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主殿、我だけを見よ~異世界で助けた奴隷少女は元・魔王軍幹部!?独占欲と戦闘力が規格外な娘と遺跡探索スローライフ~  作者: 猫村りんご


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【第114話】大樹の村の地下遺跡 2階

【第114話】大樹の村の地下遺跡 2階


下の階へと続く階段を見つけるまでの間、俺たちは三度ほどスケルトンに遭遇した。

そのどれもがナヴィが軽く腕を振るうだけで粉々になっており、戦闘と呼ぶにはあまりにも一瞬だった。


三度目のスケルトンを撃破した後、スケルトンの残骸を前にノイラがしゃがみ込んだ。


「……少し、観察してもいいですか?」


砕けた骨の破片を、ジッと眺めている。

俺も隣に腰を下ろして一緒に眺めていると、粉々になった骨の中でも、さらに砂のように細かな粒子が、床へと吸い込まれるように沈んでいくのが見えた。


「あれ?消えた?」


目を凝らすと、それは確かに石の床へ溶けるように消えている。

ノイラは慣れた手つきで手帳を取り出し、さらさらと書き込みながら言った。


「この遺跡……おそらく、循環型です」


「循環型?」


「魔物の死体や残骸を、時間をかけて遺跡が取り込んで……それを魔力に変換させる構造、です」


「なるほど」


「魔物が居着きやすい遺跡に多い仕組みだ。蓄えた魔力を使って破損した遺跡の修復や、罠の維持だったりを遺跡自体が行ったりね。他には、吸収された魔力が一定量が蓄積されると、再び魔物の発生源になることもある」


クレイが後ろから補足をしてくれる。

なるほど。とりあえず、この遺跡は割とエコだということは理解できた。



その後もノイラの探知に従い、昆虫型の群れを避けながら進み、無事に地下二階へと辿り着いた。


再びノイラの探知魔術が展開される。


「一階と同じく、昆虫型とアンデット型です。でも、数は少なめで……んと……フロアの片側に偏っています」


「偏ってる?」


「はい。こちらの道は、ほとんど反応がありません。階段にも近いです」


ノイラが左側に見える道を指差す。こちらが魔物のいない安全なルートらしい。

戦闘は避けるに越したことはないため、こちらの道を進むことに。


そうしてしばらく歩いた先で、魔物のいない理由が分かった。


「……原因はこれかぁ」


フロアの一帯が大きく陥没していた。

それだけではなく、その底には水が溜まり池のようになっている。

おそらく、魔物が多いもう一方のルートは水没していないのだろう。


水は非常に澄んでいて水底には瓦礫が見える。結構深そうだ。

ためしに水面に指を入れると、びりっとするほど冷たい。


「冷たっ!」


「ふむ……泳いで渡るのは難しそうだね。引き返して、魔物のいるルートを進むのが無難だろう」


「す、すみません……こんな状況だったとは分からなくて……」


「まあまあ、気にしないで。ノイラのせいじゃないよ」


俯くノイラを励ましていると、リズベルが俺を指差した。


「コレ、アンタがいれば渡れるんじゃない?」


「え?」




リズベルの提案はこうだ。

俺が魔力の腕を脚代わりにし、一人ずつ向こう岸へ運ぶ。

ノイラの説明ではこの先に下へ進む階段があるらしく、たしかに一度引き返すよりはその方が確実に速い。


「あー……たぶんできるとは思うけど」


背中から腕が生える都合上、おんぶは無理だ。

となると――前から抱えるしかない。

流石に女性の多いこのメンバーでそれは気まずいというか、恥ずかしいというか……


なんてことを悩んでいると。


「むぅ……そんな面倒なことせんでもよい!これくらい我なら人を担いで飛べるわ!こい小娘!」


「は!?ちょ、待っ――」


言い終わる前に、ナヴィがリズベルを強引に肩へ担いだ。

そして。


ドンッ!!


