第六層 episode.5
遅くなりました!車校が結構きつくてですねぇ……
一方俺が迷子になっている間………
「第二小隊より各隊へ、南東より敵の増援を確認。準主力級を数体確認。至急増援を求む」
「本隊より第二小隊へ、敵の準主力級の詳細を求む。」
「翼竜が3。ゴーレムが1。人型が1」
「了解。これより第四機甲小隊が援護に向かう。それまで持ち堪えろ」
「了解。さてと……この量どうするよ。カスミさん?増援来るまで結構時間かかりそうだけど」
「言われた通りに耐えるしかないでしょ」
「ヘイヘーイ……」
正直この数ならやれなくもない。とタクミは思う。
たしかに翼竜(ドラゴンとも言われるが)は強固な鱗で覆われているが目だけは拳銃でも貫通できるほど弱い。そしてその弾丸は脳まで届き、死に至らしめる。
目を狙うのは至難の技だ。しかし、タクミとカスミは今までの激戦の中で目に命中させるのは慣れている。
ゴーレムも然り。ゴーレムは2メートルから3メートルほどの大きさの人型が大半を占めており(稀に動物型もある)、胸の奥にあるコアを破壊すれば一瞬で形を失い、撃破できる。
対戦車兵器等を使えば胸の岩は破壊もしくは貫徹出来るため、歩兵でも撃破可能。
しかし、人型だけが厄介だ。人型は人類と同等レベルの知識を有し、なおかつ魔法や強固なバリアを展開する。そのバリアは過去に88mmの貫徹弾を凌いだことがあるらしい。
その者の力量によるが最低でもライフル弾程度は軽く凌げる。
「人型はどんなの?」
「黒い翼を持ったやつですね。多分悪魔とかじゃないですか?」
「悪魔みたいなやつね……。そういえばショウマ隊長から昔悪魔と戦った話を聞いたような気がするけど」
「おしゃべりはいいけどそろそろ来るよ?弾薬はまだある?」
「3マガちょい」
「半分しか無いじゃん!」
「だーいじょうぶだって!なんとかなる!」
「全く……じゃあ始めましょうか」
「おう!」
地面に伏せ、バイポットを立てる。
敵は主力級のコボルトが20数体。あとはさっきの準主力級が合流した。
それに比べてこっち、第二小隊の戦力は非戦闘員と除いて残り21人。
コボルトは遠距離武器は弓やクロスボウなどの古典的な武器しか使わないが、他が厄介だ。
準主力級を相手している間にコボルトのやられて全滅する部隊やなすすべなく翼竜に焼き払われる部隊を何度も見てきた。
作戦はまず3つある分隊のうち2部隊が準主力級を相手する。
残りの1部隊がコボルトの相手だ。
コボルトは脅威度は低いため比較的人数を割かなくても無力化できる。
「射撃まで3、2、1…ファイア」
一斉に銃撃が始まった。コボルトには圧倒的な射程の差を見せつけ完勝。
さっさと準主力級に取り掛かる。
翼竜相手にはどうしても犠牲が出る。誰かが囮にならないと目は狙えないからである。
しかし、その必要も無さそうだ。
「こちら第四機甲小隊。今より砲撃を開始する。伏せて耳塞いどけよ、鼓膜と頭を吹っ飛ばされたくなければな!」
大人しく耳当てを当てて音を遮断する。
主力戦車の主砲。120mmが翼竜の身体を撃ち抜いた。
翼竜の身体に大穴が開き、翼竜は空中から墜落してきた。
翼竜はあまり機動力はない。なので対空用ではない対戦車兵器などでも簡単に撃墜することができる。
「こりゃ勝ったな」
「慢心は命取りですよー」
カスミにちくりとお小言を言われる。実際その通りなので何も言い返せない。
戦場で油断をすればなにがあるか分からない。
「分かってるって。問題は人型だ」
「そうだね……。あいつ強そうだよ」
「だなぁ……。めんどくさい」
人型はモンスター型と違って頭が多い。言語を扱い、感情を持つ。
それゆえに戦術を持つためにモンスター型と戦うよりか遥かに犠牲が出る。
何より、高度な魔法をよく使用してくる。 例えを出すと、なにもない空間に透明の障壁を作り出して銃弾を防いだり、戦車の走行すら貫通する魔弾を放ってきたりする。
それに加えて、人型はおおよそ人間ではありえないほどの身体能力を持っている。
「さあ、ここの基地をさっさと明け渡しなさい。今逃げるのであれば命までは取りません」
アグレッサーの屍を踏み越えて漆黒の翼を持つ悪魔のような人間が余裕のある足取りでタクミたちの方へと歩いてきた。
どうやらあいつが今回の襲撃の親玉みたいだ。
「バカ言え、どうせ全員殺そうとしてるくせに」
「おや?バレてしまいましたか。まあいいでしょう、では皆殺しにさせていただきます」
やつは何処からか細剣を取り出し、空を薙ぎ払った。
それ自体にはなんの意味もない行動だが、それはただの人間基準で考えた場合で人外は例外だ。
「伏せろ!」
タクミとカスミ、数人の熟練兵士は間に合ったものの他の一般市民から募った兵士や戦車隊はまとめて吹き飛んだ。
兵士は腰から上が無くなり、血柱が立っている。そして戦車は真っ二つだ。ついでにその搭乗者も肩から上が真っ二つになっていた。
「これはやられたなぁ……」
「そうだね……どうしようかなぁこれ」
戦車隊は壊滅。タクミとカスミを合わせて残った味方は五人。
流石にこれでは太刀打ちできない。幾ら敵が1人だからと言ってタクミ達人間と人外ではその戦力に大きな差がある。
「ここは引くしかなさそうだな」
「そうだね。それしかなさそうだけど………」
「逃すとでも思ってるのか?」
「「知ってた」」
相手はこっちを逃すつもりはさらさらないらしい。
相手は前々から俺たちのことを知っているようだ。癖や狙いたい場所を障壁でガッチリと守っている。
困った。こっちは相手を振り切って逃げる事は不可能だ。
翼も生えているし、おそらく飛行可能なのだろう。そんなやつに徒歩で逃げるのは愚策以外の何者でもない。
「チェックメイトみたいだな」
「………」
こっちにはあいつの障壁を貫通できるほどの火力を持った武器がない。あったとしても歩兵が持てる程度の火力では貫通は無理だ。
本来、人型は砲撃陣地に誘い込み、榴弾砲、野戦砲、戦車、対物ライフル装備の歩兵、対戦車兵器装備の兵士で囲い込み集中砲火で完全に殺し切るまで攻撃し続けるのがセオリーだ。
しかし、過去にそのセオリーを打ち破った人間がいる。
その人間は数人もの人型を屠っている。たった1人で、対戦車兵器などの高火力の武器も使わず、近接戦闘で。
「これで終わりだ」
やつはまた俺たちを真っ二つにせんと剣を振りかぶった。
ここまでかと諦めた。
どうやってもやつを倒す糸口がない。
思わず目を瞑った。
「すまん、遅くなった」
仮免何回落ちるんだろう…




