決意の物語3
2時間目 外国語
「Good morning everyone How about you?」
「Good」「Happy」「Tired」
などなど先生の質問に対して生徒が答える感じで外国語は始まる。因みに俺は「Fun」と返した。小学6年生でFunを知ってるのはおそらく俺ぐらいだと思ってる。そんな俺がマウントを取っている中しぐれは安定のSleepingtimeだ。勿論外国語の先生からも
「Oh!? There are sleeping boy!You must't sleep!」
と英語の意味は分からないが、なんとなく言っていることが分かりそうなことを言われている。それでも起きないしぐれに対し先生はある呪文を口にする。
「Are you ready?」
「「WAKE UP!!!」」
それでも起きないので……
「「WAKE UP!WAKE UP!WAKE UP!…………」」
とクラス中でしぐれに対してのみ言い続ける。すると流石のしぐれも、
「OHHHHHHH!?very rowdy!!」
そして先生はしぐれの言葉を訳してくれる。
「おおおおお!?とても騒々しい!!って、しぐれが寝てるのが悪いだろ!」
至極当然の回答。しかししぐれは
「Why?What is evidence?Maybe it's caused by AMAKUSA!」
「なぜ我が悪いの?証拠は何?きっとこれは天草によって引き起こされた!また禎流のせいにするのかよ!お前これでわけのわからん言い訳したの何回目だ!」
「Don't remember」
「覚えてないって…そういう話じゃなくてだな………もういい!とりあえず授業受ける時は起きておきなさい!」
という風に無理矢理やり込められ、しぐれは渋々起き出す。
「は〜い、授業始めるぞ。open your textbook page 32」
やっと平常運転に戻り授業が開始される。にも関わらずしぐれは既にうと寝状態。もうこれ以上はきりがないと思ったのか先生も注意することなく授業に移った。
「Look at this picture what is it」
教科書を見るとそこには卒業式らしい写真があり、写真の近くに英語が書いてある。どうやら先生はこの絵が何なのかということを聞いているようだが殆どの生徒は英語が理解できないため、暫く沈黙が続く。すると突然
「Graduation festival!」
しぐれが起立して言い出したではないか!?先生もそれに驚いた様子だったが、
「何が卒業祭だアホ!どう考えても卒業式!graduation ceremonyだろ!」
と的確な突っ込みを入れる。しかししぐれはやはり寝ており先生の話を聞いていない。青筋を浮かべながら呆れる先生は授業に戻り、
「はい、というわけで今回は卒業式がテーマです。皆はまだまだ先だって思ってるかもだけど割とすぐに卒業式って来ます。なので今回は卒業式をテーマに小学校5年間で思い出に残ったことや、将来何を目指すかなんかを英語で表現できるようになるのが今日のめあてです。」
おぉ、何たる高難易度か。あんまり英語を知らん俺達に対する課題にしては難しすぎるだろ。とか考えてるうちにプリントが配布される。プリントには①小学校5年間の思い出(日本語)と書いてあり、その下に英語に直してみようとある。そんな形式で②中学校でしたいこと③中学校を終えて将来したいこと、というように書いてある。
「もし、分からんことあったら先生に遠慮なく聞いて下さい。」
うん、遠慮してでも聞くわ。
そして案の定先生の周りには女子が集まっていく。では男子は何処に集まるのか?勿論しぐれだ。男子はしぐれを囲むようにして包囲し、次から次へ分からない英語を質問することでしぐれを嫌でも寝かせないようにしている。
「まずお前ら日本語考えてから聞けよ!次から次に質問ばっかじゃねぇか!我が寝れんだろう!」
「いや、寝ちゃだめだろ」
「寝かせるわけねぇだろ」
「お前に寝る権利は無い」
等としぐれに対し辛辣な皆。
「おい天草この状況どうにかしたらどうだ!」
「俺に振られてもなぁ、皆が言ってることの方が正しいから言う事聞いたらどうだ?」
「やはり天草お前はダメだ。ったく、日本語出来たやつから我に聞きに来い!」
とぐだぐだぐだぐだしながらもクラスの中の大真面目、軌条大智が一番最初に日本語を書き終えた。
「流石は大智だ。よぉし、お前の奴を英語に直してやろう。どれどれ…よし!①の英語はなMy best memory is sports festivalって書いとけ。」
「いや、どう書くか分かんないんだが……。」
「クソが、お前らスペルも分かんねぇのか!」
「「当たり前だよなぁ!」」
「その当たり前を変えていける人に育って欲しいよお前らには…」
そう言いながらもしぐれは大智の日本語を英語で書いている。そして、
「ほい!これで脱稿だ!①はさっき言っただろ、②はI will join soccer club、そして③はI want to be pro soccer playerだ。」
「おぉ有難うしぐれ。」
大智は大真面目なのでこんな奴にすらお礼を言っている。するとしぐれは照れ臭そうに
「お、おう、感謝を忘れるなよ!」
素直にどういたしましてと言えばいいのに。まぁそれが出来ないのがしぐれの人間性だろう。
