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俺たち双子は、世界を救わない。 ~料理人と錬金術師の異世界スローライフ~  作者: 京野きょう


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第29話・VALUE!異世界の商人が釣れました

 ニコニコとチキンステーキを頬張る二人を見ながら、ようやく肩の力が抜けた。


 さっきまでの地獄みてーな空気が嘘みたいだ。

 マジで通報とかされるかと思ったわ……。


 皿の上はあっという間に空になり、満足げに息をつく二人。

 その様子を見て、心底ほっとした。

 華蓮も満足そうな顔をしている。

 二人が受け入れてくれたからだろう。

 決してチキンステーキ二枚食ったからじゃない……はず。


「いやいやいや……ソータさんの腕前、しかと堪能させていただきました」

「ええ、ええ……本当に美味しかったです」

「いやぁ、満足してもらえて良かったっすよ」

「……さて、ソータさん」


 マードさんが改めてこちらに向き直る。

 和やかだった空気に、ぴりっとした緊張が走った。


 あ、あれ?

 なんか怖いっすよ、マードさん……?


「このトマトソース、何度も言いますが本当にお見事でした」

「あ、あざっす……?」

「どうでしょう。こちらのトマトソースを、うちの店に卸していただくのは」

「……卸す?」

「ああっ、ずるいですよマード兄さん! ソータさん、是非ともうちに!」

「はぁ……」


 予想外の展開に、間抜けな返事をしてしまった。

 商品になるってマジ話だったんだー……。


「これは冒険者……いや、一般家庭や飯屋にも画期的なものになるはずです」

「味気ない食事をしている者がほとんどですからね……」

「いやでも、まだ価格とかも……なぁ、華蓮!」


 小難しそうな話は華蓮にパス!

 どうせ主導権握るのは華蓮だし。


「そうね……。ちなみに、ひと瓶でいくらくらいになると思いますか?」

「そうですな……銀貨3……4、いやいやいや5……」

「新しいものですからね。銀貨10枚はいけるのでは? 最終的には少し下がりそうですが……」

「いやいやいや、トマトの他にも材料使われてますよね?」

「しかしメイン素材はトマトですよ? いくら新しい調味料といえど……」


 マードさんとヤードさんの言い合いを、ぼーっと眺める。

 ぶっちゃけ、高いのか安いのか分かんねぇ……。

 でも店で一食分の食事が銀貨1枚くらい。

 うーん……?

 つーか、華蓮は何で黙ってんだ。


「知り合いの冒険者の方には、銀貨3枚で定期購入していただく予定なんです」


 ルーグさんのことか。

 確かに前、そんな話してたよーな。


「……なんと! いささか安すぎでは!?」

「いやいやいや、それは勿体ない。今からでも変更した方が……」

「いえ。この世界に来た時から、お世話になっている方なんです」

「……なるほどなるほど」

「それに……。ねぇ、兄さん」

「んあ?」


 気の抜けた返事をした瞬間、華蓮に睨まれた。

 ……ゴメンナサイ。


「兄さんはトマトソース屋さんになりたい?」

「はぁ? そんなわけあるかよ! 大体……あっ」

「そういう事なんです」


 いくら俺でも、今のは分かった。

 トマトソースを売り出し始めたら、そればっかりになる。

 冒険どころか、他の料理すらするヒマがなくなる。


「なるほどなるほど……」

「そうしましたら、数量を絞って売り出す……ではどうでしょうか」

「んん……それなら何とか……? なぁ、華蓮」

「それも考えたんだけど……」


 華蓮が言い淀む。

 め、珍しい……!!

 俺に無理させるか、金額をふっかけるかの二択だと思ってた。

 でも俺は華蓮が決めたことなら、それに従う。

 抵抗したところで言いくるめられるしね……。


 しばらくして、華蓮が口を開いた。


「このトマトソースのレシピ、無料で公開したらどうかしら?」

「……なるほどなるほど……は?」

「いやいやいや、華蓮さん……」


 それだけ言うと、二人は沈黙した。

 というか、完全に固まっている。


 確かに、金は手に入らない。

 けど、この街の食事が豊かになるなら、俺たちにとってもありがたい。

 新しいレシピも増えるかもしんないし。

 きっと考えあってのことだろうし。

 反対する理由なんかねーな!


「うん、それいいんじゃね?」

「…………はああああっ!?」


 マードさんとヤードさんの、絶叫とも言える声が部屋に響いたのだった。

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