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第一層 episode.8

〜〜〜〜♪


いい音色だ。聞いているだけで心地の良い気持ちになる。


「………どうでしたか?」


「今のはベートーヴェンの………『月光第一楽章』だっけ?」


それから少し驚いた表情を顔に出したエルは感嘆したような声をあげる。


「どうしてこの曲を?」


「………なんでだろ」


「分からないんですか………」


「うん………すまん」


「いえ………別にいいのですが………では、出発しましょうか」


「そうだな」


それから2人で線路に降りる。俺はそのままジャンプして線路の枕木に着地する。足にそれなりの衝撃が来て傷に響いたがなんとかなりそうだ。


「………」


「どうした?降りないのか?」


「いえ、今降ります」


そう言ってぶかぶかでオフショルダーみたいになっているTシャツの裾を短パンに入れ……少し立ち止まった。


「………どうした?早く降りろよ」


「………」


「あー………ほら早く手掴め」


「………わかったんですか?」


「足だろ、痛いなら早く言えって言ったろ」


「………すみません」


「変なところでやせ我慢するな」


「…はい」


俺は飛んできたエル抱き止めそのまま枕木にゆっくりと下ろした。


「………ありがとうございます」


「気にするな。じゃあ行くぞ」


「はい」


それから2人で草に覆われた線路の上を歩き始めた。駅を抜けるとそこには緑に飲み込まれた都市の姿があった。


「………凄いですね……」


「結構広いんだな……ここ」


「元々は国一の都市だったそうです。でも第2階層が作られてからどんどん寂れていってしまったそうです」


「よく知ってるな………さて、そろそろ行くぞ」


「………思い出したんですけど今日一日は動かない約束でしたよね?」


「うっ………そういや思い出した………でもまあもうどこも痛く無いしいいだろ」


「………本当にもう痛く無いんですね?」


「痛く無いって」


正直な話をさせて貰うと痛い。さっきのジャンプのせいで噛まれた足の傷がまた少し開いたかもしれない。さっきからズキズキするしなんか包帯がぐしょぐしょになっている。


「………嘘ですね?」


「………な訳…」


「あります。さっきジャンプしたときですね?………なんというかもしかしてショウマさん意外とおっちょこちょいですか?」


「………否定はしないし肯定もできん」


「………次の駅でまた止血剤を塗りますから。もうあんまりないので残しておきたかったのですが………」


すごい冷たい目だ。俺が犬に襲われている時、助けにきてくれたあの時の目みたいだ………


「まあいいから行こう。食料も探したい」


「………そういえば朝ごはんを食べてませんね」


「確かに………正直俺も腹が減ってるんだよ」


「そうですか。じゃあカロリーブロックの残り……ここで食べちゃいましょうか」


「おー」


それから2人で線路脇に座り、残りの白い文字の方のカロリーブロックを食べた。今回は………


「プレーンか?………プレーンってなんだ」


「………なんでしょうね?ではいただきます」


そのままパクっと食べたエルが変な顔をした。なんかあんまり美味しいものを食べた時の顔には見えない。


「………どうした?」


「………これ…あんまり味しませんね、というか全く味がしません。強いて言えば………パンをすごく押しつぶして乾燥させた味という感じですかね……」


「………」


どう聞いても美味しいとは言い難い味の感想に覚悟を決め、そのパンを潰した様な味らしい焼き菓子を口にする。


「………確かに、エルの感想が一番しっくりくるかも……」


不味くはない。そう、不味くはないのだ。ただ、昨日食べたチーズ味よりかは圧倒的に美味しくない。


「「………ごちそうさま…」」


食べきった。なんだか後味はパンを食べた後の様で良かったが…


「………今度からプレーン以外の味にしましょうか。なければ……まあ。なければこれでもいいですけど」


「そうだな………じゃあ出発しようか」


「そうですね」


それからまた2人で歩き始めた。特に変わったこともなく次に駅に着いた。


「………着いたな」


「そうですね」


「………」


辺りを見回すとさっきの駅と同じような構造だった。特に変わったものは見つからなかった。


「さて、ここは二階だから一階に降りてなんか探してみるか」


「そうしましょう」


それからホームに上がり、階段から下に降りた。


「………」


さっきの駅よりかは随分と綺麗だった。なんだかあの2フロアに続いているでかい柱に近づくにつれどんどん植物の量や瓦礫が減っている気がする。


「………とりあえず食べ物と薬を探すか」


「そうですね、じゃあ私は薬を探してきます。食べ物の方はお願いします」


「おー……拳銃持ってるよな?」


「はい。いざとなればこれを使うのでご安心を」


「………弾薬は?」


「あと………20発ほど。でもマガジンはあなたに渡しているので5発ですね」


「じゃあ渡しておくから………使い方わかるか?」


「実はあまりよくわかっていなくて………マガジンの変え方がわからないんです」


「オッケー今教えておく。ほらグリップの横にボタンがあるだろ?そこを押すと」


俺がそのボタンを押すと中からマガジンが出てきた。


「マガジンが出てくる。んでそのボタンの斜め上にまた別のボタンがあるだろ?これが安全装置。つけとけば勝手に弾が出ることはない。まあこんぐらいだろ、あとは……マガジンは空にするな。必ず2発残してリロードしてくれ」


「……?なぜですか?」


「そりゃあ……弾倉が空になるともう一回スライドを引かなないといけないから…面倒だろ?」


「………そうですね、覚えておきます。では、行ってきます」


「気をつけろよー……さて」


辺りを見回す。特に変わったものはない。強いて言えばここは軍人の白骨死体が多いことぐらいだろうか。


「探しますか」


それからまず昨日のようなガラス張りの壁の中にある部屋を探した。


「ガラスガラス………あった」


ここはガラスが割れずに残っている………よく考えたら前回はガラスが割れていたから入れたが今回は入れない………入り口ぽいところもあるが押しても引いても横に動かそうにも開きそうにない。

よく見たら取っ手がない。昔の人はどうやって開けていたのだろうか………


「面倒だし壊すか」


ライフルを逆に構え銃底を思いっきりガラスにぶつけた。ガッという音が廊下に響き渡る。


「………」


割れない。硬すぎだろこのガラス……さてどうしたものか。そう考えた俺はもう完全に強硬手段に出ることにした。


「撃つか」


そう呟くと素早く弾を装填する。トリガ。


ターンッ……


またも廊下に銃声が鳴り響いた。今度はどうだと撃ったところを見てみる。


「割れてるが………こりゃ時間がかかるな………」


綺麗に撃ち抜かれたガラスがそこにはあった。直径7mmほどの穴が。


「………だめだこりゃ…時間がかかりすぎるし何より弾が足りない。あーあ、無駄に弾を使っちゃったな……」


それからどうにかしようと考えてみた。

まず一つ目石を投げる。却下。銃弾でしか開かないようなガラスと石で割れたら苦労しない。

二つ目。白骨軍人のの銃を使う。却下。弾が1発も残ってなかった。

三つ目。白骨死体軍人のロケットランチャーを使う。却下。この廊下の幅じゃ自分もろとも吹っ飛ぶのがオチだ……


「………なんかないかな?」


白骨軍人の懐を弄る。あった。あったが………


「手榴弾か………」


これならガラスを吹っ飛ばせるかもしれない。そう思うとなぜか手に力がこもった。



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