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第七層 episode.10

はい、ようやく50話までやってきました!ここまで何年かかったか…三年?四年くらい?あんまり覚えていませんが……。ここまで書けたのは読んでくださった皆さまのおかげです。どうかエンディングまで書くモチベーションが持つようにこれからも読んでいただけたらと思います!

 トーチカの中から一斉に全員飛び出した。

 こめかみを3回指先で軽く叩く。これでスイッチが切り替わる。通常シフトから戦闘シフトに。

 身体の底から力が湧き出て焦ったくなるような感覚に襲われる。

 視界に敵の場所が壁越しにハイライトされる。その他にも様々な計器らしきものが視界に映る。

 バッテリー残量は60%。少し余裕がないが、今回くらいなら余裕で持ちそうだ。

 しかし、便利なコンピュータだ。今まで体感で使用してたバッテリーの残量が見える事もさることながらハイライト機能もありがたい。これで不意打ちに無駄なバッテリーを使わずに済みそうだ。

 スイッチを入れることにより、普通の人間では想像もできないような動きができる。その分カロリーを摂らないとバッテリーを貯められなくなるため、人よりも多くのカロリーを摂る必要があるとか。

 敵の人型はぱっと見は支援型みたいだ。一気に切り込んで味方の被害を最小限に抑えたい。

 第三班は全員撤退した。つまり、今の所俺はフリーで動くことができる。本来なら隊長の命令は絶対だ。軍は上に逆らう事は許されない。

 でも、今回は、今回だけ見逃してほしい。

 拳銃の安全装置を外してスライドを引き、薬室に弾丸が込められたかどうかを確認する。

 装填よし。


「総員…突撃!」


 バッテリーを一気に消費してトーチカから飛び出て数体のコボルドとゴブリンを斬り払い、人型へ直進する。後ろからカズトが戻ってくるように言っていたが、無視をした。

 視界の右上にある電池のマークに溜まっていた半分ちょい溜まっていたバッテリーがどんどん減っていく。

 全力で走りながら計器と手首のマップを見る。周りは真っ赤だ。敵だらけの中を時速68kmで敵を斬り刻みながら突き進む。バッテリーは残り49%。

 当たりを見回す。人型の周りに護衛らしき部隊が一小隊分。瓦礫に隠れてこちらを魔法により遠距離で狙っている敵が数体。

 残り100m。だいぶ近づいて来た。護衛がこちらを仕留めようと前に出て来た。

 それらを力に任せてナイフで斬り払う。コボルドの片腕が吹き飛び、血液を辺りに撒き散らした。

 赤い警告表示が視界に映る。アラートが出ている方を向くと、先ほど隠れていた遠距離攻撃班が狙って来ていた。そちらを向くと風魔法が飛んできた。

 それをしゃがんで回避しつつ目の前のコボルドの足を払って転けたところに鼻に左手の拳銃で一発弾丸をぶち込む。

 銃で相手を一瞬で無力化するには頭ではなく、鼻を狙わなければならない。脳幹を確実に破壊し、脳の電気信号を身体に伝えさせないためだ。

 頭を撃ってもある程度動けるやつはいる。

 しかし、コイツらはいつもの奴らと違って少し…いや、だいぶ強い。障壁での味方のサポートだけではなく、身体強化の類も出来るらしい。コイツを生け取りにできれば味方の強化に使えるかもしれない。なんてことを思った。

 少し手間取ってしまったが、護衛を蹴散らして遠距離班を狙いに行く。

 遠距離班は全員が撃てなくならないようにタイミングを上手くずらしながら魔法を撃ってきた。

 いい腕だ。この人型直属の護衛なのかもしれない。

 まあ、接近してしまえばこちらのもの。容易く敵を蹴散らす。遠距離型は近づかれたら弱い。

 残ったのは人型。ここまででバッテリーは30%になっていた。突撃してから十五分。もうそろそろバッテリーが切れてしまう。速攻で倒して障壁と敵にかかっている身体強化を切らなければ味方がやられる。

 ようやく辿り着いた。敵は女みたいな格好をしている。見た目も女性らしい。


「よくたどり着いたな人間。まさか護衛を一人で全員やるとは驚いた。こっちの世界の人間は初めて近くで見た」


「そうか。悪いがお前を仕留めないと味方が危ない」


「君…いや、君たちに恨みは無いけど仕方がない。たかが人間一人、今更殺すのに躊躇なんてしない!」


 彼女は帯剣していたレイピアを抜き、こちらに向けた。

 これで援護の魔法が切れただろうか。ならば思い切り戦える。

 彼女の持つレイピアは薄い光を放っていた。

 魔力を込めた刃物は通常の刃と比べ物にならないほど斬れ味が上がるらしい。あのマッドサイエンティストのサヤカが言うには金属はもちろん。世界で一番硬いと言われるブラックダイヤモンドすら運が良ければ斬れるんだとか。

