『2年生』『想起編』 『死者蘇生』
「なんで!? だれが!? どうしてこんな!? ふざけんな! ふざけんじゃねぇ!!」
床を何度も殴り付ける。
床にヒビが入る。
拳が割れる。
と。
「サティスちゃん!?」
『剣術研究棟』の出入り口から救いの声が響いた。
「アミ! サティスは!?」
続けてミーゴが走って入ってくる。
「い、今し、死んじゃ。 う、うぅ」
ミーゴに抱きつくアミ。
「そんな! サティス!」
「どいて!」
俺とアミ、ミーゴは白衣の女性に突き飛ばされる。
血だまりの中で尻餅をつく。
顔を上げる。
「サティスちゃん! くっ。 心肺停止・・・っ! 息を引き取って何分!?」
必死の形相で、白衣を血に染めながら俺に聞いてくるセミージャ先生。
「ほ、本当に今・・・です」
俺は力無くそう返すのが精一杯だった。
「なら間に合う! レティちゃん! フロロースちゃん! 手伝い頼むよ!」
セミージャ先生は両手をサティスに向ける。
レティセンシアさんとフロロースが頷いてセミージャ先生の対面に座り、サティスを動かないように支える。
「フェリスくん! 任せなさい! 死んだって死なせい。 それが私、『医匠』『セミージャ・プランター』だよ!」
セミージャ先生はそう言うと力を込め始める。
「『治癒魔術』『死者蘇生』!!」
『魔術』発動。
それと同時に室内が緑の光に包まれた。
「戻ってきてサティスちゃん! 『神樹』に帰るのはまだ早いよ!」
数秒。
「・・・絶対戻す。 ここでサティスちゃんを戻せなかったら何のためにここまで力をつけたの私は!」
さらに輝きを増す。
「サティスちゃん! 戻ってきて! 夢の途中でしょ!!」
セミージャ先生の叫び。
「ごぽっ」
それに答えるようにサティスが吐血した。
それを見てレティセンシアとフロロースがサティスの体勢を横に変える。
それと同時にサティスの呼吸が再開され、彼女の肌に熱が戻る。
「よし。 偉いよサティスちゃん。 とりあえず蘇生完了だけど、このままだとまた死ぬから速く保健室に連れて行って『治療』するよ! フェリスくん頼める!?」
蘇生・・・完了?
「さ、サティスは生き返ったのか?」
「生き返った! でも、このままだとまた死ぬ! 今すぐフェリスくんの力が必要だから、しっかりして!」
俺はセミージャ先生に言われるまま立ち上がる。
「『転移』で保健室に飛ぶこと、できるよね?」
何度も頷く。
「よし、良い子! それじゃあ、私とサティスちゃんを最優先で『転移』させて! その後レティちゃんとフロロースちゃん、それからあっちのアモールくんを頼むね!」
「わかった」
俺は頷いて『空間把握』『全』と『空間掌握』を使用する。
俺はセミージャ先生に頭を下げる。
「サティスの事、よろしく頼みます」
「任せて!」
「『転移』」
俺はサティスを保健室のベッドの上に、セミージャ先生とレティセンシア、フロロースを一気にその近くに飛ばした。
「アミ、ミーゴ、ファセールを呼んでサティスのいる保健室に連れてってくれ。 出入り口で腰を抜かしているバイレも頼んだ。 ウノとドスとトレスにもあったことを伝えてくれ」
「わ、わかったよ」
「でも、フェリスは?」
「俺は。 まだやることがある」
「え、でも」
「ねぇ、なんだか怖いよ?」
「良いから速くしろ」
「うっ」
「わかった」
アミとミーゴが怯えた様子を見せながら出入り口に急ぐ、そこでバイレを連れて去って行ったのを確認してから、意識を取り戻して座り直していたアモールの方に向かった。
「・・・アモール」
「うっ。 す、すまない。 わ、私が近くにいながら遅れをとった」
膝を抱えて小さくなるアモール。
「なんと、なんと情けない」
涙声になるアモール。
「今はどうだって良い。 アモール。 誰だ? 誰がやった?」
「え。 今、貴様が言ったのか?」
驚いた顔でこちらを見上げたアモールが、その涙を流していた顔をひきつらせた。
「き、貴様は、ほ、本当にあの男か?」
「意味がわからないことは良い。 速く教えろ」
「あ、て、テーセラだった」
「あぁ。 そうか。 わかった」
「わかったって貴様! 何をする気」
「『転移』」
俺はアモールの言葉を待たずに『保健室』へ飛ばす。
そのまま『メディオ学院』全てを『空間把握』『全』で探索。
見つける。
「そこか」
俺は、さっきのサティスを思い出す。
セミージャ先生のおかげでなんとか蘇生できた。
しかし、それは不幸中の幸いだ。
サティスが一瞬死んだ事は変わらない。
その事実に俺は怒りを抑えられない。
サティスは、俺の大切な人だ。
わかってる。
こんなのは八つ当たりだ。
だけど。
どうしても、怒りが止まらない。
大切な人を傷つける。
それは、俺がどうしても許せないことだ。
こればかりは、誰がどんなに否定しようと止められない。
あいつを同じ目に合わせるまでは止まらない。




