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俺たち双子は世界を救わない。~自由気ままな異世界グルメスローライフ~  作者: 京野きょう


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第34話・TURN!異世界のおばちゃんも最強でした

 屋台の前を、何人もの人が通り過ぎていく。


 ちらり、と視線を向けながら。

 いや、ちらりどころじゃないな。

 ガン見されてる。


「……なぁ華蓮」

「なに?」

「俺らさ、めっちゃ見られてね?」

「見られてるわねぇ」


 華蓮は平然と串焼きを齧りながら頷いた。

 いやお前、また食ってんのかよ。


 通り過ぎる人達の視線が、やたらこちらに向いている。

 というか、遠巻きに見てる人も増えた気がする。

 その上、ひそひそ声まで耳に入るし。


「……あそこだろ?」

「買わなくても試食は出来るとかなんとか」

「レシピは店で使っても構わないとか……」

「異世界人ってのはよく分からんな」


 聞こえてますよー!?


 思わず頭を抱える俺とは対照的に、華蓮はどこ吹く風だ。


「いいじゃない。宣伝としては大成功でしょ」

「成功なのか? これ……」

「興味がなければ噂にすらならないのよ?」


 まぁ、それはそうなんだけどさ。


 屋台の前を、ゆっっくり通る人は多い。

 が、立ち止まる人はいない。


 も、もどかしい!


「やっぱし警戒されてんのかなー」

「そりゃそうでしょ。急に現れた異世界人が、見たこともない料理のレシピを無料で配ってるのよ?」

「うーん、改めて聞くと怪しさ満点だな」


 自分で言うのもなんだけど。


 すると近くを通った男二人組の会話が、また耳に入った。


「でもルーグ達も食ってたんだろ?」

「ああ。フィンがうるせぇくらい騒いでたな」

「冒険者にも売れたらしいぞ」


 ここだ!!


「ルーグさんお墨付きのトマトソースですよ! おひとついかがっすか!?」

「おぉっ!?」


 俺は思わず身を乗り出して声を掛ける。

 まさか話し掛けられるとは思っていなかったのか、びくっと肩を震わせるおっさん達。

 そのままずりっと後退った。


「い、いや、俺達はほら、な」

「あ、ああ! 間に合ってるからよ!」

「あっ、待っ……!」


 そしてそのまま逃げられた。

 俺の差し出した手が虚しく弧を仰ぐ。


「あんな勢いで話し掛けるから……」

「う、うっせー! まさか逃げられるとは……」

「でもあの人達はルーグさん伝いで、今後買う人になると思うわよ」

「そうかぁ……?」


 トマトソースを買ってもらうのが目的じゃないのは分かってる。

 けど、何もあんな逃げなくたって……。

 分かりやすく落ち込む俺を見ながら、華蓮が続ける。


「本命は屋台の人達なんだから、落ち込まないでいいわよ?」

「でもさぁ……」

「あーもう、うるさいわね。串焼きでも食べてなさい」

「へい……」


 俺がもしゃもしゃと食べていると、向かいから一際大きな声がした。


「ここだったんだね、カレンちゃん!」

「おばさま、お待ちしてました!」


 ん?

 その声の主をよく見ると、俺達が異世界に召喚されてすぐお世話になった屋台のおばちゃんだった。


「もらったレシピは気になるけど、まずは味見させてもらわんとね!」

「ええ、ぜひ! ほら、兄さん!」

「お、おお!」


 トマトソースをパンに乗せて手渡す。

 すると、おばちゃんはまず上に乗ったソースだけ食べた。


「うん、うん……なるほどね」


 ブツブツ言いながら、次はパンごとかぶりつく。


「美味いね、こりゃあ! これがあの手順で出来ちまうってのかい!?」

「はい!……あ。おばさま、串焼き持ってきてくれました?」

「もちろんさ。お土産分もね!」

「わぁ! ありがとうございます!」


 おばちゃんが持ってきた串焼きに、そーっとトマトソースを乗せる華蓮。

「さぁ、どうぞ」と促されたおばちゃんは、そのままひと齧り。


「んん……なんだいこりゃあ……!」

「美味しいでしょう?」

「合うねぇ……!」


 飲み込むと、俺達の方を向いて続けるおばちゃん。


「あんたたちと初めて会った時、味付けのこと言われて、何言ってんだって思ったけどねぇ。なるほどね、そりゃ味付け欲しくなるわな!」


 カッカッカッと豪快に笑う。

 正直あの時のことは、知らなかったとはいえ失礼だったよなーって思ってた。

 だから余計に嬉しいわ。


「気に入ってもらえて良かったっす!」

「これソータが作ってるんだろ? たいしたもんだねぇ!」

「へへ! ……あれ? 俺の名前教えてましたっけ?」

「カレンちゃんから聞いてるよ?」

「へー!……って、二人いつの間に仲良くなってたんすか?」

「知らないのかい? カレンちゃんはうちの常連さんだよ?」

「おばさま! しーっ!」

「おい」


 突然一人で出掛けたり、ギルドに行くだけにしては帰りが遅いなって思ったりしてたけど……。

 何だかんだ、一人楽しんでたわけだな?


 まぁ異世界物に馴染みがなかった華蓮が、楽しんでるのは兄としても嬉しいけどさ。


 ……俺も誘えよ!

読んで頂きありがとうございます!

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