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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第一部 乳幼児期 『6歳編』
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ボカ 1

 ブランコ村の惨状は酷い物だった。


 ブランコ村上空に『転移』し、村を見下ろす。

 なぎ倒された葡萄の木。

 多量の『魔族』と、数人の白い髪の『長耳族』の死体。

 倒壊した家屋。

 中でも、一番大きな村長宅は損害が激しく、爆発でもしたのかと思わせる。


 この村は、とある事情から『魔族』から隠す必要があった。

 『セクンダリア』兄妹の力を借り、『気配魔術』の力で隠し続けていた。

 特に兄の『気配消失』は、『練度』が高く、彼が隠したものは視認する事はほとんど不可能である。

 視認するためには、『ブランコ村』に足を踏み入れる必要がある。

 『プランター村』にいる妹の『気配増強』によって意識を奪われ、周囲を山に囲まれて意識の外側にある『ブランコ村』。

 そんな状態のこの村に直接足を踏み入れるのはほぼ不可能。

 出来る可能性があるとすれば。


 ・・・情報が漏れていたか。


 俺は最悪な状況を知り、ため息をつく。

 考えられるのは、裏切り者。

 誰かはわからないが、あの村にはブリランテもいた。

 俺より『空間把握』に優れた妹だ。

 相手の『魔素』を把握するのは得意だったはずだ。


 それでも、結果としてこうなった。

 『魔素』そのものが把握できなかったか、把握できていたうえで信じたか。


 「・・・後者だろうな」


 俺は顎の髭を撫でる。

 『プランター村』には、プランターの意向で『魔族』の血をひく者もいた。

 昔からいた者か、新入りだったのか。


 「考えていても、わからないか」


 俺は『転移』で『ブランコ村』内部に降り立つ。

 悲惨な状況。

 先に向かわせた俺の部隊、『雑務隊』。

 その、『突撃班』が村の死体を片付けていた。

 遅かったのか・・・。

 また間に合わなかったことが悔しくて歯を食いしばった。


 俺は、ここに来るまでのことを思い出した。

 壁が破壊されたと情報が入った後、急いで『突撃班』を編成して壁の方向に馬で出発した。

 多くの人を一度に『転移』させることができない俺は、『部隊』を馬で動かしたほうが早い。

 『ディナステーア』の地下。

 駅に降りて、少しだけ進んだところに『軍用』の馬を待機させている。

 馬に乗り込んで出発。

 『突撃班』には、『メディオ学院』で『魔術』を学んだ、優秀な淡黄色の髪の『長耳族』を1人編成した。

 彼の、『基本魔術』によって、馬の速度を上げて一気に駆け抜けた。

 それでも、1時間はかかる。

 間に合うかと言われれば微妙なところだった。

 なんとか、壁までもう少しといった所。

 そこで俺たちは足を止めることになる。


 『ブランコ村』に隠されていた、1人の少女。

 『ファセール・ブランコ』。


 『ブランコ村』が隠されていた理由。

 それは、『ブランコ』一家を『魔族』の手に渡すわけにはいかないためである。

 

 その『ブランコ家』の1人娘。

 彼女がどうしてこんなところに?

 彼女は、初老の男に抱えられていた。

 初老の男は満身創痍。

 いつ死んでもおかしくはなかった。


 初老の男に問う。

 しかし、帰ってきた返答はその男からではなく、どこからか響く、聞き慣れた青年の声だった。

 『む、ボカ氏・・・『ブランコ村』が見つかりました。命からがら、村長どのと供に『姫』を連れて村から逃げてきたところです・・・『姫』に傷はないですが、『魔術』の使用で意識を失っています』

 よく知るふざけた話し方ではなく、まじめな物言いに、事の重大さが伝わってきた。

 「・・・『歌った』のか?」

 『・・・はい』

 ため息をつく。

 それは、まずい。

 俺は、すぐさま『突撃班』を先に向かわせて、青年から事情を聴いた後、彼と別れて『王城』に『姫』を連れて『転移』した。

 そこで、報告を終えて『謁見の間』を出たところでフェリスと出くわしたのだ。

 

 青年とフェリスから聞いた情報を頭の中で整理する。


 2人から出てきた名前。

 『テーセラ・アディナトス』。

 『トゥリア・アサーナトス』。

 どちらも『魔王軍』『四天王』の名だった。

 つまり、『魔王』が動いたという事。

 『トゥリア・アサーナトス』で思い出すのは、3年前。

 弟子2人を守れなかった戦い。

 その時の相手。

 あの実力。

 死なない体。

 『勇者伝説』に登場する四天王が一角。

 2人が与えた傷が回復してしまったのだろう。

 加えて、この『ブランコ村』にはもう1人の『四天王』、『テーセラ・アディナトス』が来ていたらしい。

 