助走をつけてからの鋭い跳躍。

――が、しかし


「あっ」


「うわあああっ!?」

「ぬおおおおっ!?」


向こう岸一歩手前、二人まとめて派手な水飛沫を上げて池へ落下した。


「す、すごい跳躍ですね……」


ノイラはぽかんと口を開けており、レイが言葉を選んでフォローし、クレイは口元を手で隠し笑いを堪えていた。



しばらくして、水から這い出たリズベルがびしょ濡れのままナヴィに文句を言っていた。

とりあえず、二人とも無事そうだ。




震えながら向こう岸で二人が待っているので、当初の案で進むことになった。


クレイ、ノイラ、レイの順番で運ぶことになり、クレイは楽しそうに腕を広げる。


「よろしく頼むよ」


「し、失礼します……」


首に腕を回してもらい、横抱きにする。

……まさか女性をお姫様抱っこする日がこようとは。


しかし、クレイは細身ではあるものの、こうやって成人女性を抱えるというのは結構重……


「……何か変なことを考えてないだろうね?」


「ひいっ!?」


思わず背筋が凍る。

向こう岸ではナヴィが「くっつきすぎじゃー!」と叫んでいた。






魔力の腕を三本展開して地面へ突き立て、脚のように使って進む。


しかし三本ではややバランスが悪く、慎重に進んではいるものの進むたびにぐらりと揺れる。


「い、意外と揺れるね」


「申し訳ない……」


揺れるたびに、クレイがぎゅっとしがみつき、心臓がドキリと跳ねる。

――が、これは密着による匂いとか感触とかではなく、向こう岸から飛んでくるナヴィの視線のせいだった。


めちゃくちゃ不機嫌なナヴィが今にも飛びかかってきそうなくらいこちらを睨みつけていた。

ナヴィさん不可抗力なんです!ほんとに!すみません!




無事反対側へ到着したあと、荷物からタオルを取り出し、震えている二人へ渡した。

機嫌が悪いままのナヴィはタオルを受け取ると、じとりとこちらを睨んでくる。


「着替えたいのじゃ」


「はい……」


指輪からナヴィの予備の服を出した直後、横から声が飛ぶ。


「ねぇ、アタシの分は?」


声の方へ視線を向けると、ナヴィの被害者であるリズベルがびしょ濡れのまま腕を組んでいた。ほんとすみません…!


「ナヴィのサイズは合わないだろうし、他に女性用の服は持ってないから……俺ので良いなら」


指輪から取り出した俺の予備の服を差し出す。


リズベルは受け取った服を一瞬見つめたあとそっぽを向いた。


「……ありがと。着替え、覗くなよ」


「はいはい」


「返事が軽いんだよ」


そんなやり取りをしているとクレイが静かに前へ出てくれた。

どうやら壁になってくれているようだ。助かった。(色んな意味で)


背を向け、水場へと再び足を向ける。


濡れた衣擦れの音が聞こえ始めたので、なるべく急いで距離を取った。




次はノイラの番だ。


「よ、よろしくお願いします……」


「うん、よろしく」


そっと抱き上げると、予想以上に軽――ゴホン。

とりあえず何も考えずに進もう。


「ふと思ったけど、戻るときもまたコレかな」


水面へ踏み出しながら呟く。


「も、もう一方の道は魔物が多いので……おそらく」


「だよねぇ」



慎重に、魔力の腕を足場にしながら進む。

相変わらず移動には揺れが伴うが、ノイラは特に気にしていないようで、むしろキョロキョロと壁や天井を観察しているようだった。


そして無事に向こう岸へ到着。

ノイラを降ろし、ナヴィたちの濡れた衣服を受け取って指輪へ収納する。


「ちゃんと返せよ」


「うん、返すよ」


「へ、変なことに使うなよ!」


「使わないって……」


一体俺をなんだと思っているんだ……。

さて、気を取り直して最後だ。


元いた場所へ戻ると、レイが緊張した様子でこちらを見る。


「よ、よよよろしくお願いします」


クールな印象のレイだったが、口下手なノイラより噛みまくってた。


「うん、よろしくね」


レイの背負っていた荷物を一度預かり指輪へ収納する。

しかしどうやって運んだものか……さすがに男性を抱き抱えるのは気が引けるし、本人も嫌だろう。


なんて考えていると、いつの間にかクレイのように腕を広げて準備していた。

――うん、まあ本人が嫌じゃないのであれば……。


首に腕を回してもらい抱き上げる。

高身長なレイだが、意外にもそれほど重くない。クレイより少しだけ重――ゴホン。


気を取り直して、魔力の腕を伸ばし水面へ浮かび上がる。

移動の距離を取れるよう各腕を伸ばして高さを調整し、いざ踏み出そうとした瞬間――


ぎゅっ!!


「ぐぇっ!?」


首が締まった。


「す、すみません!」


「げほ……高いの苦手?」


「……は、恥ずかしながら」


イケメンが耳まで赤くなっていた。


「えっと……じゃあ、ちょっと待ってね。揺れないように…っと」


背中に意識を集中して……にょきっ、と四本目の腕を出した。

そのままゆっくりと足場へ腕を伸ばし、四本の腕で体勢を安定させる。うん、さっきより揺れが少なくなった。


「すごいですね。四本も伸ばせるんですか」


「ゆっくり動かすだけならなんとかね」


歩幅を狭め、四本の魔力の腕をより慎重に動かす。

揺れは大幅に減ったが、それでもまだ多少は揺れる。


レイの様子をチラリと見るが、まだ少し怖いようで必死にしがみついている。息が近い。


……ち、近いな。


なんてことを思ったそのとき。


フォン――


小さな音が下から聞こえた。


反射的に足元を見ると、青白い光が四本目の魔力の腕の場所から広がっている。


「……ん?」


次の瞬間、俺とレイを包み込むように光が弾けたのだった。


書きたいこと書いてたら普段の倍くらいになりました…。

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