第32話・OPEN!異世界の屋台は前途多難
翌日の昼。
俺たちはそこに立っていた。
屋台街と呼ぶには有り得ないレベルで閑散としている。
「人いなさ過ぎて草……つーか、更にちょっと奥行けば紛うことなき森じゃねぇ!?」
周囲を見渡しながら、叫ぶ俺。
他の屋台も見当たらない。
市場の奥の方にある、手入れがあまりされていない場所。
俺たちに宛てがわれたのは、そんな場所だった。
……かろうじて商人ギルドは見える。
「兄さんが寝坊なんかするから……」
「それはごめんだけど! つーかお前もじゃん!」
トマトソースを並べながら華蓮が言う。
「こんなお昼時に屋台の確保なんて、そりゃ無理よね」
「俺は徹夜でトマトソース作ってたんだっつの! 華蓮こそ珍しく寝坊しやがって!」
「私だってレシピ描き起こしたり、戦略考えてたりしたの!」
不毛な言い争いをする俺たち。
確かに、朝に強い華蓮に任せっきりだったのは悪かったけどさー。
なにもこんな時に寝坊しなくても良くね?
……って言うと倍返しされるからやめよ。
「でもさー。こんな場所しかないなら、明日でも良かったんじゃねぇ?」
「……トマトソースに消費期限なければ、それでもいいけど?」
「ぐ。」
手作りだし冷蔵庫もないし、もって三日くらいだもんなぁ。
多いのか少ないのか分からんトマトソースが20個。
腐らせるわけにはいかねぇ。
「幸いお昼時だし、せめて半分は売れるよう頑張りましょ。残りは夕飯に使えばいいし」
「そーだなぁ……」
適当に相槌を打ちながら、小鍋をアイテムボックスから取り出した。
「なぁ……アイテムボックスに入れておけば腐らないんじゃね?」
「……そうなの!?」
「試してないから分からんけど、よくある異世界物はそういうパターンが多い気がする」
「そういうのは、ちゃんと確かめておくべきでしょ……」
「いや、メシ系入れたの今回が初めてだし。それになんつーか、まぁ……忘れてたし」
睨まれて、ため息つかれた。
だって普段は使ってねーんだもん!
「よ、よし! 試食用のソース鍋も、スライスしたパンも準備ばっちりだ! 」
誤魔化すためにわざと明るく振る舞うも、軽くスルーされた。
……そうか、こいつ腹減ってるんだな。
「な、なぁ華蓮! メシまだだしさ、屋台で食ってきていいぞ!」
「……いいの?」
「お、おう! 俺のも何かテキトーに買ってきて!」
「分かった」
鼻歌を歌いながら、他の屋台へ向かっていく華蓮。
やべーやべー。
急いで来たからメシ食い損ねてた。
てか、華蓮を買い出しに行かせたのはいいけど、どーすればいいんだ?
人が来る気配もない。
客引きしようにもここから離れるわけにもいかねーし……。
……俺もメシ食いに行けばよかったか?
「腹減ったあ……」
華蓮が出かけてしばらく経った頃。
既にやることがない俺はダラけていた。
いや、ダラけるしかやることないからね!?
呼び込もうにも、こんな場所じゃ人が遠い。
叫んで声を掛ける勇気など、さすがの俺にもない!
……えばれたことじゃないけど。
そんな訳で、華蓮が昼メシ持って帰ってくるのをただひたすら待つ。
「ひーまーだー……」
「ちょっと兄さん……何ダラけてるのよ」
「おかえり、俺の昼飯!」
「はぁ?」
「あ、おかえり華蓮!」
あぶねぇ、つい本音が出た。
「いくらお客さん居ないからって……遠目でもサボってるのバレバレだったわよ」
「だってヒマでさ……」
「呼び込みとかしなさいよ、得意でしょ?」
「いやお前、こんな所じゃハードル高いって……ってルーグさん!」
「よっ! ははっ、退屈そうだな」
「僕たちもいるよー!」
いつもの冒険者スタイルで立っていたのはルーグ一行。
こうして見ると本当に冒険者っぽい!
「ルーグさん達は今から冒険すか?」
「いいや、今帰ってきたとこでな。腹拵えしてからギルドに寄ろうと思ってたら……」
「カレンに会ったんだよー!」
でかした華蓮!
これで客ゼロは免れた!
……いや、ルーグさん達はある意味すでに顧客だけどさ。
「俺たち初出店なんすよー!」
「そうらしいな。だから冷やかしにきてやったぜ!」
「ひでぇ!! 買ってってくださいよ!」
「俺たちが買ってってもいいが、広めるためなんだろ?」
「ぐっ……そうでした」
「まぁサクラにはなってやれるから……おい、フィン!」
「まっかせてー!」
そう言うとフィンさんは、人混みの中へ駆け出した。
「あいつのコミュ力は半端ないからな。しばらく待ってろ」
笑いながら言うルーグさんに、うんうんと頷くセラさん。
助かるー!!
って、待てよ?
わざわざ出店しないでも、フィンさんに紹介頼めば良かったんじゃね……?
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