『2年生』『想起編』 『音楽魔術の片鱗』1
「サティス! サティス!?」
アミに連れられてファセールが保健室に辿り着いた。
出入り口で悲鳴のような声で名前を叫ぶファセール。
サティスはベッドの上でセミージャから『治癒魔術』をかけられ続けていた。
慌ただしく動き回るレティセンシアとフロロース、先に来ていたミーゴとバイレの不安そうな顔。
ベッドの上で肩を落とすアモールの絶望したような表情にセミージャの必死な姿。
そして、血にまみれて意識の無いサティス。
その姿はあまりにも生気が無く、死んでいるのと見間違うほどだった。
それら全ての状況がファセールに強い不安感をもたらし、彼女を酷く焦らせる。
ファセールは震えながら、サティスの元へ行こうとする。
「駄目です。 今近づくのはいけません!」
レティセンシアに止められる。
ファセールはそれを無理矢理どかそうとするがレティセンシアも必死に止める。
「どいて! サティスが! サティスが!!」
「安心してください! 息は吹き返しています! 死んではいません! 今セミージャ先生が必死に怪我を『治癒』させています! だから、今近づくのは危険です!」
「そんな! 息を吹き返してるって、1回死んだってこと!? なんで、そんなことに・・・っ!?」
ファセールが必死にサティスを見ようと前に出た瞬間、サティスの傷口が見えた。
見えてしまった。
サティスの腹が半分切り裂かれ、内臓が覗いているのを。
「・・・あ、嘘」
ファセールが崩れ落ちる。
レティセンシアも膝をついてファセールの肩を支える。
「『治癒』は進んでいます。 今セミージャ先生が全力で『治癒』していますから、どうか落ち着いてください。 今は1分1秒を争う状態ですから、どうか、近づかないでください」
「・・・サティスは助かる?」
「かなり難しいですが、セミージャ先生ならば必ず」
「・・・難しい? それなら困るよ。 絶対助けてよ。 ねぇ! 絶対だよ!!」
レティセンシアの腕にすがるように強くしがみつきながら涙ながらにそう叫ぶ。
「セミージャ先生も必死です」
「・・・くっ。 想定よりも傷の治りが遅い。 一回死んだから『魔素』の巡りが悪いの?」
そんな2人の後ろでセミージャが焦ったように独り言を呟く。
「そんな・・・っ! 早く閉じないと彼女の体力がっ!」
レティセンシアがその独り言を聞いて焦る。
その言葉を聞いたファセールが目を見開く。
(・・・嘘だ。 なんでこんなことに? どうしてサティスが死にそうになってるの? いや、一回死んだ? なんで?)
下を見る。
(私、こんなの嫌だよ。 認めないから。 だってサティスだよ? まだ、私、サティスが夢を叶えたところを見てない。 夢を叶えて幸せそうにする姿を見てないよ?)
拳を握る。
(フェリスとの事はどうするの? フェリスと一緒になるんじゃなかったの? ちゃんと生きて幸せになってよ!)
歯を食い縛る。
(認めない。 こんなところでサティスが死ぬのなんて許さない。 絶対死なせない!)
ファセールは息を吸い込んだ。
「なにを・・・!?」
レティセンシアがファセールの行動に疑問を示したが、すぐに理解した。
ファセールが歌を歌い始めたのだ。




