第24話・MERCHANT!異世界の商売は甘くない
昨日の騒がしい夜が明けた朝。
朝飯を食べてから身支度をし、商人ギルドへと向かうべく準備をしていた。
「とりあえず冒険者タグあればいいんかな」
「いいと思う。冒険者ギルドの時は何も持ってなかったしね、私たち」
「そいやそーだった!」
「ま、何とかなるわよ」
華蓮にしては珍しく軽い返答。
……また何か企んでるんか、こいつ。
ま、考えてもしゃーない!
「うっし、行くかー!」
俺が勢いよく扉を開けると、いつも通りのいい天気。
まだ朝早いというのに、通りにはすでに人の行き来がある。
露店の準備をしている人、冒険に行くのか足早に歩く人達。
俺たちが向かうのは商人ギルド。
街の中心部にある冒険者ギルドとは違い、商業区にあるという。
そんなわけで俺たち二人は、賑やかな市場の方へと足を運び始めた。
「あー! 俺たちも早く冒険に行きてーなぁ!」
「私たちが行っても、戦闘では役に立たないわよ?」
「料理人と錬金術師だもんな……」
「それなら冒険から帰ってくる冒険者……ルーグさんみたいな人達を、癒したりする方がいいんじゃないかしら」
「む、一理あるな」
「でしょ?」と華蓮が笑う。
確かにそれもありだよなー、下手に気を使わせるのも悪いし。
俺達は俺達で出来ることをしよう。そーしよう。
……でもせっかくの異世界、少しは冒険したかったのが本音だけど。
「でもさー。改めて考えてみたんだけど、トマトソースなんて売れるか?」
「美味しいんだもの、絶対売れるわよ」
「なんでそんなに自信満々なんだよ!」
「ルーグさん達も買ってくれたでしょ。しかも向こうからの申し出よ?」
「そーだけどさ……っと、ここか」
商業区の中心に、一際でかい建物を発見!
外観は冒険者ギルドと似てるけど、明確に違うのは紋章。
冒険者ギルドの「交差した剣と盾」の紋章に対して、こちらは「天秤と硬貨」の紋章が飾られている。
初めて冒険者ギルドに入った時とは違う緊張感で、俺は重い扉を開ける。
──ギィィ……
思ったよりも人はまばらで、騒がしさも冒険者ギルドと比較すると控えめだった。
とりあえず受付に向かう俺たち。
受付には制服をきちんと着こなした、落ち着いた雰囲気の女性がいた。
「あそこが受付かしら?」
「ぽいなー。よし、今日は華蓮が話しかけろよ」
「え、嫌だけど」
「即否定すんな!」
「ここはやっぱり、コミュ力高い兄さんが適任だと思うの」
「え、そ、そーか?」
「うんうん」
「それならしゃーねーな!」
華蓮が俺を褒める時は、面倒事を押し付ける時が多い。
……上手く乗せられたあとに、気付く俺も俺だけどさ。
まぁ横からフォローしてくれるからいいんだけど、なんか悔しい。
「すんません、商品を売りたいんですけど……」
「かしこまりました。商人ギルドへの登録は初めてですか?」
「はい! 冒険者登録はしてるんすけど」
「ではそちらのタグに情報を追加しますので、お預かりしてもよろしいでしょうか?」
「華蓮も一応しておくか?」
「そうね……何かあった時のために私もしておく」
首から下げたギルドタグを外し、二人分のタグを受付の女性に渡す。
「少々お待ちくださいね」
そうして何やら照会しているのか、手続きを進めているようだ。
……え、まさかこれで終わりか? 簡単すぎねぇ?
「……はい、こちらご確認出来ましたのでお返ししますね」
「これで登録は終わりなんすか?」
「そうですね、事務手続きは以上です」
冒険者タグが身分証代わりだから、情報を追加するだけでいいのか。
めっちゃ便利やん!
「ありがとうございました!」
「あ、お待ちください!」
「はい? まだ何かあるんすか?」
「はい! 登録料がお二人合わせて金貨二枚となります!」
「……はい?」
さっきとは打って変わって、にっこりと笑う受付の女性。
「……き、金貨二枚……?」
「はい!」
「聞いてないんすけど……」
「聞かれませんでしたので! それとこちらにも書かれていますよ?」
ほんとだ、小さく書かれてる!
やり口が完全に詐欺じゃねーか!
真面目そうな雰囲気に騙されたわ、こんちくしょー!
「……と、このような商売人もいますので。お気をつけくださいね」
「……! なるほど、気をつけます!」
商人らしい洗礼のやり方なのか。
会う人みんな良い人ばっかりだから、そういうのは頭になかった。
物を売るというのは、騙し騙されの世界でもあるのかもしれない。
気を引き締めていかねーとな!
「では金貨二枚! 頂戴いたします!」
「……それは本当なんすね」
華蓮を見ると、なんか小声でブツブツ言っている。
「なるほど、勉強になるわ……」
「おい、詐欺なんて絶対しないからな」
「当たり前のこと言わないでくれる? 今回は私たちの確認不足。きちんと支払いましょう」
てっきり華蓮は怒ると思ってたんだけど。
「……これも商売ってことよね?」
「まぁ、そうなんだろ? だから気をつけるように一芝居売ったって感じだったし」
「そうよね。……待ってて」
そして華蓮は受付さんに話しかける。
「登録料、まけてもらえませんか?」
「まぁ……、交渉ですか?」
「おい、華蓮! お前、何言ってんだよ!?」
「だってこれも商売なら、値切り交渉は普通でしょ?」
「だからって事務手続きを値切るなんて、聞いたことねーわ!」
ここで何故か、両者からストップの手が向けられる。
あれ、間違ってるの俺だけ?
「素晴らしい試みです、カレンさん!」
「ありがとうございます。……では銀貨二枚でお願いします!」
「さすがに、そんな額では受けられません」
そして始まる二人の値切り攻防。
俺はただ一人、ぽかんと眺めることしかできなかったのだった……。
……華蓮がいて良かったな、いやほんとマジで。
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