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パーティシペイター  作者: 後出しジャンケン
1章
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6/13

決意の物語5

4時間目 道徳

本日最後の授業は道徳だ。これが終われば帰れるということで一部の生徒たちは浮かれている。そのせいか授業始めの挨拶の声がやや大きかった気がする。


「朝の会で伝え忘れてたけど今日はこの時間が終わったら掃除なしで帰りの会なので間違えないように。」


おぉ。つまりこれで今日は学校が終わりなわけだ。帰って誰かとゲーセンにでも行きたいな。と思いながら道徳の教科書をめくっていると、今黒板に書いてあるタイトルと一致するページを見つけた。道徳の授業は基本教室で先生は変わらない。因みに俺達の担任の先生は音楽の担当だ。


「はーい、教科書の34ぺージを開いて下さい。」


先に開いていた俺は優越感に浸ることができた。優越感に浸りながら、黒板を見ているとめあてが書かれ始める。


チョークが黒板に当たる音は中々に耳心地がいいなと思いながらめあてを道徳のノートに書き写す。すると


「キュキィー!」


と耳障りな音が鳴り響いた。黒板に先生の爪が触れたのだろう。なんとなく隣を見ると睡眠を邪魔されたのか不機嫌そうなしぐれがいる。確かにあの音は気持ち悪くなる音である。


そんなこんなでめあてを写し音読に入る。今回は珍しく一列目の後ろからスタートだ。


「間違えることの正しさ。作 ごま じょうゆ。ある日………」


と音読が始まる。見た時も思ったのだが、タイトルといい作者といい、絶対突っ込みが入りそうな作品だ。音読で俺が当たるのは何処になるだろうかと文を先読みしているとこのストーリーに妙な違和感を覚えた。


その時に音読の順番がまわってきた。読み終えると俺が感じた違和感を共有すべく隣のしぐれを起こし感じた違和感を話した。するとしぐれは


「お前らしい感じ方だな。まぁ、皆も殆どがそう感じてるだろうし、お前の感覚も間違ってはいないんだろうな。天草。」


「それじゃあ、俺の感じてることは正しいってことだよな?」


「そこだよ、天草。お前の感覚は間違ってないだけで大正解かといわれるとそうじゃないんだ。感覚が正しいか正しくないかなんて二者択一じゃないんだぜ。」


俺の癖を注意したと言う事以外何が言いたいのかいまいち分からない。


「ちょっとしぐれたち!何を話してるの!他の人が音読してるでしょ!」


怒られてしまった。しぐれが何か反論するかなと思ったがそういったこともなく俺としぐれは先生が目を放すまで警戒し、目を放してから俺はノートに目を向け、しぐれは寝始めた。


しばらくすると音読が終わり先生は登場人物の確認とどういう話であるのかを黒板に板書する。


内容はある小学校の話で、3人の生徒が1人の生徒をいじめ、自殺に追い込む。そして、その3人は人殺しとしてクラス内から除け者にされその3人すらも自殺を選ぶ。この状況を知った先生はクラスに対しお前たちが人を殺したんだ、と説教し、あの3人は間違ったが少なくともお前たちよりは正しいことをしていた者達だ、と生徒たちに言い聞かせて話は終わった。


ざっとこんな内容だ。何か腑に落ちない内容だなと思っていると、先生は黒板に板書を終え、


「正直、先生もこの内容はおかしいと思ってるけど、1つ共感できるところがあって、間違えた人を皆で除け者にするのは間違ってると思います。皆はどう思う?班にしてこの物語で共感できるところを話し合って下さい。」


と指示した。このクラスはだいたい4人か5人の班になる。俺の場合は4人班だ。俺、しぐれ、栗蔵 愛妹(くりぐらいとめ)、疾殻 友美(はやがらともみ)の男子2人女子2人メンバーになる。早速俺は


「共感できるとこなんて無くね?なんか全部おかしい気がする。」


と率直な感想を述べる。すると愛妹は、


「そんなことないよ。先生がさっき言ったことは共感できるでしょ。」


とのこと。友美もそれに頷いている。これはしぐれにも意見を求めた方が良いのかもしれないと思いしぐれを起こす。


「なぁ、しぐれ。この物語の共感できるところって何かあるか?」


起きたしぐれは


「無いことは無いだろう。例えば自殺するなら高い所に行くとかな。」


「お前それは、共感しちゃいかんだろ。そもそもお前自殺とは程遠い存在だろうが。」 


俺達の会話に女子達が付いてこれていない。当然だな。


「あんまり、自殺、自殺言わない方がいいよ。縁起が悪い。」


普段は無口な友美が珍しく口を開いた。


「わ、悪ぃ。不快にさせちまったか。反省、反省。」


しぐれも珍しく反抗せずに謝っている。いつもは男女関係無く口ごたえをするもんなんだが。


「それで、しぐれ君はこれのどんなところに共感したの?」


愛妹は興味があるのかしぐれの感想を聞こうとしている。


「どんなところ?まぁ、全員の行動理念?そこには共感できるなって思ったな。」


しぐれなら共感してもおかしくないな。確かにこの物語はどことなく奇想天外ぶりが目立っていた気がする。


「それで、全員の意見を聞いたわけだけど、禎流君はなんで共感できないの?」


おっと、振られてしまった。理由?そんなの単純。


「間違いを無理矢理正しいって言ってるだけの物語だから。」


「お前……。まぁいいや、具体的に何処が間違いで何が正当化されてんだ?」


しぐれは呆れつつも簡略化された理由の真意を聞きただす。


「簡単な話。人を自殺に追い込むことはどう考えても間違ったことだ。それをこの物語の先生は正しいと言う風に言っている。さらには自殺に追い込んだ奴らを悪く言ったことに対して先生は間違いだと言った。これは逆に正しいことを間違いだと言っている。この不可解なことが成り立ってるから俺は共感出来ないんだ。」


