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第六層 episode.9

マジで長いので20層くらいにします。30も書いていられるか!!

「えぇ!もう行っちゃうんですか!?早すぎますよ!一緒に行こうと思ってたのに!!」


 タクミがプンスコ怒りながら俺に詰め寄ってきた。

 明日上層へと出発することを2人がちょうど病室に見舞いに来た時に話した。そしたらこれである。

 エルから話を聞いた後、何日か滞在させてもらった上に、数日分の食料と水、落とした鞄の代わりの鞄に薬、弾薬まで準備してもらってしまった。

 ただでさえ物資不足だろうに本当に悪いことをした。その上もっと居ていいなんて言われて「ありがとうございます」なんて返せるほどの胆力はない。何より、上に行かなければ記憶も戻らない。


「今回はタクミと同意見です。傷だっておもちさん……?が治したばかりなのに……」


「休ませてもらったから大丈夫だ。それよりも未だおもちが起きないことだけが心配だ。治癒の力の使いすぎだろうが、今回はちと長すぎる」


 いつもは半日もあれば起きるのに今回は2日ほど寝たきりだ。まさか死んでしまったのかと恐ろしい考えが頭をよぎったが、身体を触るとほのかに暖かかったので大丈夫だとは思う。


「そうですか……。エルちゃん。この人はすぐに無理や無茶をするからちゃんと見張っててね?」


「本当にそこはちゃんと見ててほしいね。死ぬのがわかってるくせに何とかしようとするからなこの人は」


 2人は呆れた表情で俺を見るが、別に過去の記憶全てを思い出したわけではないので謂れのない愚痴を言われても困る。

 しかし……過去の自分はそんなに無茶する人間だったのか。これからは少し注意しなければならないみたいだ。


「そうですね。ショウマさんはよく無茶するのでちゃんと管理します」


「待て、俺は無茶なんてしてない」


「やっぱり、エルちゃんもわかってるのね……」


 無茶などした覚えが……無いわけでもないが、エルにもそう思われていたとは心外だ。しかし、客観的に見たら、右腕と飛ばされたり、全身滅多刺しになったりするのは明らかに無茶のうちに入る。気をつけよう。


「名残惜しいですが、お別れです。本当は人のいるところまで連れて行ってあげたいんですが、こちらも手一杯で……」


「俺だけたいちょーについて行っちゃダメ?」


 突拍子もない提案をするタクミにスミカは鉄拳を落とした。タクミはそれが相当痛かったのか、頭を抑えながらしゃがみ込んでそのまま動かなくなってしまった。


「ダメに決まっているでしょう。迷惑をかけるだけよ。何より、ここの病院に立て籠ってる人たちとあんたの担当してる東部戦線はどうすんのよ。あんたしか守り切れないでしょ?」


「イテテ……わかったよ。んじゃショウマ隊長!いつか俺たちも上に行く予定なんで上で待っててくださいよ!」


「あぁ、待ってる。怪我とかするなよ」


「あなただけには言われたくないセリフナンバーワンですね。あとこれ……あげます。9ミリの高貫通弾です。レアなんでワンマガしかないですけど、いざという時に使ってください。コイツなら準主力級の敵でも余裕で貫通出来ます。その代わり、ブレるんで至近距離で使って下さいね」


「あ、懐かしいね。そんなこともあったね」


 一体スミカが何のことを話しているか全くわからなかった。まるで何かを懐かしむ様な表情だったが、真意は不明だ。

 頭にハテナを浮かべつつ拳銃のマガジンを受け取った。普通のマガジンとは違う、ずっしりと重さのマガジンだった。


「いいのか?そんな貴重な弾を……」


「……いいんですよ、気にしないでください。それより道中で死なないでくださいね?記憶全部戻った隊長と話したいです。それに……」


 タクミは言葉を詰まらせた。何か言おうとしているのだろうが、変な顔したまま固まっている。

 そのことに気づいたのか、彼はくるりと後ろを向いてしまった。


「嬉しかったんですよ!生きてて!………もう隊長は死んじゃったんだろうと思ったから」


「……どういうことだ?」


「あぁ、隊長は忘れてるのか。ちょっと話すと長くなるんですけど、いいですか?」


「構わない。続けてくれ」


 彼は記憶がある時の俺との最後の別れの場面について語り始めた。




「隊長!ここは任せてください!行ってください!!あなたにしかできないんですよ!!」


 ここは最下層、第一階層の敵の本拠地、「ゲート」の直前にある長い一直線の廊下だ。敵はたくさんのビルに囲まれた大きな交差点にゲートを作っていた。そこから大量のアグレッサーたちが溢れ出ていることを確認した。

