第八層 episode.4
まさかの2話投稿です。明日は雪か雹が降るかもしれないのでみなさま傘をお忘れずに。
「何が聞きたい…」
「じゃあまずは理由からね。強くなりたいの理由が知りたいわ」
「…復讐したい奴がいる」
「復讐ね。あなたは…第九層北部防衛戦線、第四大隊所属だったわね。だとすると…例の人型が原因かな?」
「…そうだ」
「人型アグレッサー、識別名『デュラハン』。第九層の北部戦線を一人で破壊したやつね。なんとか機甲師団で退却まで持ち込めたけど被害がかなり出た。あなたがなぜデュラハンに復讐をしたいのか知らないけれど…」
彼は私の言葉を遮って話始める。いつもの淡々とした口調ではなく、怒気が孕んだ話し方だ。
「友達が…殺された。生まれた時から一緒にいた兄弟同然の友達が」
「……ごめんなさい」
「別にいい、俺はその時友達に逃してもらってここにいる。弱かったんだ、もっと力があればあいつも助けられたかもしれないのに。そうして、のうのうと一人だけ生き残ってしまった。だから仇を取る。絶対に」
「そうだったの…。わかったわ。あなたの事は私が絶対に強化人間にしてあげる」
「頼む。それとあいつはヴァルグスって名乗ってた。識別名を改めててくれ」
「はいはい。麻酔ももうだいぶ切れてきたでしょ?痛みはすぐ消えるから研究室に戻って次の型番のやつ呼んできて」
「……型番じゃない。彼らにも名前がある」
「申し訳ないけど、彼らの名前は知りたくない。情が湧いちゃうから。だから書類にも名前じゃあなくて番号で判別するようになってるのよ」
「……それでも一人の人間として名前を呼んでくれ」
「……気が向いたらそうするわ。そういえばあなたの名前は?」
「ショウマ。俺の名前を呼ぶならほか3人の名前も聞いて名前で話してくれ」
「……わかったわよ。頑固な男ね。私の名前はサヤカ。よろしくね」
「ありがとう」
「礼は言えるのね…」
それから残った3人の強化手術をした。ショウマに言われた通りに3人の名前を聞いた。
1008番、ユカリ。年齢4歳。性別女。床まで伸びた白い髪に赤い瞳のマイペース不思議ちゃん。
1014番、マサキ。年齢3歳。性別男。短髪の黒髪に黒目の標準型。狼みたい。
1018番。ツムギ。年齢3歳。性別女。茶髪をポニーテルにしている活力溢れる系女子。
こんなものかな。手帳の記し彼らの特徴を記し、パタリと閉じる。この4人はほぼほぼ強化人間手術が終わる。まさか4人も成功するとは思わなかった。今まで誰一人成功してこなかったのに奇跡とは起こるものだと分からされた。
「さて、今日はもうこれだけだからあとは自由。私は別の仕事してくるから」
「……なんか今日のあいつは気持ち悪かったな。こっちのこと色々聞いてきやがって」
犬のようにキャンキャン喚いている黒髪のマサキ。彼は今日のサヤカがお気に召さなかったようだ。
「全くだねぇ。でも、ボク人とあんなに話したの久しぶりかも〜」
長い髪を手で漉きながら気の抜ける話し方をするユカリ。人と話すのが好きらしく、よく他の面子とおしゃべりをしている。
「思うところがあったんでしょ。人の名前を知っておくことなんて当たり前のことのはず」
声がでかいツムギ。明るい茶髪で身長がえらく小さい少女だ。下から声がするのでいつも彼女と話す時は上から目線になってしまう。
「今日の彼女の行動は俺が引き起こしたことだ。悪い」
「別にいいよ〜。君のおかげだったんだね〜。ありがとさん!」
「しかし、最後まで残れて本当に良かった」
ツムギは人情に厚いのかずっと皆で手術を成功させようと声掛けをしていた。いいやつだが熱苦しい。
「そうだねぇ。友達が一緒にいてくれると心強いね〜」
「まあなんだ。これまでありがとう。これからよろしく」
「強化人間打撃群ですか?」
薄暗い事務室でモニターから漏れる光と音声に向き合う。
「そうだ。完成した強化人間たちを一つの部隊として扱う。指揮官はお前だ。なに、別に指揮などしなくて良い、彼らが謀反を起こさぬように監視だけをしておけばよい」
「……分かりました。その任、引き受けます」
「よろしく頼むよ。サヤカ少尉」
上官からの伝達は強化人間だけで構成された精鋭部隊を作り、各種戦線に遊撃部隊としてこの4人を派遣しろとのことだった。現状、戦線維持が厳しい戦線や最前線で階層型都市を奪還している戦線の援護を行う訳だ。
死傷率が高く、並の兵士だけでは被害が大きくなると考えたのかは分からないが、合理的な判断んだとは思う。
研究室に戻る。彼らは談笑をしていた。
「4人とも、整列しなさい。今から大事なこと言うわ」
彼らは軍で鍛えられているのかピシッと綺麗な整列を見せた。
「じゃ、伝達するわね。君たちは最後の手術を終えたその瞬間から新しく組織される『強化人間打撃群』の隊員となります。強化人間打撃群とは未だ人類が成し得なかった強化人間手術を成功させたヒューマノイドおよび人間だけで構成された精鋭中の精鋭。各地の激戦区に遊撃隊として支援に向かって敵を屠るのがあなたたちの仕事。人類に命を捧げ、人類のかつての尊厳と威光を取り戻すために尽くしなさい」
「「「「了解!!」」」」
描き始めたらなんかすごい楽しくなってここまで書ききっちゃいました。




