第七層 episode.12
はい、取り敢えずこれで前編が終わった感じです。たった前編を終わらせるだけでここまでかかるとは正直思いませんでした。
ショウマさんは変わりました。最下層の時はよく喋ってうるさいぐらいで水飲みたいだけで騒いだりする人だったのに今では笑う事も少なくなってしまいました。
別に今の彼が嫌いというわけでも前の方が良かったともいうつもりもないです。でもなんだか……。少し寂しいような気はします。
でも、私にはひたすら優しくしてくれるのです。昔の記憶が戻って辛いだろうに。
今は悲しそうな目をすることが多くなりました。何かを諦めているのか、諦めきれないような。そんな感じです。ずっと思い詰めて、表情も固くなってしまっています。
その悩みを私にも言ってほしいです。共有して一緒に悩んであげたいと思うことが増えました。
なんだか置いていかれてしまいそうで、やっとできた私の居場所がなくなってしまいそうな気がして少し怖いと思ってしまう自分がいます。
元々居場所なんてないくせになんておこがましい思いなのでしょう。なんてわがままな思いなのでしょう…。
「……ショウマさん」
「何?」
「……次は遂に人が居る場所ですね」
「そうだな」
「私は…これでお仕事終わりでしょうか…ここまで来れば一人でも戻れますよね…?」
「……それは着いてみないと分からない。エルは人が居るところに戻りたくない?」
「私の居場所はもうありません。今までも、これからも」
彼女は最初に会った時の暗い表情に戻る。彼女の眼はまるで深海の様に青く、真っ暗で光がまるでない。
少しずつ心を開いてくれていると思っていたが、まだまだ心の扉は固く閉ざしたままだ。
「そっか。なんというか…。言葉にしにくいけど、今はここがエルの居場所だ。だからエルの新しい居場所が見つかるまでとなりに居てほしい…な」
だめだ。なんだか思ったように言葉が出てこない。言いたいことがうまく言葉にできずに喉で詰まる。
恥ずかしい。顔から火が出てしまいそうだ。
それでも彼女には居場所があるんだと伝えたかった。まだ子供の彼女に「もういい」と突き放すことなどできなかった。たいして年齢に差がないのにどの口で言っているんだか。
自分の無責任さに呆れながら彼女から目を背ける。
「……迷惑かけちゃいますよ?」
彼女は眉をハの字にしながら顔を覗き込もうとしてくる。
赤くなっている顔を見られない様にもっと顔を背ける。
「ナイフで滅多刺しにされたり針を刺されたり色々あったけど迷惑なんて思ったことはないから安心して」
彼女は呆れ「そうですか」と呟いた。
背けた顔を彼女に向けると俯いて長い金髪に顔は隠れて表情は見えなかった。
彼女は黒のショートパンツに白いブラウスを着ている。初めて会った時から着ていたものだが、だいぶボロボロだ。
かくいう自分の服もボロボロではある。灰色のパーカーに至っては右袖がちぎれてなくなっている。
人が居るところに行けたならば服をどうにかしたい。
今まで気づけなかった。上に行くことに夢中で細かいところに全然気づけなかった。たまには目の前の事だけじゃなくて周りを見渡したり、自分の事を見てみたり、視野を広げてみるのもいいかもしれない。
エレベーターは遂に人類が取り返した層まで辿り着いた。
ゆっくりと扉が開く。光がエレベーターの中に差し込む。太陽の光じゃない。人工的な光だ。
扉が完全に開き切る。いつもの光景が広がっている。ただ、いつもと違うのは音だ。何処かから喧騒が聞こえる。
「……行こう。もうすぐで人が居るところだ」
いつもの如く二人で踏み出す。これだけは何度も変わらない。いつものルーティンだ。
この先に何が待っていてもめげずに前に進もう。自分が本当は何者なのか突き止める。それから彼女の正体も知りたい。彼女が知られたくないと言うなら無理にとは言わないが。ゆっくりでいい。彼女が心を開いてくれるまで。
どうして彼女にここまで執着するのか自分でもわからない。彼女のピアノの音や表情、声、ガラスの様に光に照らされ虹色に光り輝く翼、全てが自分を惹き寄せさせている気がする。気のせいじゃない気がする。何か、あったはずなのだ。自分の知らない何かが。
これからは後半です。プロット大幅変更でここまでたどり着いたのでちょっと時間かかるかもです…(就活ガガガガガ)




