『体育祭2年生編』 『打ち上げ』
リレーが終わり、結果発表も終え、片付けまで終わる頃には日が落ちていた。
『剣術実験場』。
そこでは、打ち上げと称して『東』の生徒達が集まり飲食をしていた。
「負けたわ!」
ダンッと音を立てて葡萄酒が入っていたコップをテーブルに置くサティス。
その顔は少しだけ不満そうである。
「もう、危ないよサティス。 リレーは勝てたんだよ?」
敗北の悔しさから少し荒れているサティスを嗜めるファセール。
しかし、サティスは顔を伏せる。
「リレーで勝ったのは嬉しいわよ? でも、せっかく皆で頑張ったんだから勝ちたかったわ」
「それは、ボクもだけど」
「それはそうだ。 俺だって悔しいよ」
サティスの隣に座っているフェリスも葡萄酒を飲む。
「私達も」
「全然」
「「だめだったぁ」」
ファセールの隣で並んでぐったりするアミとミーゴ。
他のテーブルも、なんとなく悔しそうな雰囲気である。
と、フェリス達から少しはなれた位置に居るテーセラが、隣のフロロースに声をかけた。
「すみません。 リレーで勝てませんでした」
その言葉を受けたフロロースは首をかしげる。
「謝るのなんで? 私、楽しかったよ?」
「え?」
「だって、みんなと一緒だった! みんなで頑張ったのはじめて!」
立ち上がって両手を広げるフロロース。
「嫌なこと言われない! みんな笑顔! 負けちゃったけど、それでも、楽しかった!」
笑顔のままで、くるくる回る。
その様子に視線が集まる。
「私、嬉しい! 友達たくさん! 楽しい一緒!」
回転を止めて全員に聞こえるように言う。
「ありがとう! また、一緒にやろう!」
小さなフロロースの、嘘偽り無い純粋な言葉に全員の表情が緩む。
変えようの無い事実として結果は敗けだった。
あと少し、届かなかった。
だが、楽しかったのも事実なのだ。
皆でひとつになって、ひとつの目標に向かって頑張った。
それが、すごく楽しかったのだ。
フロロースの言葉でそれに気付いた者達が1人ずつ声を出していく。
「あぁ、そうだ。 楽しかったよな!」
「えぇ、楽しかった!」
「あれすごかったよな! シオン相手に立ち向かったテーセラ!」
「あなたも助けてくれてありがとう!」
「それを言うならこっちだって!」
「あそこであぁできてれば!」
「でも、あれは良かったよな!」
少しずつ雰囲気が明るくなっていく。
その雰囲気を見たクラボが立ち上がり、全員に声をかけた。
「あぁ、楽しかった! 私は今年、皆と共に戦うことができた事を誇りに思う! そして、今年の『体育祭』は一生忘れない、良き思い出となった! 心から感謝する!」
それが最後の一押しとなり、活気が戻り、楽しい打ち上げの雰囲気へと様変わりした。
サティスもその様子を見て表情が和らぐ。
「・・・ふふっ。 そうね。 楽しかったわよね」
隣のフェリスは頷く。
「あぁ。 楽しかったよ。 リレーで勝てたのは本当に嬉しかったし」
「あれ、本当に胸が熱くなったよ」
ファセールがフェリスの言葉に賛同する。
「そうよね! 去年すっごく悔しかったから嬉しかったわ!」
サティスが笑顔で握りこぶしを作った後、その拳をゆっくり下ろす。
サティスは微笑んだまま隣のフェリスを見て首をかしげる。
「今年は、フェリスの期待に応えられたかしら?」
その問いにフェリスは微笑みを返す。
「もちろんだよ。 今回だけじゃなく、サティスはいつも応えてくれてるよ。 むしろ、俺がサティスの期待に応えられているのかが心配なくらいだ」
「なに言ってるのよ! フェリスだっていつも応えてくれてるわよ! 応えすぎなくらいだわ!」
「ははっ! なんだよそれ!」
サティスの返事にフェリスは笑う。
そんな2人の様子を嬉しそうに見つめるファセール。
その後も打ち上げは楽しい雰囲気の中で進んでいったのだった。




