『2年生』『追想編』 『裏切り』2
私は今日、目の前にいるあの女を殺します。
『魔王』様の作戦の内です。
『魔王』様は来る戦争のために、『音楽魔術』と『治癒魔術』を強く望んでいます。
『治癒魔術』はフロロースが居ます。
後は『音楽魔術』です。
『音楽魔術』を守っているパーティは、かなりの実力があり、戦争の時は障害になるでしょう。
そのパーティに所属している彼女たちを今殺すことに間違いはありません。
隣のアモールと会話している『深紅』の髪の女。
あの、頭痛を引き起こす忌々しい『深紅』の長髪とも今日でさようならです。
そう考えると、随分と気が楽になります。
いつだって彼女は私の嫌なことをしてきました。
やる気のなかった部活に勧誘してきました。
体育祭の練習も無理に参加させてきました。
本番の日だって、楽しいと気付かせてきました。
他にも毎日が楽しいと気付かされた。
気付きたくなんてなかったのに。
それは、嫌なことのはずだったのに。
どうして、あんなにも楽しくて居心地がよいと感じてしまったのでしょう。
嫌でなくなってしまったのでしょう。
どうして、彼女なんですか。
どうして、私と仲良くしてくれた人を殺さなければならないんですか。
フロロースだって懐いているのに。
どうして貴女は『魔族』ではないのですか。
貴方の髪にだって黒が混ざっているではありませんか。
なのにどうして『長耳族』なんですか。
『魔族』以外の皆は、私たちを裏切るのでしょう?
ならば貴女も裏切るのでしょう?
そうならば、裏切られる前にこちらが裏切るしかないじゃないですか。
殺したくなんてないですよ。
信じていたい。
だって、この学院で過ごした日々は幸せでとても楽しいものでしたから。
あの夢のような日々を疑いたくなんてない。
だけど、実際歴史がそれを否定しています。
貴女達全ての種族が『魔族』の敵だと。
もう、やるしかない。
そう、決心したのに。
どうして私を心配して手を伸ばしてくるんですか。
「触れるな!」
思わず強く振り払ってしまいました。
そんな悲しそうな顔をしないでください。
貴女は今から私に殺されるんですよ?
なのにどうしてそんなにも油断しているんですか!
どうして、私を信じて疑わない顔をしているんですか!
それでは簡単に殺せてしまいます。
殺させないでくださいよ!
私から逃げて。
・・・逃げてくださいよ!