とはいいつつしぐれは次から次に来る男子の日本語を英語に変えている。ようやく男子の半分の日本語を英語に変えてやったところで
「そういや天草よ、お前まだ出来てねぇの?早くしないと疲れて寝てしまうぞ?」
「おっ、そうだな、じゃあ、見てもらおうか。」
当たり前のようにプリントをしぐれの元へ差し出すと、しぐれは嫌そうな顔をして、
「もうちょと、感謝の意を添えたらどうだ、感謝の意をよぉ……。」
「何を言っているんだか。お前が言い出したことだろうに。」
「よし、お前には二度と救いの手を差し出さんからな、覚悟しとけ天草!」
と言いつつも、俺の日本語に目を向けながら、英語に変えていくしぐれ。そしてしぐれは何を発見したのか一人でクスクス笑い始めた。
すると当然周りの男子も俺の日本語に何かあるのだろうと思い、俺のプリントを見るわけだが、見た男子の殆どは何が面白いのか分かっておらず見たごく一部の男子だけ理解が出来ているのか笑っている。俺も何が面白いのか分からず
「おい、何が可笑しいんだこの野郎。笑ってないで英語に直す作業をしたらどうだ?」
と思った通りの疑問と要求を訴える。しかし、しぐれ達の笑いは中々おさまらず、ついにしぐれが口を開くと
「お前将来の夢が裁判官って、少しは現実を見たらどうなんだ?ははは!」
「はぁ!?そ、それの何が可笑しいんだ!お、俺の夢だ!笑うことはないだろう!」
「まぁまぁそうイキリ立つなって。そういうとこだぜお前が笑われるのは。」
言っている意味がさっぱり分からない。どうしても納得のいく理由が欲しいと思い、
「そんなアバウトな理屈じゃ分からねぇだろ!もっと具体的に理由を、話したらどうだ!」
と問いただす。しぐれはこのことに対し、
「あ、理屈だぁ?裁判官になるにはその理屈を自分で納得いくようにしないといけねぇんだぜ?そんなのを人に求めてる時点でお前が裁判官になるのは不適当なんだよ。」
「ますます意味が分からないぞ!裁判官の何処に理屈を自分なりに納得させる要素があるっていうんだ!」
「まぁまぁ落ち着けってお前ら、そんなギャーギャーいがみ合ってても仕方がないだろ。要は禎流に納得のいく理屈を話してやればいいんだろ?じゃあわざわざしぐれもまわりくどい言い方しないでストレートに言えばいいじゃんか。」
俺たちの口論に呆れたのか、一人口を挟む奴がいた。クラスで中立の立場を保っている(自称)という覇山智気だ。すると納得したのかしぐれは
「そうだな。それもいいかもな。じゃあ、率直に言うとお前には裁判官になるに於いて必要な心持ちを備えていないんだ。」
いや、だからそれはなんなんだと聞こうと思い口を開こうとする前に
「まだ、分かりにくいなしぐれ。簡単な話、禎流には人の心を理解する能力が不足し過ぎているわけだ。お前は善悪だけで物事を判断する傾向がある気がする。でも禎流が判断する善悪って何を基準にしてるんだ?多分お前の価値観だろう。裁判官の基準は法か己の良心だ。禎流の価値観は裁判官に必要な良心として相応しいのか?いや、悪いやつをただ間違った人間としか見ることが出来ない禎流には相応しいものじゃない。」
おお、成る程。俺には確かに善悪で判断したがる癖がある。その際に悪は悪として処理しているのも事実だ。これをしぐれの言っていた理屈云々に当てはめると俺は有罪判決が出た人間を裁くときにそいつが犯行した理由を考えずに判決を下すだろう。そのことを裁判官の理屈付けと解釈できるわけだ。
「成る程ね。しぐれのより納得できる理由だな。やっぱしっかりとした理由が言える智気はすげぇや。」
としぐれをけなし智気を褒めるようなことを言うとしぐれはムスッとなって
「ふん!我が言葉を理解できんだけの低能が、何をほざくか!」
といいながら、将来の夢の欄を英語に変えようとした時だった
「………………えぇと………裁判官って、英語でなんやったっけ?………」
としぐれから驚愕の一言が。
「お前が分からんなら先生しか分からんやろ」
当然の一言を入れる智気。
「いや、待て……確かジャッジメントが審判みたいな名詞だったから、それにerを付けてジャッジメンター。スペルはjudgementerか?」
お、なんか格好いいやん。
「っとこれでいいか。はい次!」
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
「は〜いおしまい。プリント集めて挨拶。」
おい、男子終わってないぞ。どうすんだこれ?そんなことはお構いなしにプリントが回収されていく。男子の半分近くが、終わっていないことを先生が確認した後、
「は〜い、挨拶して終わっていいぞ。しぐれは残っとけ。」
挨拶が終わりしぐれ以外で教室に戻り2分程雑談や次の授業の準備をしているとしぐれがブルブル震えて帰ってきた。
「おいおい、お前どうした!」
そう声を掛けてやると、
「まさか裁判官の英語がjudgeだったとは……。ははは…。」
「いやいやお前そんなことで怒られたのか!?」
「あれは怒りじゃない。明確な殺意だ。本気で我を殺そうとしたんだあの先生…。」
「いや嘘つけ!お前ほんとに何があったんだ!」
「授業中に寝るなだとさ………」
絶句。思っていたよりも浅いことだった。
「それは怒られて当然のことだろうに……」
「次何?」
「体育」
そして体育の準備に取り掛かる。運動場に行く途中で聞いた話だが、しぐれの書いたジャッジメンタ―は、英語の教室の前に創作英語として飾られたらしい。




