第26話・BUSINESS!異世界の商人と攻防戦?
「いやはや、驚きました……!」
マードさんは興奮した様子で身を乗り出す。
「ヤードから話は聞いていましたが、まさかここまでとは……!」
「話……?」
思わず聞き返すと、マードさんは「ああ」と頷いた。
「最近、不思議な兄妹に住宅を斡旋したと。異世界の話など大変興味深く……」
「その節はヤードさんにお世話になりました」
「いやいやいや、弟も仕事ですから。それよりも!」
「はい??」
挨拶合戦もそこそこに、声を大きくするマードさん。
「このトマトソース! 実に見事な……味もさることながら、パン……いやいやいや、仰る通り何にでも合いそうですな」
「そっすね! 鶏肉なんかもすげー美味いっすよ!」
「おお、それは……! こちら、譲っていただけないでしょうか? 是非試してみたい」
「いいっすよ──ん?」
快諾しようとしたら、華蓮から肩を捕まれストップが掛かる。
あ、これ俺は黙ってろってことな。
「お気に召していただけて嬉しいです。……ですが、こちらまだ価格が決まってないのです」
あれ? 確かルーグさんには銀貨3枚だったような。
「ふうむ、なるほどなるほど……」
「調理法は企業秘密ですが、メイン食材はトマトです。ですが手間の掛かる製法でして」
「安価なトマトをここまで……調味料にもさぞ秘密がありそうですな」
「うふふ……」
「ほほ……」
バチってる。
俺でも分かる、商人同士の戦い。
トマト一山が銀貨5くらいで、二~三瓶出来るから……ん? どうなるんだ?
えーい、めんどくせぇ!!
「マードさんはいくらなら買ってくれるんすか?」
「兄さん……」
「おやおやおや……せっかくカレンさんが交渉してらしたのに」
「いやまぁ、そーなんすけど。でも華蓮も、ヤードさんの兄貴に吹っかけるつもりなんかないだろ?」
「それはまぁ……ね」
高く売りたいって気持ちもあるにはある。
でも華蓮はそこまでがめついわけでもないし、世話になった人を無下にする奴でもない。
「マードさんも値踏みする感じは出してたけど、本気じゃなさそうだったし……」
「いやいやいや……ソータさんも本質を突ける方なんですな」
「人を見る目はあるほうっす!」
「いやいやいや、お見逸れしました。すみません、私も商売人としての癖がつい……」
マードさんの表情が一気に優しくなった。
やっぱりヤードさんとすげー似てるな……。
「もう、兄さんたら」
「ごめんて。でも先輩商人と仲良くなっといて損はねーだろ?」
「まぁ……」
「つーかお前、交渉が楽しくなってきてんだろ」
「何のことかしら?」
そっぽ向いて口笛を吹く。
うわ出た、吹けないのに口笛吹くマネ。
誤魔化せてねーんだよ……。
「マードさん、失礼しました。……でも価格が決まってないのは本当なんです」
「なるほどなるほど……私ならば、という観点で良ければアドバイス差し上げましょうか?」
「え……良いんですか……!?」
「ええ、これも何かのご縁です。アドバイス料を払えとは言いませんので」
さすがに悪い気がする。
むしろヤードさんには俺たちが世話になってたし、その上マードさんにまで……。
そーだ!
視線を向けると、華蓮が小さく頷く。
同じ考えみたいだな!
「マードさん、これから時間あります?」
「ええ、店に戻るだけですが」
「でしたらうちへ来てください!」
「構いませんが……ここでも大丈夫ですよ?」
「俺の飯、ご馳走させてください! アドバイスはその後にでも。な、華蓮!」
「ええ、マードさんが良ければぜひ」
「いやいやいや、是非ともお邪魔させていただきます」
俺たちはテーブルから立ち上がり、自宅へと向かう。
すると華蓮はふと足を止め、進路を変えた。
「兄さん、私はヤードさんを迎えに行ってくるわね」
「分かった、準備しとく!」
「よろしく」
「いやいやいや、弟までよろしいのですか?」
「もちろんっすよ! さ、行きましょー!」
昨日のビーフシチューもまだ残ってる。
あとはトマトソースに合いそうなものをいくつか作って……。
その出来次第で、もらえるアドバイスも変わってきそうだ。
トマトソースの良さ、思いっきり見せてやる!
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