『2年生勉強会編』 『動揺』 1
体育祭が無事に終わって間もなく。
『メディオ学院』『図書館』では『勉強会』が開かれていた。
始まりは数人だった『勉強会』は、現在ではかなり大々的なものになっている。
3年生が卒業したが、噂を聞き付けてきた1年生が参加しているため人数は変わらず、むしろ増えているくらいだった。
8月の長期休暇前にある実力テスト。
それに向かって勉強に励む様々な生徒達。
その中に机の上に広げた参考書を見つめたまま動かない生徒がひとり。
『そろそろ、計画を実行に移すつもりだ。 覚悟は決めておけ』
体育祭終わりに受けた警告を思い出している彼はテーセラ。
その警告をしたのは、彼と同じ『魔王軍』の『四天王』がひとり、『ディオ・エルキーオ』。
変装を得意とする彼女が、闇に紛れながら警告してきたのだ。
計画を実行に移すから覚悟を決めろと。
その警告を受けてからテーセラはずっと考え込んでいた。
テーセラは隣で、この学院でできた友人プーロとともに勉学に励む妹のフロロースに視線を向ける。
真剣な目で、しかし、楽しそうに学ぶ彼女の姿に心が暖まった。
今度は周囲を見渡す。
種族など関係無しに、互いに互いの得意分野を教え合い、ともに高めあっている様子が見えた。
テーセラは、『魔王』達からずっと言われていた。
『魔族』は世界中のあらゆる『種族』から忌み嫌われ、差別されていると。
実際、その様子はどこの国でも見られていたのだ。
だから、この『メディオ学院』も同じだと思っていた。
むしろ、そうであったならここまで動揺する事もなかったのだ。
『魔王』を信じて言われた通りの計画を実行するだけで良かったのだから。
しかし、『メディオ学院』は想定と違った。
確かに入学当初は警戒の目はあった。
自分もそう言うものだと距離を取り壁を作っていた。
しかし、あの紅い髪の女性がその壁を壊した。
入学から早3ヶ月。
様々な人々と関わって行くうちに徐々に打ち解けていった。
会話し、ともに学び、ともに切磋琢磨して行くうちに確かに仲間意識が芽生えたのだ。
『体育祭』では、確かに団結感を感じた。
だから、テーセラは思い悩むのだ。
『魔王』の計画は、この『メディオ学院』を危険な目に遭わせる計画である。
だから、今、『魔族』の事を受け入れてくれている『メディオ学院』を襲う計画を実行することが本当に正しいのか分からなくなったのだ。
現に今、『メディオ学院』は『魔族』が求め続けていた偏見の目が無い社会へとなりつつある。
ここで、『魔族』が何か悪いことをしたら『魔族』の立場が悪くなり、目指している世界が遠退くのではないかと思うのだ。
しかし、彼には『魔王』に拾って貰い、記憶を無くしているも関わらず助けてくれた恩がある。
更には、今自分が名乗っている『テーセラ・アディナトス』の名は元『四天王』だった者の名だ。
彼が死んだときに受け継いだ立ち位置と名なのだ。
そして彼は、ディオの婚約者でもあった。
だから、期待は裏切りたくなかった。
「・・・くそ。 どうしたら」
テーセラは頭を抱える。
「『お兄ちゃん?』」
隣のフロロースがテーセラの顔を覗き込みながら心配そうな目を向ける。
「『あぁ。 ごめん』」
テーセラは謝って立ち上がる。
「『少し、外の空気を吸ってきます』」
そのまま外に出ていくテーセラだった。