 手首についてるレーダーは敵の存在を表す赤いグリップでいっぱいだった。対して、味方を表すグリップは敵の赤いグリップに埋もれ、見えなかった。

 大量の準主力級の小型ドラゴンやオーガ、ゴーレムが追いかけてくる。そして前方にコボルトやゴブリンなどの主力級が俺たちを斃そうと向かってきていた。

 対して仲間は俺と隊長、スミカだけになっていた。他の仲間たちは皆自分を犠牲に先に行かせてくれた。今頃屍になっているだろう。その死を無駄にしないためにも俺たちは今ここにいる。


「だが、ここで俺が先に行ってしまってはお前らだけでは逃げきれない!」


 後ろと進行方向。どちらも囲まれてしまったため、現在、大通りを逸れ、細い路地で敵を迎撃していた。このままこの通路を道なりに進めばゲートまで辿り着くことはマップから見てわかる。しかし、迎撃せずにこのまま進めばじわりじわりと後ろから削られ、ゲートに辿り着く前に全滅するだろう。かと言って、このままここにいれば弾薬不足で全滅は必至だ。


「自分の仕事忘れたんですか!?ここの最奥にある奴らのゲートを破壊することでしょう!?」


「私たちなら大丈夫ですから!!抑えるだけなら私たちだけでも何とかできます!!」


 俺たち2人は何とかして隊長を先へ行かせようと必死に説得していた。

 しかし、隊長は拳銃を構えたまま固まってしまった。このままでは彼は俺たちを助けようとしてしまう。

 そんな隊長を何とかするべく俺は戦闘のアドレナリンで乾き切った口を開いた。


「俺たち2人はもう死んでるんですよ!!絶対に助かりっこないです!死人は見捨てろって言いましたよね!?もう死んでます!隊長は先に行ってください!!アンタがゲートを壊さないで誰が破壊するんですか!?アンタしかいないんですよ!!それにここに来るまで何人の仲間を犠牲にしてきたと思ってるんですか!?あいつらの意志は!想いは!誰が最後まで連れて行くんですか!?」


 けたたましい銃声の中で伝わる様に大声で叫んだ。いつもは隊長と呼ぶ俺だが、戦闘続きの状態でどうもおかしくなってしまったみたいだ。アンタなんて呼び方無礼にも程がある。それでも伝えたかった。

 ショウマ隊長。アンタが人類を救う英雄だ。アンタ以外にはいない。アンタに比肩できるやつなんて俺は知らない。俺たちはアンタを、何とかゲートまでの道を切り開く槍の穂先なのだからと。だから、その切り開いた道のその先に俺たちの想いを乗せて行ってほしいと。

 だが、彼は俺たちを見捨てようとは1ミリもしなかった。いつもそうだ。隊長は俺たちを最後の最後まで助けようとしてくれる。大抵は助からない。いや、助かった奴なんて1人もいやしなかった。「死にそうなやつは見捨てろ」アンタはいつもそう言うが、一番その言葉を守れてないのはアンタ自身だと仲間はみんな知ってる。知ってた。

 そうやって助けたかった味方さえ使い潰して見捨てて、踏み台にしてでもやってきた目的地。俺たちが来たかった訳じゃない。行けと言われたから来ただけだ。

 それでも、ゲートを破壊してこの戦争を終わらせることに価値がない訳じゃない。そうすることにより、生まれた時から使い捨ての兵士として生まれるヒューマノイドがなくなる。今まで、人間共は自分たちは戦いたくないからと俺たちヒューマノイドに押し付けてきた。隊長だけは違ったが、もうじきそれも終わる。

 だから、ショウマ隊長には終わらせて貰わなくちゃいけない。戦わされてる全てのヒューマノイドのためにも。


「………わかったよ。2人とも絶対死ぬなよ」


「もちろん!死ぬ時は寿命で死んでやりますよ!!だから隊長も死ぬ時は一緒ですよ!!」


 スミカは笑顔で元気よく答えた。隊長に心配させないために。この絶望的な状況で彼女は精一杯のエールを彼に送った。


「ハイハイ、わかりましたよ。隊長も絶対戻ってきてください。また拳銃の使い方でも教えてください。それと、この弾薬使ってください。最後の高貫通弾です」


 俺は自分の持っていた拳銃の高貫通弾が装填された拳銃のマガジンを隊長に投げた。


「あぁ、わかった。絶対にゲートを破壊して見せる。それまでは絶対に死なないでくれ」


 隊長はマガジンを受け取って最後に拳銃に入っていたマガジンを敵に撃ち切って先ほど渡したマガジンを装填した。そして、こちらに目配りをすると路地裏のその奥へと走って行ってしまった。


