第七層 episode.11
誤字矛盾大量です。申し訳ない……。
「そんな事が…。因みにその後どうなったんだ?」
「その後か?その後はその人型を上の層に役立てる事ができる人が居るって言ってたぞ」
「…思い出してきた。確か名前は……サヤカ。俺を強化人間にした張本人だ」
「隊長はそう言ってたな」
だんだんと思い出してきた。曇っていた空が晴れ、日差しが差し込んでくるように記憶の断片が鮮明になっていく。
自分は強化人間。だから最下層まで行けた。もちろん仲間たちが居たおかげもある。
自分が軍にいた時の記憶は殆ど戻ってきた。
しかし、自分の幼少期や自分がどうして最下層のあの一室に居たかが思い出せていない。
「……俺が目覚めた時は最下層に居たんだ。最下層のマンションの一室に。あそこは一体どこだったんだ……」
「流石にそこまでは分からないが、隊長と最後に言葉を交わしたのは確か三層だったはずだ。あの時は大量のアグレッサーに囲まれて俺たちは下層に降りられそうになかったからスミカとタクミに隊長を託して先に行かせたんだ」
「……思い出してきたぞ。そうだ、タクミとスミカと一緒に下層に降りて……。そこから確か二人とまた離れた気がする。そう、一層まで三人で行って別れたんだ」
「行けたのか!?それでどうなったんだ?」
「……思い出せない。でも、さっきの人型アグレッサー……名前はなんだったか。そうそう、ペドロ。あいつ曰く俺は一人でゲートを破壊したらしい」
「本当か!?この事を軍が知ったら皆喜ぶぞ!すぐ上層へ行こう。リク!アサミ!ナナセ!出発の準備だ!八層に帰るぞ!」
そうか、もうここは七層。俺が彼らと出会った層まであと一層。これでようやく人類の活動層に戻れるのだ。そうしたら自分の幼少期の事や家族の事だって思い出せるかもしれない。
「いいのか?もう軍からは解放されたんだし、隠れ家で暮らすのもありだと俺は思うが…」
「隊長の夢はヒューマノイド達をこの戦争から解放する事だろう。だから俺たちは隊長に最後までついて行ったんだ。こんな所で終われる訳ないだろう?やるなら最後までだ」
「……そうか。わかった、行こう」
彼らは慌ただしく準備を始めた。
話の中ではどうやらこめかみを3回叩いたら人間とは思えない動きをしていたらしい。
やってみる。何も起こらない。バッテリー?とやらが切れているのだろうか。
もし、話に出てきた身体能力を向上する力が使えたら。もっと安全に上層へ向かえるかもしれない。
バッテリーの充電方法は彼は知らなそうだった。どうにかして上層へと赴き、充電方法を知らなければならない。
「準備終わったぞ。隊長も……あのねずみ?のような生き物が助けてくれたとはいえまだ万全ではないかもしれない。俺たちが援護しながら隊長とその娘をエレベーターまで連れて行く」
「……ありがとう。そのねずみかどうかは分からないけど、ちっこくて可愛いやつの名前はおもちだ」
「な、なるほど。隊長が付けたのか?」
「いや?エルが命名した」
「……なんですか?いい名前です」
彼女はおもちを手のひらに乗せて皆に見せる。
お餅は彼女の手のひらから見える景色に大興奮だ。くるくると回りながらはしゃいでいる。
勢い余って落ちてしまいそうで心配になる。
「いや、いい名前だなと思って」
「そうでしょう」
俺とエルも急いで支度を終わらせる。
拳銃よし、薬室に弾丸は入っていない。マガジンは数本ポケットに入っている。普通のズボンのポケットに入れると重くて動きづらい。
ナイフも切れ味はまだ悪くなっていない。少し悪くなってきているもののしばらくはどうにでもなりそうだ。
「よし、行こう」
マンションの一室から外に出た。外の廊下からは廃墟が列をなしている光景が広がっていた。
人気というものが全くなく、風の音と自分たちが出す足音だけが廃墟に響く。
遠くには上層へと向かうためのエレベーターが通っている塔が見える。目的地はあそこだ。敵はマンションから見るかぎりは見えない。でも油断はできない。ペドロは急に現れる。それから相手の身体の制御を奪う能力とモノを思うがままに動かす能力がある。
一階まで降りる。ガシャガシャと装備と装備が当たる音を鳴らしながら塔へ向かう。
特に敵影もなく辿り着くことができた。
塔の中は以前に訪れた塔よりも荒れていなかった。
「これなら行けそうだ。行こう」
廃墟のジャングルの中を再び歩き始める。
道路には白骨化した遺体や軍服を着た遺体。戦車の残骸や奇形の白骨遺体などが散乱している。自分もここを通ってきたかもしれないと思うと身震いがした。
「ここは居住地区だったのか?」
「らしいぞ。まああまり詳しく知っているわけではないがな」
カズトでもあまり詳しくは知らないようだ。
