ファセール 9
目の前で私の作った朝食を並んで食べるサティスとフェリス。
いつもの風景。
だけど、ちょっと違う。
フェリスのサティスに対する態度が今朝から変わった。
前からサティスに対しては異常に気を遣う人ではあったのだが、なんと言うか以前にも増して優しくなったように見える。
そして、一番の違いは目だ。
フェリスの目がサティスからほとんど離れない。
サティスしか見えていない。
そんな目をしている。
多分、今朝見たと言う夢のせいなのだろう。
もしかしたら、フェリスは自分の気持ちと、サティスからの気持ち、その両方に向き合う覚悟をやっと決めたのかもしれない。
今朝、サティスを見つめていたフェリスの雰囲気がそれを物語っていた。
つまり、サティスとフェリスが付き合うのは時間の問題になったと言うことだ。
今朝の2人の雰囲気を見て、とうとうこの時が来たかと実感して少しだけ寂しくなった。
・・・いや、それは強がりだ。
本当は苦しかった。
とても寂しかった。
サティスとフェリスが一緒になるのは私の悲願だ。
そうなってくれることを何よりも願っている。
それが、サティスの幸せに繋がるのだから。
だけど、それがどれだけ私の望みだとしても、それでもやはり私は・・・。
私は、サティスの事を愛しているのだ。
サティスが遠くにいくことは覚悟していても苦しい。
寂しい。
それでも、受け入れなければならない。
私は女で、サティスの『夢』を叶えて上げることはできないのだから。
サティスの本当の幸せに私は貢献できないのだから。
目の前で並んで朝食を食べる2人がこっちを向いて美味しいと笑顔を見せてくれる。
この幸せは後何回味わえるのか。
ふと、目の前の2人が互いの方を同時に見た。
目があって微笑みあう。
その様子が微笑ましくて、羨ましくて、苦しかった。
・・・これが続くのなら私はここにいない方がいいのかもしれない。
「ファセール?」
目の前で深紅の瞳が私を覗き込んでいた。
「ん?」
「大丈夫? なんだか、怖い顔をしていたわよ?」
そんな顔をしていただろうか。
「気のせいだよ! ごめんね? 心配かけて」
「でも」
「大丈夫だって!」
「・・・そう」
私の拒絶に近い言葉に諦めてくれたらしい。
今の私はなにを言ってしまうかわからない。
またサティスと喧嘩したくない。
できれば、サティスとフェリスが付き合うまでの残された時間を一秒でも長く仲良く過ごしたいのだ。
「さ、時間も危ないから急ごう!」
私がそう声をかけると。
「あら、もうそんな時間なのね!」
と、いつもの元気なサティスに戻ってくれた。
良かった。
なんとか今日もいつも通りに過ごせそうだ。




