『2年生勉強会編』 『動揺』 2
外に出て、すっかり日が落ちた夜空を見上げるテーセラ。
「・・・『私はどうしたら』」
そう呟いたテーセラの背に何者かの気配を感じた。
「『振り返るな』」
「・・・『ディオですか』」
「『あぁ。 そうだ。 『体育祭』の後の君の様子が心配になって様子を見にきた』」
「『すみません。 心配をお掛けして』」
「『謝るな。 『魔王』様の為に動き、同じ世界を目指す同士だろう?』」
その言葉にテーセラは一瞬言葉を詰まらせた。
「・・・『はい。 ありがとうございます』」
その様子にディオはテーセラの動揺を察した。
「・・・『テーセラ。 『魔王』様の作戦は絶対だ。 間違いなんて無いんだ。 それに、今君が見ている世界は紛い物なんだ』」
「『そんなはずは!』」
テーセラは振り返ろうとするが後ろ手を取られて動きを止められる。
「『あるんだよ! どれだけ素晴らしい居場所だと思っても必ず『魔族』は差別されるんだ! だから、根底にある間違った歴史を正さなきゃならない!』」
「『くっ!』」
テーセラは後ろ手を取られて苦悶の表情を浮かべる。
「『それに、なによりも大切な同士が何人も死んだ! 私の大切な人だって死んだんだ! だから止まる事などできない!』」
後ろからの怒声は止まらない。
「『私達は何回も裏切られてきたんだ! もう、信じることなんてできない! 歴史の修正を果たすまで私達は本当の意味で世界に認められることはないんだ!』」
「『そんな事は』」
「『あるんだよ! それが現実なんだ! お前は知らないからそんな甘いことが言えるんだ! 私達はもう、裏切られるのは沢山だ! 計画通りに進めて歴史の修正を果たさなければならないんだよ!』」
鬼気迫るその物言いにテーセラの考えが変わる。
本当に、世界はそんなにも信じることができないのか。
本当に、歴史の修正を果たすしかないのか。
本当に、今見ているものは紛い物なのか。
・・・そうであって欲しくない。
だが、それでも。
そうなのかも知れないと考えてしまった。
「『・・・もう、嫌なんだ。 世界から仲間外れにされるのは。 あんな、酷い土地で毎日を過ごすのは。 同士たちの辛そうな顔を見るのは!』」
今後ろで、涙声でそう語るディオの言葉はとても嘘だとは思えなかった。
・・・やるしかないのだろう。
今、周りにいる人たちの事を本当の意味で信じてはならないのだ。
全部が紛い物なのだから。
そう考えると悔しくなった。
せっかく受け入れて貰えたと思っていたのに。
ディオが言うには必ず裏切るのだろう。
紛い物なのだ。
そう考えると余計悔しくなった。
「『計画は試験終わり、全員の気が緩んだ時に実行する。 作戦は追って伝える』」
「・・・『わかった』」
「テーセラ?」
ふっと、後ろ手の拘束が解けて力が抜ける。
よろめく。
「テーセラ!? 大丈夫!?」
ふわりと自分を支える深紅が見えた。
後ろにディオの気配はもう無い。
視線を上げる。
自分を心配そうに見つめる深紅の髪の女性が目の前にいた。
「どうしたのよ?」
きっと彼女も裏切るのだ。
「・・・なんでもない」
目を見ていられなかった。
違って欲しい。
だが、信じられなくて。
テーセラは彼女を押し退けるように遠くへ歩き去って行く。
後ろからかかる制止の声に足を止めることはできなかった。