「つまり禎流はやられたらやり返すは正しいことだって思ってるってこと?」


ウゲッ。先生に聞かれていたようだ。急に先生から質問されてしまった。


「はい。悪いやつに悪いと言っているだけなので、正しいことだと思います。」


「それを繰り返して結果的に負の連鎖になったとしても、やられたらやり返すは正しいと思う?」


出た。あまりにも定番すぎるこの疑問。悪を糾弾し続けた結果が負の連鎖になる。何度も言われてきたことだ。故に答えも決まっている。


「たとえ負の連鎖が起きたとしてもそれは正しいことをし続けた結果なのでそれは当人たちにとっては間違ったことじゃないんだと思います。だから俺はやられたらやり返すは正当なことだと思います。」


これを聞いた先生は納得したように頷いている。


「禎流の言ってることは間違いじゃないかもだけど、正しいとも言えないね。例えばの話だけどこの物語であの3人がいじめじゃなくて、注意であの子を圧迫して死に追いやったとしたら?この結果は禎流の言った間違ったことにならないかな?」


「………そう……かも?」


なんか無理矢理言いくるめられた気がするけど先生が言ったことも一理ある。つまり


「正しい行いが必ずしも正しい結果をもたらすとは限らない。だろ先生。」


しぐれが急に話しだした。なんだこいつさっきまで黙ってた癖に。


「そう。先生が言いたいのはそういうこと。正しいとか間違ってるとかで考えるのはいいけどあんまり強く意識しないようにね。」


「アッ、ハイ。」


と素っ気ない返事をすると先生は他の俺の考えに興味が移ったようで


「それで、禎流の考えは変わった?」


と聞いてきた。


「いや、加害者の方に多様な見方があるのを分かっただけで、俺の考えは変わらないです。」


「そっか。変らないか。あはは。」


と先生は笑って去って行った。


「先生と禎流君の会話、難しすぎて分からなかったな。」


愛妹は疑問を口にする。これに対ししぐれは


「なら、例え話で考えようぜ。もしお前に妹が出来たとして、その妹が友達の物をふざけて壊したとしたらお前はどうする?」


「そんなの怒るよ。だって、ちゃんと良い子に育って欲しいもん。」


しぐれは得意気になってさらに質問を仕掛ける。


「じゃあ、何か正当な理由があって妹が人の物を壊したとしても、お前は怒るか?」


「正当な理由?まぁ、私が納得できる理由なら注意するくらいで別に厳しく怒りはしないかな。」


「その理由がお前の為だったとしてもか?」


「え?私の為?」


「そう。妹がそれをしないとお前が何か不利益を受けるんだ。そうならない為に妹は物を壊した。こんなにお前の為を思ってるのに、それでもお前は注意するのか?」


愛妹はう〜んと悩み、ふと顔を上げて


「わからないや。私どうするんだろう?」


これを聞いてしぐれはより自慢気になり


「そうだな。まぁ、お前が『注意しない』っていう選択肢が出しきらないのは分かってたし、ここで悩むのも想定済みだ。そう。お前は妹が行った理由が分かっていればそうやって悩むんだ。けどな、妹が理由を話さなかったら、お前はただ壊したってことだけで妹を注意する。たとえ、それがお前の為にやったことでもな。」


と得意気に述べた。愛妹は納得したような顔をして


「あぁ成る程ぉ。こんなことみたいなのを正しい行いが必ず正しい結果になるとは限らないって言ってたわけね!」


と分かったことを述べた。そしてにっこりと笑い


「でも私が妹好きだってのを利用したのは許せないけどね!」


と笑顔のまま言った。そうだった。愛妹は妹好き。というより幼女?自分より年の低い子。特に女子が大好きなのだ。理由は可愛いから。そのため、いつも小学校低学年とよく話しており、低学年の生徒から先輩と呼ばれている。


その時の愛妹の表情なのだが楽しそうと言うだけでは圧倒的に足りてない。楽しんではいるのだが愛妹の何かはこの時に満ち足りているようなのだ。なんか今なら死んでもいい。という表情をしているのだ。


そしてそんな自分が愛して止まない者が家に欲しい。そう切に思い続けているため自分は妹好きだと名乗っているのだ。俺から言わせれば常軌を逸したロリコンとショタコンを合わせ持つヤバいやつとしか言いようがないのだが。


「悪ぃ。こんなんしか例え話が出なくてな。許せ。」


としぐれが上から目線で許しを請うが


「何言ってるの?無理だよ。」


しぐれは急に萎縮した。隣で友美は笑っている。そうこうしていると


「はい。話し合い終わり。話して出た意見とかをノートに纏めて下さい。終わった人は一番下の感想を書いて下さい。」


と先生から指示が出た。そういえば、これが終われば下校だったな。パッパと書いて持ち帰る教科書でも整理しよう。と思いながら感想を書き終え、教科書を整理しようとしていた時に


キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン


「はい、挨拶。」


「起立、気を付け、礼。」


「「ありがとうございました。」」


あとはいつものように帰る準備を済まして出来た人から着席しておく。つもりだったが、ちょっとばかり今日の道徳の感想を聞きたい奴らがいるため、準備を終わらせそいつらの席に向かった。

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