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努力畢生~人生に満足するため努力し、2人で『無敵』に至る~  作者: たちねこ
第一部 乳幼児期 『6歳編』
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コルザ 3

 父さんがこんなに取り乱す姿を久しぶりに見た。

 拳はしばらく使い物にならないくらいにボロボロになり、悔しそうに涙する姿に僕も泣きたくなる。

 大切な妹と弟子を亡くしたんだ。

 僕だって悲しい。

 2人には良くしてもらった。

 彼女達4人が来る夏は、僕の一番好きな季節になった。

 もう、彼女たちと話す事は出来ないのだ。

 腕を掴んだ僕と目が合い、力を抜く父さん。

 そのまま、力なく項垂れた。

 僕は項垂れる父さんの肩を優しく叩いた後、溢れそうになる涙を擦りながら2人の死体に近づく。


 2人とも全身の『魔素』が抜かれ、髪の色を無くしていた。

 加えて、両腕を無くし、腹に穴を空けているセドロ。

 ブリランテも左足を無くし、右の肩口から、鳩尾のあたりまで入った深い切り傷を負っていた。

 満身創痍な2人。

 そんな2人が、表情だけは穏やかで肩を寄せ合って眠っていた。


 「・・・これは」


 僕は彼女たちの中心に突き刺さる赤い宝石の埋め込まれた柄が特徴的な曲剣に目をやる。

 セドロが大切に使っていた剣だ。

 その隣に折れた剣と、柄の先に青い飾りがついた長剣。

 折れた剣が突き刺す地面には、羊皮紙が貫かれていた。

 僕は、短剣と紙を手に取る。

 紙は手紙だった。

 震えた、血液で書かれた字。

 手紙には、2人の最後の言葉が書いてあった。



 『初めに、セドロは字が書けないので私、ブリランテが書くわ。


  やってやったぜ!2人であいつをぶっ倒したぜ!

  殺しきれては居ませんが、暫くは戦えないかと。

  逃げてなければ、山の中腹に出来たサークルの中心にいるはずです。

  確認をお願いします。


  さて、時間がないので簡潔に。

  

  フェリス。あなたにはあの人と私の剣を託します。

  サティス。お前には私達の力と、私の剣だ。

 

  親としてはまだまだだったと思います。

  それでも、あなた達と一緒に生きた毎日はとても輝いていました。


  フェリス。

  サティス。

  

  あなた達をどこまでも愛しています。

  いつまでも2人を信じてるぞ!


  あなた達は私達の自慢のこども達です。


  幸せをありがとう。


  最後に、見つけた人はディナスティーア王国城下町西区アロサール家まで届けて下さい。

  よろしくお願いします。』



 指で書いたのだろう。

 途中、酷く字が歪んでいたり、霞んでいたり、書き直したりしていて、読み終えるのに時間がかかった。

 僕は読み終えた手紙を父さんに渡す。

 それを読んだ父さんは、さらに涙する。

 僕は振り返って、再度2人に近づく。

 折れた長剣と手紙、飾りのついた長剣、そしてセドロの曲剣を両手に抱える。


 ・・・これは必ず僕が、責任を持って2人に渡すよ。


 父さんに振り返る。

 ちょうど、村の駅に汽車が入ってくるのが見えた。

 「父さん。『雑務隊』が来たみたいだ」

 駅の中から鎧を着こんだ兵隊が規則正しく出て来た。

 兵隊は規則正しい姿勢と、歩幅で、まっすぐこちらに向かってきた。

 東の山の方からも同じように兵隊が来た。

 父さんの言っていた、『待機班』と『突撃班』だろう。

 『防衛班』は、来ないのを見るに駄目だったのだろう。

 「あぁ・・・」

 僕の声掛けに、力なく立ち上がる父さんの姿は酷く頼りなかった。

 やがて兵隊たちが、父さんの後ろで綺麗に並んだ。

 胸元に拳を持っていき、敬礼。

 セドロとブリランテの姿を見たまま、父さんが口を開いた。

 「せっかく来てもらってすまない。ブランコ村もプランター村も手遅れだった」

 見ればわかるとため息が聞こえる。

 そんな『雑務隊』に父さんは続けた。


 「ただ、『魔族』は全員撤退している。さらに、『四天王』1人討伐。1人、戦闘不能。2つの村で戦った人々が国の窮地を救った。感謝を」


 言って膝をつき、拳を左の胸元に持っていく。

 それは、騎士の『最敬礼』。

 ざわつく『雑務隊』。


 「最敬礼」


 父さんの指示に、一瞬慌てた様子だったが、全員がほぼ同時に膝をついた。

 

 赤い夕陽が差し込む。

 その夕陽が、『雑務隊』の着こんでいる銀の鎧を照らす。

 鎧に身を包んだ兵隊たちは、一糸乱れぬ行動をとる。

 片膝をつき、左胸に拳を当てたのだ。


 僕はその姿に涙をぼろぼろとこぼした。


 戦ったのだ。

 彼女たちは戦った。


 結果として、『人族』を守った。

 

 そして、大切な子供たちを守り切ったのだ。


 だが、もう、2人とは話せない。

 あの夏の日は帰ってこない。


 ともに笑い、教えを乞うこともできない。


 思い出を作ることはもうできない。


 涙が止まらなかった。


 だが、それでもやはり、2人は称えなければならない。


 命をかけて、国を守った。

 全てをかけて、家族を守った。


 

 2人は間違いなく『英雄』だ。



 僕も片膝をつく。

 僕が知っている最敬礼は、騎士のものだけ。

 だから、僕も左胸に拳を当てた。

 



 ここに『英雄』がいた。




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