第一層 episode.9
それから先ほどのガラスの壁の前に戻ってきた。グレネードは………どうやら時間経過で爆破するグレネード。フラググレネードらしい。これなら逃げる時間もあるだろう。
ピンッ!
ピンを抜き、ガラスの壁の前に転がす。そのまま身を翻全力で走って逃げた。
ドッ!!!!
おそらく爆破したであろう音が背後から聞こえてきた。ガラスが吹き飛ぶ音も聞こえる。
「………これでやっただろ」
それからそおっと中を覗き込む。どうやらガラスはかなり硬かったらしいが無残に吹っ飛ばされていた。
「………さて食料を探してみるとしますか」
それから中を探してみた。とりあえずカロリーブロック的なものがたくさんあった。水が結構減ったのでたくさん入れることが出来た。
「よし、戻るか」
それからさっきエルと別れたところに戻ってきた。どうやら今回は俺の方が遅かったらしい。そこにはエルがボーッと突っ立っていた。
「………あ、ショウマさん」
「おー。なんかあったか?」
「えーと……止血剤と造血剤が少しだけ……」
「そうか……こっちはカロリーブロックが結構あったぞ」
「よかったですね」
「おー……あーなんか疲れたわ…」
「大丈夫ですか?ホームのベンチで一休みしましょうか」
「………おー」
なんかドッと疲れた。特に疲れるようなことはしてないのだが……まあ今日は色々あったからな……少し休みたい気分だ。
それからしばらく歩き先ほどのホームにやってきた。適当なベンチに座る。
「……なあ2階層ってどうなってるんだ?」
「えーっと……医療都市とか言ってました……多分ですけど」
「医療都市ね〜………そういや今日って何日の何曜日?」
「すいません。わたしにもわかりません……でも、あったかいので春なのは確かかと………」
「お前にもわからないことはあるんだな」
「それはそうですよ……わたしにも知らないことはあります……あと、造血剤打つので腕出してください」
「わかった」
俺はパーカーの袖をまくり腕を見せる。
「………ショウマさん…意外と筋肉あるんですね……」
「ん?あー……そうだな。いつ鍛えたっけ?」
「無駄のない筋肉のつき方ですね。では打ちますよ」
「おー」
腕に冷たい感触が走る。すぐになくなった。腕の中に違和感を感じつつ袖を下ろした。
「………ありがとな」
「別にこれぐらい………なんだかあったかくて眠くなっちゃいますね……」
「……少し寝るか?」
「いえ、大丈夫です」
でもエルは散々走ったり隠れたりしたんだ。かなり疲れていると思う。
「……寝ろ」
「いえ、だから大丈夫で…」
「いいから寝ろって。見張っといてやるから」
「………わかりました。では15分だけ……」
「おやすみ」
「おやすみなさい。ショウマさん」
それからほどなくして寝息が聞こえてきた。どうやら寝てしまったようだ。
寒そうだ。それからバッグからカーテンの破れてないところを取り出し、肩にかける。
「………暇だ…」
寝ろと言ったのは確かに俺だがとてつもなく暇だ。
「少し俺も寝るか………」
結局俺も寝ることにした。正直言って俺も疲れた。サブマシンガンぶっ放してくる女を撃退したんだから……というかあの時の何かこう……スイッチが入る感触はなんだったのだろうか………でも今はいい。この睡魔に身を委ねるとしよう………
「………ん…」
目が覚めた。結構長く寝てしまったようで日が少し傾いていた。それよりなんだろう…この肩の感触……重い。
「……ショウマさん………?」
そこには私の肩に寄りかかっているショウマさんの顔が真横にあった。
「あ………その……」
結局そのまま寝かせてしまった。なんだか起こすのが可哀想になってしまったからだと思う。
「………んあ?」
「……起きましたか?」
「あー……起きた」
あれから20分ほどしてからショウマさんは起きた。スヤスヤと眠っている顔が可愛かったなんて死んでも言えない。
「………?顔が赤いぞ?」
「なんでもありません。早く行きますよ。どこかの誰かさんが寝ちゃってもう夕方なので」
「………すみませんでした」
「……いいですよ」
お母さんみたいなエルに続き、また線路を歩き始めた。あともう少しで日が暮れる。
「………もうすぐだな」
「そうですね。でもまだ2階層です。目標の20階層まではまだまだ程遠いですよ」
「………そうだったな…はぁ……」
「まあゆっくり、死なないように行きましょう」
「その通りだ。じゃあ出発するか」
「そうですね」
それから遂に高い高い塔の真下に来た。結構高いな……いくら天井があると言っても……
「やっぱり高い。さて、入り口はどこかな……」
「あそこですよ。行きましょう」
エルの指差す先には鉄の扉を見つけた。随分と重そうだ。
「………開きませんね…」
「案の定……というかなんで放棄された層なのになんで鍵がかかってるんだ!」
「仕方ありませんよ………鍵を探しましょう」
「………そうするか…」
「では、私は向こうを探してみますね」
「よろしく頼んだ。ハンドガンは?」
「持ってます」
「ナイフは?」
「ショウマさんが持ってます」
「………」
そうだった。ブレンダと戦った時渡してもらってたんだった………
「渡しておく」
「………思うんですけど……ショウマさんは過保護だと思うんです」
「………そうか?」
「そうです。無自覚ですか………とにかくナイフはショウマさんが持っていてください」
「弾が切れたらどうするんだ」
「それはお互い様です。ただ今回は私が持っていなかったというだけの話です」
「………わかった。じゃあ一緒に探そう」
「いえ…別に一人でも…」
全く強情な………!
「いいか?俺はお前がいなければ上に上がれないんだ!わかるか!?」
「………ええ……」
眉をハの字にして困った表情を浮かべるエルの頭に両手を乗せる。
「ちょっ!何ですか?」
キョトンとした顔で上目遣いをしてくるエルの綺麗な金髪をわしゃわしゃと撫で回した。
「ひゃあ………やめてください…!わかりました!わかりましたから!じゃあ一緒に探しましょうか…………」
それからそっと手を離す。それからポンポンと頭を撫でる。
「そうしよう」
「………過保護ですね…ショウマさんは……」
その顔が赤く染まっていたのを俺が見ることはなかった。




