『2年生』『追想編』 『決心』
放課後の『図書館』。
俺達は、返却された試験の結果を伝え合っていた。
サティスが皆の中心で嬉しそうな笑顔で会話している。
そんなサティスの笑顔から目が離せない。
きっと、今朝見た夢のせいだろう。
夢の中で、『幼馴染み』の顔は前世の彼女ではなく、サティスになっていた。
前世での『幼馴染み』との関係は、俺の中では絶対に忘れられない後悔だ。
今までだって何度も夢に見た。
見る度に後悔し、不安になった。
そして、夢に出てくる『幼馴染み』は、いつだって間違いなく彼女だった。
それなのに、今朝見た夢はどうだった?
『幼馴染み』がサティスになっていた。
これは、俺の中では絶対にあり得ないのだ。
だって、前世の後悔は忘れられないはずなのだから。
だが、実際見てしまった。
夢の中では『幼馴染み』の顔を一切思い出せなくて、目の前にいたのはサティスだった。
そう、夢の中とはいえ俺は『幼馴染み』の顔を忘れたのだ。
それはきっと、『幼馴染み』との後悔を、今、隣にいてくれているサティスが打ち消すほどの存在になっていると言うことなのだろう。
俺の中でサティスはもう、何者にも変えられない大切な人になっている。
いつからそうだったのか。
わからない。
ある時からだったかもしれないし、最初からだったかもしれない。
だが、サティスの事を家族として見ることが出来なくなったきっかけの言葉は覚えている。
『前世の記憶があっても、私とずっと一緒に居たいって思わせてみせるわ』
あの日、『ナビダード会』でのデート。
その最後に、屋上で彼女が口にした言葉。
まるで、前世の俺ごと愛するとでも言わんばかりの言葉だった。
あの言葉を聞いて以来俺は、サティスの事を何度も家族として見ようとしたが、どうしてもそう見れなくなってしまった。
ふと、サティスが俺の方を見て微笑んだ。
あぁ、あの笑顔だ。
サティスの笑顔を見る度に俺は彼女から目が離せなくなっていく。
わかっている。
俺は80歳のじいさんだ。
15歳の少女の事をそう言う目で見ることは、あってはならない。
気持ち悪いし醜い。
だが、ここは異世界だ。
俺も彼女も、この世界では15歳で成人。
俺がサティスの気持ちに答える事になんの問題はない。
しかし、だとしてもやはり。
そううだうだ考えてしまう前世の価値観は厄介だ。
これ以上サティスを待たせる訳にはいかない。
この価値観から抜け出すにしろ、受け入れるにしろ答えは言わなければならない。
「フェリス! 今晩は皆を家に呼んで祝勝会しましょう!」
いつの間にか目の前に来ていたサティスが笑顔でそう言った。
反応が遅れる。
「あ、あぁ。 そうだな」
皆と言うのはいつもの面子だ。
全員合格点数をとれた祝いをするのだろう。
今晩は賑やかになりそうだ。
「どうしたのよ? 今朝から変よ?」
俺の反応が遅れたからか、サティスが心配そうに首をかしげて聞いてきた。
その何気ない仕草さえも可愛らしく、愛おしく思った。
その気持ちに気づいた俺は思わず目をそらす。
「いや、大丈夫だ。 ほら、そろそろ部活の時間じゃないのか?」
慌ててそう言うとサティスははっとする。
「そうね! ありがとうフェリス! また後で!」
そう言って笑顔で出口に向かっていく。
その道すがら他の仲間にもまた後でと手を振っていた。
そんな彼女の揺れる深紅の髪を見つめる。
「・・・覚悟を決めろ。 俺」
サティスの為に決心する覚悟を決める。
それを自分に言い聞かせるためにそう呟いた。




