第七層 episode.3
マジで全部描き直したいけど描き直しは完結した後にしようかなとか思ってます。まーた矛盾を生み出しかねないので……。すでに矛盾だらけなのは放っておいてください
カバンを投げ捨て、手榴弾を手早く石灰の入った袋の中に捩じ込み放り投げた。すぐにオフィスデスクに隠れる。
外に出た瞬間袋は何かに突き刺され粉が宙に舞った。おそらく先程ペドロが言っていた相手を操る針だろう。その針の攻撃による反動で袋は一瞬宙に浮いた。その瞬間袋は炸裂。袋の中にたくさん詰まっていた石灰は一気に空中に拡散した。その粉はクリアだった視界をどんどん白く濁らせていった。
俺はオフィスデスクから飛び出てペドロの位置を確認する。彼は突然のことに何が起きたか分からないようで大分混乱していた。
今しかない。窓ガラスに向かって全力でダッシュ。ビルの2階から飛び降りた。
ペドロに向かってどんどん加速していく。場所もバッチリ、彼の頭上に到達した。ナイフを構えて彼の頭にナイフをぶち込むために両手でしっかりとナイフを構える。
「いけええええっ!!」
思わず声が出た。ペドロはこちらに気付き、戦闘体制を取ったがもう遅い。すでに目と鼻の先に俺は到達していた。
ナイフをペドロの胸部に思い切り突き立てる。当たったかは見えなかったが手応えはあった。しかし、胸を突き刺した感触ではない。どちらかといえば何かを切り裂いたような感触だった。
外した。でも大きな手傷を負ったはずだ。すぐには動けまい。
俺は地面に着地した瞬間前転して衝撃を殺す。そのまま立ち上がって追撃しようとした。煙でよく見えないが、ペドロは今の傷で動きが鈍くなっているように見えた。
ペドロに近づくと彼の姿が次第にはっきりと見えてきた。明らかに手傷を負っている。俺は走る勢いに任せてペドロを地面に押し倒して馬乗りになった。
ナイフをまた両手で持ち、次こそ心臓に突き刺そうと腕を振り上げる。
「これで終わりだ!」
ナイフを振り下ろす。この状況なら外しようがなかった。
ナイフが肉を割く音がする。しかし、何故だろう。その音は自分の腹部から聞こえてきた。
音が聞こえた瞬間自分の腹からとんでもない痛みが襲ってきた。痛みで思わずペドロから降りてしまった。
腹部を見ると自分のペドロに振り下ろしたはずのナイフは自分の腹に刺さっていた。
「やられた……!」
「はぁ、はぁ。ざまあみろ!人間如きが手間取らせやがって!僕を傷つけるなんて……許さない!お前は絶対殺してやる!!」
ダメだった。俺は自分の腕を見る。服に赤いシミがいくつもできていた。ペドロは刺されるギリギリで俺の腕の主導権を奪っていたのだ。
深い傷を負わせ、もう動けないと鷹をくくってしまった。
ジクジクと心拍に合わせて襲ってくる痛みでまともな思考ができない。
「今から君の四肢を自分で切り落とさせてやる。一番最後に頭を切り落として殺してやる!」
自分を意思に反して俺の右手は動き始める。
もはやここまで。結局上層までは行けなかった。よく考えたら仲間たちがいたから俺は上層から下層まで行けたのだ。仲間なしで下層から上層など無理に決まっている。
最後…最後に一度だけエルと話したかったな。
そんなことを考えながら目を瞑った。
「隊長、ありがとうございます。俺たちの願いを叶えてくれて」
声が聞こえる。聞いたことがあるようでないようなとても懐かしい声だった。ゆっくりと目を開ける。
俺は真っ白でどこが下か上なのかも分からない空間にいた。足元もどこが地面なのか分からないほど不可解な空間だった。
目の前には今まで一緒に戦ってくれた仲間達が俺を見つめていた。
彼らの詳しい顔や背丈を覚えてないため顔にはモヤがかかっており、よく見えない。
いつもより少ない気がする。でも、もうそんなことは気にならないほど俺の意識は朦朧としていた。
「だからもう、戦わなくていいんです。約束はちゃんと果たしてくれました」
そっか。もう終わったのだ。全部、全部。彼らが心から望んだ戦争の終結。ヒューマノイドを戦争から解放すること。俺が終わらせたのだ。だからもう戦う必要なんてない。
「だからほら、こっちに来てください」
モヤのかかった仲間のうちの1人がこちらに手を差し出す。
ようやくそちら側に行ける。みんなが逝ったそちら側に。もう1人だけ取り残されなくていい、置いていかれなくていい。さあ、みんなの所へ。
俺は一歩足を踏み出して彼の手を掴もうと手を伸ばした。あと少し。
「彼女を置いていくのか!?ショウマ!お前を上まで連れていくという約束はどうなる!?」
