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第一層 episode.7

さてどうしたものか。こちらが2人とはいえ相手は短機関銃を所持している。そのマガジンに入っている全ての弾を撃ち尽くす頃には俺たちは蜂の巣になってしまうだろう。


「はっ!ようやくお気づきになったかいお兄さん?そう!アンタはライフル私は短機関銃だ!この意味わかるよなぁ?」


「………」


ムカつく。こうなったら意地でも接近してやる。確かにこちらはライフルだがまだエルがナイフと拳銃を持っていることをあいつは知らない。いきなり自殺行為に走ったらあっちもビビるだろう。


「………エル、ナイフを貸してくれ」


「分かりました……でも、無茶だけはしないでください」


そう言って俺の手にナイフを乗せた。冷たい感触が手のひらに広がる。


「………」


なにか思い出したような気がする……だがなにを思い出したかはわからない。でもこう握ればいいんだとは分かった。

俺は逆手にナイフを構え、体勢を低くする。


「まさか?そのナイフで私を殺すって?冗談だろお兄さん!自殺行為そのものじゃねえかよ!」


バレてしまったがもういい。もう……終わらせる。ゲラゲラと笑う赤髪の女に俺は低い声で忠告する。


「……今逃げれば手は出さない…」


「逃げるわけないじゃない!バカじゃないねえのか!」


「そうか………」


そう言って俺は頭の中のスイッチを入れ替えた。戦闘モード。

右脚を軽く前に出す。その瞬間左に跳躍。短機関銃の銃声が目の前でし、さっきまでいた所に着弾。土埃を舞い上げる。それから着地と同時にダッシュ。右。左と跳躍しつつ近づく。さっきの射撃でマガジンを使い切ったのか今度は撃ってこなかった。


「死ね」


俺は赤髪の女の喉笛を搔き切る為に肉薄した。いける。あとは横薙ぎにするだけ……


「くっ!?………とでも思ったかバーカ!」


そう言って赤髪の女はジーパンのポケットからハンドガンを取り出した。発砲。

それは俺の眉間に確実に命中しているはずだった。


「残念だったな。クソ女」


「っ!?」


俺はナイフを空中に放り投げるように相手の顔のすぐ横に捨て、拳銃を殴りつけた。


「なっ!?」


「エル!」


「はいっ!」


ダガンッ!


拳銃の銃声が聞こえた瞬間赤髪の女の肩から血が吹き出していた。


「っ!?痛っ……てめえええ!」


苦し紛れの拳が飛んできた。それを造作もなく避けると腕を掴み、投げた。


「うおっ!?」


そのまま女の体は地面に叩きつけられた。


「俺たちの勝ちだ。選べ。もう邪魔をせずにここから立ち去るか、まだ俺たちとやるか」


「………分かったよ、降参!こ〜さんで〜す!」


「………エル俺の荷物を全部持ってきてもらっていいか?」


「分かりました」


それからエルは先程まで俺が寝ていたホテルへと向かっていった。


「………一つ聞いていいか?」


「なんだよクソ男……」


「どうしていきなり襲ったりしたんだ?」


純粋に気になっていた点だった。協力し合えばもっと効率的に物事は進むと思うのだが……


「この下層の世界ではな……味方なんていないんだよ…どこにもな。だから殺して奪う。自分が生き残る為に」


どこか独り言のように話す赤髪の女。その目はどこか遠くを見ている。昔何かあったのかもしれないが……それは俺にはわからない。


「撃ってしまって悪かったな。あとで治療してやる」


「………どうして…助けるんだよ」


「どうしてだろうな……」


「分かんねえのかよ………クソ男。名前は?」


「………ショウマだ」


「ショウマね………私はブレンダだ…」


「覚えておこう。で、お前はこれからどうすんだ?」


「知るかよ…まあこの怪我だししばらくどっかで寝るかな……」


「もう一つ聞きたいことがある」


「あん?なんだよ」


「どうしてこの1層にいるんだ?」


「………2層に行けばわかるぜ…あそこは地獄だ」


「なにがあった?」


「………ゾンビ」


「俄かには信じられない話だな……」


「だろうな、でお前ら上の層に行くんだろ?」


「そうだが……」


「………そうかよ、まあせいぜい頑張れよクソ男」


それからエルが帰ってきた。黒い鞄を背中に背負っている。


「持ってきたか…悪いんだがこいつの治療を頼む」


「わかりました」


それからブレンダの怪我を治療し、別れを告げた。


「じゃあな、何気に初めてエル以外の人間とあった気がするよ」


「そうかよ………気をつけろよ…あとちょっといいか?」


「なんだ?」


ブレンダはエルの近くまで来ると………


「………!?」


エルに抱きついた。それから………


「ひゃっ!?あ……あの…んっ……むっ胸は触らないで……くだ……さ……あっ!」


ブレンダはそのあまり豊かとは言えないエル胸部を思いっきり鷲掴みし、揉みしだいた。


「ん〜見た目に反して結構あるねぇ〜……だけど感度は良好だぜお嬢ちゃん!まあその男に揉んで貰えば大きくなるだろうし頑張れよ〜」


「「揉むわけない!」」


それからカカカッ!と高らかに笑いどこかへ行ってしまった。


「「………」」


それから2人で黙り込んだ。まさかあんな事を急にするからびっくりしただけなのだが………


「……行きますか…昨日の駅からあの大きな柱の方に線路を歩いていけば着くはずです」


「………そうだな、うん。そうしよう」


なんかいつもは代わり映えのしない顔だったがさっきのブレンダのおかげで表情筋が少し柔らかくなったようだ。


「………何ですか?顔に何かついていますか?」


「………頰に血がついてる怪我したのか?」


「そうですね…先程頰に銃弾がかすりまして………でも痛く無いのでご安心を」


「………そうか…痛いときは言ってくれ。さて………じゃあ行くか」


「はい」


それから駅のところまで戻り、改札機を通り、今は止まっているエスカレーターを上がる。


「おー………」


エスカレーターから登り切るとそこには植物に覆われた線路と電車があった。天井は一面ガラス張りで光が差し込んできている。その光の先に電車はあった。


「すごいですね…緑色のラインが入っていますね………」


「これが動いていたのか………信じられないな」


それから少し駅のホームを探索していると………


「エル、ちょっとこっちに来てみろ!」


「?……わかりました」


俺は見つけたものをエルに見せた。それは日の光に照らされ黒く輝いていた。


「見ろ、ピアノだ」


「………そうですか…でもどうして駅にピアノなんかが………」


「それはわかんないけど……」


「………ピアノ好きなんですか?」


「………まあ」


昔………あんまり記憶は戻ってきてないが好きだった気がする。


「………一曲弾いて差し上げましょうか?」


「ありがとう。じゃあ一曲お願いしようかな」


「では、何の曲がいいですか?」


そう言ってエルはピアノの前に置いてあった木製の椅子に座った。ピアノの蓋を開け、適当な鍵盤を叩くとポーンという音が寂れた駅に染み渡った。


「そうだな………じゃあクラッシックを適当に頼む」


「わかりました。それでは一曲………」



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