エルに聞いてみるとここはこの階層都市最大の居住地で多くの人が暮らしていたらしい。それから上層に近かったこともあり、富裕層が多かったらしく
6人の足音が鳴り響く廃墟から突如別の音が聞こえ始めた。
チリーン、チリーンと静まり返った街の中に響き渡る。それに加えて大量の足音も聞こえてきた。
ありえない、敵か?。先程とは打って変わって騒がしくなる。全員で背中合わせになり周りを警戒する。周辺に特に音以外の変化はない。
視界の端に何か映った。即座にそちらを向くとそこには人間大の着ぐるみがいた。見覚えのある着ぐるみだ。遊園地で見た着ぐるみがこちらを虚な目で見つめていた。
鳥肌が止まらない。心底ゾッとし、一瞬体がこわばる。上手く息ができずに浅い呼吸を繰り返す。だめだ、速く逃げないと。しかし、脚は全く動かない。まるで脚が自分のものでないかのような感覚だ。
最初は一体しか居なかった着ぐるみがどんどん数を増す。瓦礫の中や道路上の穴、マンホール、ビルの窓などから顔だけをこちらに向け、その数をどんどんと増やす。灰色と緑しかなかった廃墟がカラフルで毒々しい色に染まっていく。僅か十数秒で数十体もの着ぐるみが出現した。彼は一斉にビルの窓を蹴破る。ガラスが割れる音が廃墟に響く。着ぐるみは遂に動き出し、こちらにおぼつかない走り方で近づいてきた。
「逃げろ!」
脚より先に声が出た。脳の危険信号がようやく脚に伝わったようで脚がようやく動き出す。皆で一斉に駆け出した。幸い着ぐるみたちはそこまで足は速くない。
各々様々な刃物や鈍器を持ち、追いかけてくる。走れば走るほどその姿は見えなくなっていくが、新しい着ぐるみが自分達の行先にウジャウジャと現れる。フラフラとしながら着ぐるみの群衆の中に加わっていき、大きな塊になっている。
あの着ぐるみには確か中身はなかった。ペドロが操っているだけの操り人形。相手にするだけ損なので逃げる。自分達の障害になりそうな着ぐるみは適宜倒しながら進む。これだけの数を操っているのにも関わらず、肝心の着ぐるみの操縦士であるペドロの姿は見えない。
「急げ!もう少しだ。エレベーターまで行けば逃げ切れる!!」
たどり着いた。塔の入り口を開け、中に入る。塔は今までと同じような形状で円柱状の壁に沿ってエレベーターが20機ほど設置してある。使えそうなのは2、3機ほどしかなさそうだ。エレベーターのボタンを押す。エレベーターが来るまでどうにか持ち堪えなければ皆で乗ることはできない。その上、乗る瞬間が無防備になる……無理だ。もう三桁も居そうな着ぐるみたちを相手にこの人数でどうにかなるわけがない。
「……隊長。申し訳ないが今回は一緒に行けなさそうだ。皆、アイツらを足止めするぞ。なんとか2人だけ先に行かせるんだ。ナナセ、お前だけは単独で行動だ。ペドロを見つけ、撃破しろ。二人は俺と一緒に足止めだ」
「……了解。よし…リク、行くよ」
「了解!なんか戦うのは久しぶりな感じだね。今回もどうにかなるといいなぁ」
「え……?皆さん一緒に逃げないんですか……?」
エルは少しだけ声を震わせた。表情の薄い彼女が珍しく驚きの表情をしている。
「……任せる。ここまでありがとう」
「……昔の隊長らしくなったな。速く行かないと間に合わなくなる。行ってくれ」
「……行こう、エル」
「………はい」
彼らは塔の外に出ていった。その直後に銃声と何かがぶつかり合う音が聞こえる。その音は塔の壁に阻まれくぐもって聞こえる。
エレベーターが到着し、それに乗り込む。エレベーターの扉が閉まり、戦闘音は全く聞こえなくなった。
エレベーターの中を重すぎる沈黙が支配した。仲間を見殺しにして、生き残ってしまった。今まで何度も何度もやってきた事だ。何度仲間の背中を追いかける事なく行かせてしまったか。だんだんと思い出してきた記憶のせいで下層での自分のお気楽さが嫌になる。
下層にいた何も知らない時の方が楽だった。忘れてしまったままの方が楽だったかもしれない。
自分の願いがなんだったか、もうよくわからなくなってしまいそうだ。ヒューマノイドを救う?今さっき見殺しにして?
本当にショウマという人間は卑劣で卑怯で臆病で救いようがない臆病者だ。世間からの救世主としての崇拝と自分のために散っていった者の願いはまだ十数歳の少年には重すぎる。誰か一緒に背負って欲しい、助けて欲しいと逃げ出したい。でも、そんなことをしてしまったら命すら投げ打って自分に願いを託した仲間に顔見せできない。
エレベーターの中で自分の頬を両手で思いっきり叩く。痛みと熱が頬からじんと伝わってくる。
まだ生きている。最後まで足掻いて苦しんで仲間たちに報えるように最善を尽くそう。
次はもうちょっと早く…




