思ったのにいいい!
読んで頂きありがとうございます!
応援して頂けると励みになります。




