第25話・ MEET!異世界で実演販売してみました
値切り交渉が始まって、早数分。
周りに人がちらほら集まってきた。
いやもう、恥ずかしいからあああ!
……あ、終わった。
周りが、「おおー!」と騒ぐ。
よほど見応えがあったらしい。
そんな華蓮はにんまりした表情でピースをし、俺にアピールしてくる。
「お待たせ」
「で? 結局どうなったん?」
「二人で金貨一枚!」
「すげぇ、半額かよ! でも華蓮はもっと粘るかと思ってた」
「私たちはこれからこの街で商売するんだから、遺恨の残りそうな交渉はしない方がいいもの」
「そりゃそーだ」
……軽く言ってるけど、遺恨なければもっと攻めたっていうことなのか?
「でも半額くらいなら大目に見てくれるかなって」
「やっぱすげーよ、お前」
「ふふん、もっと褒めていいのよ?」
「華蓮すげー! さいきょー! さいこー! 」
「……」
華蓮はじっと俺を見つめ、睨んでから受付に歩き出す華蓮。
小声で「うざっ」って言ったの、聞こえてるからな!
「ではこのタグから支払います」
華蓮がそう言ってカウンターに置いたのは、俺のギルドタグ。
おい。
「……なんか文句あるの?」
「ないっす!」
「それにしてもカレンさん! 素晴らしい交渉でしたよ!」
「いえ、そんな……」
「限界の見極めも適正でしたし、理路整然と交渉してらして……カレンさんならきっと上手くいきます!」
「兄はこういうの向いてないので……」
「そうですね……ソータさんは素直に支払おうとしてましたし、壺など買わないよう気をつけてくださいね?」
「うっす! 頑張ります!」
そこまでアホじゃないやい!
……と、強く言い返せないのが悔しいいい!
「さて、このあとどうする?」
商人ギルドを出て少し歩くと、広場がある。
そこにはテーブルにベンチが置いてあり、周りには屋台がずらっと並んでいる。
フードコートみたいなもんかな?
そこで買った串焼きを食べながら、午後のことを相談する俺たち。
「そうね……依頼を受けるついでに冒険者ギルドのマスターに報告した方がいいんじゃないかしら」
「あー、確かに! しばらく会ってないもんな」
「あのう、すみません……」
最後の一口を飲み込んだ時、見知らぬおっさんに話しかけられた。
「……ごくん。なんすか?」
「ああ、失礼しました。私、商人をやっておりますマードと申します」
「はぁ……」
「そちらのお嬢さんの商人ギルドでの交渉を見てまして……貴方達の商品が気になって、お声かけさせてもらいました」
あのギャラリーにいた一人か。
それにしてもなんか見たことあるな、この人……。
「えっと、俺たちは料理を売ろうと思っていて……」
「ほう! 飯屋を開くのでしょうか?」
「まずは品物を作って販売をしようかと思ってるっす」
「なるほどなるほど……それは面白い」
商売敵というわけでもなさそうで、にこにことした表情を浮かべている。
「そして、その品物のトマトソースがこちらに」
──ドン!
実演販売ばりのタイミングで、トマトソースの瓶を取り出しテーブルへ置く華蓮。
……いつの間に?
「持ってきてたんだ?」
「商売の話をするのに、現物持ってこなくてどうするのよ」
「うぐ、確かに……」
「ソースというと……なんの料理に掛けるんでしょうか?」
ソースの販売自体が珍しいのか、しげしげと瓶を眺めながら値踏みするような視線を向ける。
「こちら何にでも合うんです。お肉や野菜、パンなんかにも」
「何にでも、とは大きく出ましたね」
ははっと笑うマードさんの様子をよそに、華蓮が次に取り出したのはスプーンとパン。
そしてスプーンでひと匙取り、マードさんに手渡す。
「お味見どうぞ?」
「これはこれは、ありがとうございます………………!?」
口に入れた瞬間、目を見開くマードさん。
「これは……!」
「お次はこちらもどうぞ」
そう言って、ちぎったパンにトマトソースを乗せて手渡す。
そしてそれを食べた瞬間、プルプルと震え出す。
「……これを作ったのは、一体どなたで……!?」
「兄です」
「あ、俺っす」
「!?」
俺は手のひらを上げ、華蓮は俺を両手で指す。
そしてそんな俺たちを交互に見るマードさん。
コントか?
「あのう、間違っていたら申し訳ないのですが……」
「……? なんすか?」
「ソータさんとカレンさん、ですか?」
「……!?」
俺たちを知ってる……?
ちょっと一気に怪しくなってきたぞ、このおっさん。
少し怪訝な表情をする俺たちに気づき、慌てて続ける。
「私、ヤードの兄なんです」
「……」
「ええええっ!?」
ヤードさん。
俺たちが家を借りる時に、色々と世話になった仲介人だ。
どうりで見たことあると思ったわけだわ。
……おっさんなんて言って、すみませんでした。
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