「行っちゃったね」


 スミカは壁に寄りかかりながら弾込めをしていた。その表情はもう生きては帰れない絶望や失望ではなく、全てを出し切った晴れやかな満面の笑みだった。


「あぁ、あの人には戦争を終わらせる力がある。きっと大丈夫だ。問題ないさ」


 そんな彼女を見て、俺も安心した。彼女も死ぬことを恐れてない。彼女となら俺も最後の最後まで戦える。そんな気がした。


「そうだね……」


 こうして俺たちは最後の最後。弾薬が無くなるまで足止めを続けた。それから最後の抵抗のハンドグレネードを投げて2人とも全ての遠距離攻撃手段が無くなった。

 腰にかけてたナイフを取り出し、2人で突撃の準備をする。

 最後の最後まで諦めない。どうせ死ぬなら一体でも多く道連れにしてやる。少しでも時間を稼いでやる。

 そうして最後の突撃をしようとした瞬間だった。

 鼓膜を破りそうなぐらいの轟音が廃墟になった都市に響き渡ったのだ。

 攻撃してきたアグレッサー共は攻撃の手を止め、ゲートの方へと向かって行った。

 これ以上の好機はないと、俺とスミカは路地裏から敵の少ないところまで脱出したのだった。

 それからエレベーターまで隠密しつつ、辿り着いた。

 来た道をなぞって上層へと帰ろうとしたが、途中でこの病院に民間人が立てこもってることを知り、援護をすることに決めた。

 病院には病人が居たらしく、時々救援物資や兵器などが空から降ってくるらしい。

 どうやら上層の軍もこちらの存在には気づいているらしい。

 救助を要請はしているが、その返事は「いつになるかわからない」の一点張りだそうだ。

 そして2人で話し合った結果、その救助が来るまでの間だけ病院に立て篭もる人たちの援護をすることになった。

 そんな中、下層からエレベーターでこの層まで上がってくる2人組、死んだと思っていた隊長とその連れのエルと出会った。

 


「てな感じですね。ここまで至る経緯と言いますか……なんというか」


 タクミの話を聞けば聞くほどどんどん記憶が蘇ってくる。まるで湧き水が湧き出る様にどんどん記憶が戻ってくる。


「………あぁ、覚えてるよ。それから確か……背負ってたC4でゲートを吹っ飛ばしたんだ。そう、ゲートの前にいた人型。あいつはタクミの高貫通弾でギリギリ倒せたんだった。ありがとう。あの時あの弾丸を渡してもらってなかったら倒せなかったかもしれない。本当にありがとう」


「記憶が……戻ったんですか!?」


 ズイッとこちらに顔を近づける2人に驚いて目を逸らす。

 まじまじと見つめられては話せるものも話せまい。


「その時だけだが。そのあとは全く覚えてない」


 2人は顔を見合わせながら信じられないと言わんばかりの表情をしていたが、みるみるその表情は歓喜のものへと変わっていった。


「「よがっだぁああああ」」


 2人が破顔しながらベッドに座っている俺に飛びついてきた。涙でぐちゃぐちゃの顔を俺の膝下にかかっている布団に擦り付けながら俺に抱きつく。

 膝に彼らの声の振動と体温がじんわりと伝わってきた。

 

「や、約束したからな。絶対戻ってくるって。それに寿命で死ぬつもりだ。安心してくれ。それと、生きててくれてありがとう。2人だけでも生きててくれて本当によかった」


 泣きじゃくる2人の頭を不器用に撫でる。2人はそのまま泣きまくった後、その他の俺の記憶について話したあと、病室を去っていった。まるで嵐の様だったが。彼らが居なくなったら居なくなったで病室が静かになってしまったので少し寂しい。


「すごいですね。ショウマさんは」


「そんな事ない。仲間を殆ど犠牲にして得た勝利だから。でも、死んでいった仲間にこれだけは言ってやりたい」


 俺は天井に向かって手を伸ばし、グッと拳を作る。

 深く息を吸って目を閉じる。まだ顔も朧げにしか出せないし、名前すらよく覚えてない仲間だけど。


「最後まで連れってってやったぞってね」


一応エンディングまでの構想はあるんです。書こうとしないだけで……

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