………誰かの声が聞こえる。誰だろう、とても懐かしい。低くて頼り甲斐のありそうな声だった。
そうだ……俺にはまだ、やることがあったんだった。思い出せ、自分がやりたかったこと、やらなければならなかったこと。伸ばしていた手をゆっくりと引っ込めていく。
俺は……俺にとって大切な人を守りたい。絶対にもう失いたくない。もう、この手から大切なもの、失いたくないものが溢れていくその光景を見たくない。だから、まだ、ここで止まるわけには…いかない。
「ごめん、まだそっちには行けない。やることが残ってるんだ」
「………」
俺に手を差し伸べてた仲間は朝日に照らされた夜の闇のようにぶわりと消えていった。
これでいい、生きよう。自分のこの命の灯火が消えるその瞬間まで。足掻いて足掻いて泥臭く生きていこう。
彼らを覚えてられるのは自分だけなのだ。だったら死ぬまで彼らを覚えておこう。それが彼らへのせめてもの弔いだ。
意識がまるで水中から水面に浮かび上がっていくようにぐんぐんと現実へと戻っていく。
まだ腹部に痛みはある。だけど先程よりかは先程の夢によるアドレナリンのせいからか痛みは少なかった。
まだ右手の主導権は取られている。だが、そんなもの知るか。俺の右腕なんだ、取られてどうする。主人なら取り返せ。
「あぁ……ああぁああっ!!」
両手に全部の力を込めてナイフを腹から抜き去った。ナイフは遠くへと飛んでいってしまった。
左手に痛みはない。どうやら俺がもう動けないと侮って片方の手は針を外していたようだ。
「っ!?まだ動けたのか!どいつもこいつも邪魔ばっかしやがって!」
「残念だったな……。そう簡単には死ねないさ。お前がバカにしてる人間ってのは結構タフなんだよ」
俺は針が刺さった右手を左手で無理やり押さえつける。そのまま俺はペドロに背を向けて走り始めた。
ペドロは虚をつかれたような顔をしたが、そのすぐ後笑い始めた。
「ははは!見ろよ!お仲間さんは逃げていくみたいだぞ!!これでお前もおしまいだ!!」
一体誰に向かってモノを言っているのか不思議に思って後ろを見ると大きな盾を持った大柄な男がペドロと戦っていた。もしかして、先程の声の持ち主だろうか?よく分からないが取り敢えず味方みたいだ。
俺は近くの電柱まで走る。そしてその電柱に糸を絡み付けるべく電柱の周りを何周も回る。
「なに!?クソ!!」
ペドロは針を俺の腕から外し、糸を自分の方へと手繰り寄せようとしたみたいだが、電柱に絡みついた糸はそう簡単には外れない。
俺はしまっていた拳銃を取り出し、発砲した。弾薬はもちろんタクミから貰った高貫通弾だ。
盾を持っている男と戦闘しながら器用にこちらの攻撃を障壁で防ごうとしたが、その障壁は無惨にも弾け散った。
しかし、その弾丸は当たることなくペドロの顔のすぐ横を過ぎ去っていってしまった。
こんな大事な時に当てられなかった。せっかく掴んだチャンスを無駄にしてしまった。
あまりの喪失感に膝から崩れ落ちた。
「はははは!!バカめ!最大のチャンスを逃した愚か者め!障壁を壊したのは褒めてやる!しばらく障壁は使えないがまあいい。お前はこの盾男をやった後に殺して…」
ペドロの会話は途中で一発の銃声によって遮られた。しかもその銃声は自分のでも盾を持ってる男のものでもなかった。その銃声は別のビルの屋上の方から聞こえた。
一体誰が撃ったんだと失血と喪失感でもはや顔もまともに動かせない状態で目だけで銃声のした方を見る。
そこには拳銃を両手で構えたエルがこちらを見下ろしていた。拳銃の銃口からは硝煙が立ち上っている。
そう、先程の銃声の主はエルだったのだ。
「あああ!?クソ……ウリエルモドキも居たのか……。ここは逃げないと不味そうだ。ショウマくん。それからそこの盾男。この続きはまた今度だ。次は絶対に三人まとめて全員殺してやる」
捨て台詞を吐くとペドロの姿は蜃気楼のように消えていった。
俺はもう意識を維持するのもギリギリな状況だった。もしあの盾の男がいなかったら今頃四肢を自ら切断して死んでいただろう。誰かは知らないが助かった。お礼を……言わなければ。
立ちあがろうと膝を立てたが全く力が入らずそのまま前のめりに倒れ込んだ。もう立ち上がれない、エルと盾の男が何か言って近づいてきているがなにも聞こえない。
結局奮闘虚しく、自力では勝てずじまいで俺は意識を失ってしまった。
15層までなのでそこもお忘れなく。人類の軍が侵攻してきてるのは10層あたりでよろしくお願いします。
描き直しがあったらもっと増えるかもしれないです。