 彼女は素直にこちらに突っ込んできた。身体強化を切っていたら人間じゃ避けれる速さではなかった。

 鋭い突きだ。速すぎて身体強化をしていても目では追いきれない。なんとか感覚で避ける。勘と相手の動きを予想しながら戦うしかない。

 それについてはいつもの事なので機械に頼るよりも気が楽だった。


「お前…何者だ?魔力すら持たない人間がここまで早く動けるわけがない!」


「魔法みたいなもんさ。名前が違うだけ」


 今だ。話で隙ができた。その一瞬を見逃さない。バッテリーの消費量を一気に上げる。身体能力を危険域の10倍まで一瞬上げる。

 踏み込んだ右足に多大な負荷がかかる。土の地面がひび割れ、沈み込む。


「なっ!?」


 急に動きが変わったためこちらの動きについてこられないようだ。防御しようとしているがこの距離じゃ間に合わない。


「悪いが勝たせてもらう」


 ナイフの柄で思い切り顔面を殴り飛ばす。右腕に鈍い痛みが走る。

 彼女は5、6mほど土埃を立てながら吹き飛んで気絶してしまった。

 起きた時、また戦えないようにレイピアを遠くへ投げる。

 そのレイピアは身体強化していても重かった。まるで鉛でできているようだ。こんなのにあのスピードで突かれていたら上半身が弾け飛んでいたかもしれない。戦車の砲弾よりも威力があるかもしれなかった。

 彼女の手足を救急キットに入っていた包帯でキツく縛る。念の為だが彼女ほどの怪力であれば包帯などあっさり引きちぎられてしまうだろう。これは気休め程度の時間稼ぎだ。起きる前に戦闘を終わらせる必要がある。

 また塹壕に向かって走り出す。

 身体強化中の痛みのほとんどは遮断されているため、軽い切り傷や打撲は痛みはない。しかし、今回の右手の痛みは別だ。大抵この痛みがした時は大抵骨が折れている。

 痛みはすぐに消えてしまう。身体強化を切った後に激痛に襲われるのだけが唯一の欠点だ。身体強化は身体に大きな負担を掛け、戦闘が終わった後に身体が動かなくなる。だから短期決戦で終わらせなければ負けるのは必至だ。

 塹壕に到着すると、戦闘はすでに終了していた。敵の弱体化が大きかったか。実際、主力級一体一体はそこまで強くないため強化魔法が切れたら雑魚なのだ。さすがベテラン、戦い慣れているようだ。

 撤退した新兵たちが第二小隊を連れて戻ってきたらしい。残っていた兵士たちの看護にあたっていた。

 死者は奇跡的に出なかったようだ。

 こめかみを3回叩いてバッテリーを切り、通常シフトに移行する。

 切った瞬間身体中に酷い筋肉痛が襲った。右手と右足にジンジンと焼けるような痛みが走る。

 幸い歩けないほどでは無いので隊長の元へと向かう。

 彼は大した怪我はしていないが擦り傷まみれで血まみれだった。どこが無事なのかわかったもんじゃ無い。


「……お前が人型をやったのか」


「そうです。気絶させただけなので急いで身柄の確保をしなければなりません。行ってもよろしいでしょうか」


「……わかった。敵の人型の身柄の確保はお前に任せる。しかし、生け取りにしてしまうとは…」


「やつは身体強化魔法を使っていました。あの魔法をこちらで解析し、使えるように出来る人材を知っているのでそちらに引き渡そうかと」


「そうか。気絶させただけなんだろ?急いで…身柄を確保してこい」


 カズトは疲れていたのか、看護兵に囲まれながら眠ってしまった。

 彼も大奮闘だったのだろう。おかげで誰一人死なせる事なく戦闘を終了できた。お手柄だ。


「……了解です」


 優しく声を掛け、気絶した人型の確保へと向かったのであった。


個人的にカズトくんはお気に入りのキャラで上に立つ者として責任感に押しつぶされそうな中必死に悶えるキャラの設定だったのでここ2〜3話で彼の命を背負う責任の重さや地獄を生き延び、さまざまなものを見てきた彼の魅力を伝えられたらと思っております。

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