『2年生』『想起編』 『音楽魔術の片鱗』3
爆発音と地響きに全員が身構える。
「なに!?」
ファセールが周囲を見渡す。
「・・・ねぇ、フェリスは?」
抱き締めているサティスからそう問われてファセールが気付く。
サティスの状態に衝撃を受けて周りが見えてなかった。
保健室のどこにもフェリスの姿が無いことに。
サティスの一大事に彼がいないことなどありえるのだろうか。
否。
ありえない。
「・・・まさか」
サティスはなにかに気付いて立ち上がろうとする。
「ま、待ってサティス!」
「止めないで! フェリスはもしかしたら・・・」
「もしかしたらなに!?」
「わ、私を刺したテーセラに酷いことをしに行ったのかもしれないわ」
「え!? テーセラなの!?」
サティスの発言にその場にいたアモール以外の全員が驚く。
特にフロロースは驚きのあまり固まってしまっていた。
「え? 皆知らないの? じゃあ、フェリスも知らない・・・?」
と、少しだけ安心したサティスだったが、アモールがその希望を壊す。
「・・・いえ。 私が、テーセラがやったと教えてしまいました」
「そんな!? じゃあまずいわ! フェリスは、家族や仲間が危険な目に遭うと周りが見えなくなることがあるのよ!」
ファセールはサティスの言葉で思い出す。
小さな頃にサティスが教えてくれたフェリスの暴走。
あれは、ティンを殴り飛ばした話だった。
「止めないと。 止めないとフェリスがテーセラを殺してしまうわ!」
「そんな!?」
アモールは、自身がしたことに打ちのめされて力無く落ち込んだ。
「ちょっと、サティス! 無理だよ! 病み上がりだよ!?」
無理矢理立ち上がってふらつくサティスをファセールが止めようとする。
「そうだよサティスちゃん! 血が足りてない! 今は安静にしないと!」
セミージャもそれを止めようとするが。
「駄目よ! フェリスが誰かを殺して『努力』を奪うなんて事はあってはいけないわ!」
ふらふらと出口に向かうサティス。
「なら私も行く!」
ファセールがサティスの肩を支える。
「わ、私も!」
そう言ってサティスの背中に手を当てて『治癒魔術』をかけ出したのはフロロース。
「・・・ごめんなさい。 お兄ちゃんがそんなことするなんて。 ごめんなさい」
そのフロロースの手は震えていた。
声も涙声だった。
「・・・謝らなくても良いわ。 きっと、テーセラは悪くないもの」
「うぅ」
「ごめん! ちょっと行ってくるね!」
「あ、ちょっと! うっ」
『魔素』の使いすぎで体力が限界に来ていたセミージャが膝から崩れ落ち、レティセンシアがそれを支えた。
「くっ、無理しちゃだめだよ!」
セミージャの声に頷きながらサティスとファセール、フロロースが保健室を出ていった。




