コルザ 2
死の直前が書かれていた。
気分が悪くなって、元の場所に戻す。
あたりを見渡す。
もう、早く出たい。
しかし、あるものが目に入った。
黄緑色の『魔素』。
見えたのは、明かりの漏れる奥にあるもう一つの部屋。
「生存者!?」
僕は慌てて駆け抜ける。
死体につまずきそうになる。
こんな、絶望的な状態で生存者がいるなんて!!
部屋に入る。
中は、天井に空いた穴から差し込む日に照らされていた。
中心。
日に照らされるように大きな体の『魔族』が、こちらに背を向けて息絶えていた。
背中しか見えないが、深々と突き刺さった2本の剣が背中から突き出ていた。
周囲には異常な数の『魔族』と『魔獣』。
ゆっくりと近づく。
やがて、大きな体の『魔族』の横までたどり着く。
膝をついて息絶える『魔族』。
そんな『魔族』を支えるように剣を突き立てる2人の少年。
目元まで落ちる前髪。
色は抜けてしまっている。
おそらく、体から『魔素』をすべて抜き取られている。
つまり、この似た顔の2人はすでに息絶えているという事。
・・・まさか、この数をたった2人で?
その事実に驚愕する。
そんな、2人のすぐ後ろで少女が眠っていた。
黄緑色の『魔素』は彼女のものだった。
生存者だ。
僕は彼女を抱きあげて離れる。
「・・・大切な妹を」
「よろしく・・・」
「「頼むよ」」
声が聞こえた。
まさか!?
振り返る。
すでに死んでいるはずの少年2人。
2人がその場から離れた僕を見て微笑んだ。
そして、崩れ落ち、体の大きな『魔族』の下敷きとなって潰れた。
「・・・死んでも守り続けたのか」
僕は2人に敬意を表する。
人を潰せるほどの重さを持つ『魔族』。
それをたった2人で支えて、守り続けていたのだ。
体から、『魔素』を失って死んでいる状態とほぼ同義でもやりきった。
僕は頷く。
「お疲れさま。君たちの大切な妹は僕が責任をもって安全な場所に連れて行くよ」
それだけ言い残してその場を後にし、この子を安全なところまで連れて行く事を決めた。
外に出ると、大分日が落ち始めていた。
空は夕暮れの朱色。
黄緑の髪をした、人形みたいな少女を抱えながら道を進む。
周囲の警戒は怠らないが・・・おそらくもう『魔族』はいない。
小高い丘が目に入った。
大きな木が、この村を見下ろすように立っている。
まだ、あそこを見ていなかったな・・・。
少女を抱えながら丘を目指す。
体力が尽きてしまう前に『魔術』は一度発動をやめてある。
ふと、青い屋根の家が目に入った。
たしか、フェリスの家だ。
恐る恐るぐちゃぐちゃになった玄関から中に入っていく。
家の中。
屋根はないが、恐らく居間だった場所だろう。
首の無い巨体が一つと、同じく首の無い漆黒の死体が4つあった。
どれも『魔族』のものだろう。
そこで、腕の中の少女が目を開けた。
「こ・・・こは?」
「あぁ、気が付いたかい?僕はセロコルザ・アロサール。フェリスは知っているかな?」
「ふぇりす・・・さま・・・?」
様?
呼び方に違和感を覚えるが今は良い。
「あぁ。その様子、知っているようだね。僕は彼の従姉だ。助けに来た」
一瞬だけ彼女の黄緑の瞳が光る。
「ほんとうですね・・・フェリス様と同じ・・・青いオーラ・・・いえ、その奥にもう一色・・・これは」
ぶつぶつと何かを言い始める少女。
オーラ・・・?
僕は首を傾げる。
フェリスの知り合いには不思議な子もいるんだな。
まぁ、多分『魔術』だと思うけど。
「あ、あの、お兄ちゃんたちは?」
僕は2人の最後を思い出す。
返答に困る。
「・・・そうですのね。やはりあの数では」
僕の反応で察したのだろう。
目を潤ませる少女。
なにか、言葉をかけなければ。
「僕は、君のお兄さんたちに君を頼まれた。名前を教えてくれ」
「・・・ラーファガ。『ラーファガ・リーマ・メリソス』です」
「じゃあ、ラーファガ。僕が君を守ってあげる。だから、安心してくれ」
努めて優しく言う。
母も、年下には優しくしろと言っていた。
去年のサティスとの一件以来、言葉にも気を使っている。
これで、少しは落ち着いてくれるといいんだけど。
「・・・」
呆然と僕を見つめるラーファガ。
・・・なにかまずかったかな。
「どうしたんだい?」
「い、いえ。ありがとうございます。もう、大丈夫です」
なんだ?
やはり、なにかまずかったのだろうか?
僕は、ラーファガを降ろす。
「・・・大丈夫かい?」
僕の確認に頷きで返してくるラーファガ。
・・・大丈夫ならいいけど。
「それじゃあ、ここで待っていてくれ、もう『魔族』はいないと思うから、大丈夫だと思う。ちょっと丘の上を見てくるから、終わったら一緒に『ディナステーア』に行こう」
「はい」
僕は見てなかった丘の上を確認するために『転移』で飛んだ。