 俺は、村長宅に入る。

 中には漆黒の身体をした角の生えた男性の死体が転がっていた。

 情報通りなら、彼が『テーセラ・アディナトス』。

 周りにいる、25人の死体。

 この村の殆どの住民。

 全員でこの『四天王』を含む、『魔族』を全滅させたのだ。

 代わりに全員も死んだ。

 青年の言葉を思い出す。

 『歌った』・・・。

 俺は、姫の姿を思い出す。

 彼女たち、『ブランコ』一家がこの村に隠されなければならない理由。

 それは、勇者パーティーメンバーの血筋。

 『勇者フェリス』の結婚相手。


 『パラーグラフォ・ブランコ』と同じ血筋であるためである。


 なにも、『勇者』の大切な人の親族だから守る必要があるわけではない。

 もっと、根本的な話。


 『ブランコ家』が使用する『限定魔術』は危険なのだ。


 その『魔術』。


 名を、『音楽魔術』と言う。


 『ファセール・ブランコ』は、今回の事で残された『音楽魔術』の唯一の使い手となってしまった。

 

 『音楽魔術』は、『音楽』で『魔素』を操る『魔術』。

 極めると、出来ないことがなくなると言われている。


 しかし、最も危険なのは『歌』である。


 使用者の寿命と引き換えに、使用者が定める歌を聞いた味方を超強化し、敵を超弱体化する。


 詳しい強化と弱体の内容を詳しくは知らないが、『音楽魔術』の使い手一人で戦況が大きく変わる。

 それだけの存在。


 これが彼女の力か・・・。

 俺は生唾を飲む。


 『四天王』含む、『魔族』の1部隊を、実力者でもなんでも無い村人がたったの25人程で全滅させることが出来てしまう。


 しかも、『四天王』は不老不死のはずだ。

 それを殺す。


 原理はわからない。

 だが、結果として、『テーセラ・アディナトス』は死んでいる。


 「これは確かにレイ王が囲っておけと言うわけだ・・・」


 彼女はこれから、王命により城の一室で半監禁状態になる。

 『音楽魔術』が『魔族』の手に渡ったら終わりだ。

 しかし、逆に王国が手に入れると、それは『勇者』に匹敵する戦力になる。

 『勇者フェリス』の名と、『プランター村』の協力のもと、『レイ王』が『ブランコ家』に手を出すことはなかったが、この状況だ。

 もう、意味はなさないだろう。

 さらに、現在は『勇者召喚』の研究が滞っている。

 レイ王はあの子を絶対に逃がさないだろう。


 「わかるが・・・」

 

 監禁の理屈は分かるし、国全体の事を考えると納得も出来る。

 しかし、まだフェリスやサティスと同い年の幼い少女だ。

 気持ちの良い物ではない。

 俺は頭を振って気持ちを切り替える。

 この村にはもう何もない。

 『突撃班』に1度『プランター村』に向かうように指示し、壁の方に飛んだ。


 壁は、絶望的だった。

 『防衛班』は全滅。

 それなりの実力者を配置していたが、1人として生き残っていなかった。

 少し確認した後、俺は『プランター村』に飛んだ。


 『プランター村』の中もひどい状況だった。

 一瞬上空から見下ろしただけでも分かる、実力者たちの死体。

 近くの畑に降り立つ。

 そこには胸を剣で刺された灰色の髪をした兄妹の死体があった。

 ・・・いや、この村では夫婦だったか。

 あたりを見渡すと色の抜けた、跳ねた髪型の少年の死体があった。

 近くによると、彼には右足が無かった。

 背中に刺さった長剣が致命傷だろう。

 彼はうつぶせで手を伸ばした状態で、血溜まりの上で息絶えていた。

 まるでどこかを目指していたかのような・・・。

 彼の手の先を追うと、太い木に長剣で腹を刺されて固定されている、色の抜けた長い髪の少女の死体があった。

 胸糞が悪い。

 俺は『転移』で彼女を少年の隣に転移させて優しく寝かせてやる。

 『魔族』はいったいどこまで『人族』をバカにすると言うのだ・・・。

 悔しくて歯を食いしばる。

 他の箇所はどうなっているんだ・・・。

 周囲を見渡す。

 

 ふと、丘が見えた。


 1本の大きな木が村を見下ろすように立つ丘。

 あの丘に行かなくてはならない。

 そんな気持ちになる。

 なぜかはわからない。


 だが、呼ばれている気がする。


 俺は丘の上を目指した。


 やがてたどり着く。


 たどり着いてしまう。



 予感はあった。



 『ブランコ村』と『プランター村』の状態。

 攻めてきたのが、『四天王』を含めた『魔族』の一軍。

 実力者たちの死体。


 その予感に確信を得るのに、十分すぎるほどの状況だった。


 だが、それでも。


 やはり。



 「・・・くそ・・・俺はまたっ」



 丘の上。

 視界が歪む。

 膝を着く。

 地面を殴る。

 

 「くそっ!くそくそくそ!!」


 血が出ようとかまわない。

 何度も。

 何度も何度も何度も。

 

 「父さん!!」


 俺の血だらけの拳は娘に腕を掴まれた事で制止した。

 「・・・」

 なにも言えず、娘の顔を見上げる。

 娘の顔も歪んでいた。

 必死に涙をこらえていた。

 俺は視線をゆっくりと前に向ける。

 小高い丘の上。

 大きな木に背中を預けて肩を寄せ合う、満身創痍の2人。


 仲睦まじく、表情は穏やかな微笑み。


 それは間違いなく。



 「ブリランテっ!!セドロ!!」



 愛する妹と、大切な弟子の死体だった。




 あぁ・・・。

 俺は、いつも遅い!!!




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