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第六層 episode.3

前回バカ遅くなったので今回は少し早めに書きました〜

episode.34

「隊長!もうダメです!俺達しかもう残ってない!」


「クッソ…ここまでか……」


 200をも超えるゴブリンが第23層第4大隊第3小隊を取り囲む。

 この軍には最前線の部隊とその他の部隊で呼び方が違う。

 最前線は第〜防衛戦防衛小隊と呼ばれる。

 25人編成の小隊がほとんどやられて残りは3人となってしまった。

 基本的にアグレッサーは個々の戦力は低い。例外はそれなりにあるが大抵は装備に関しても棍棒や剣。大剣、槍等々の中世の武器を使用している場合が多く、人類の創り出した銃には火力も射程も遠く及ばない。

 よって何も装備していない成人男性でもある程度戦い方によってはなんとか戦うことのできるアグレッサーも多い。

 だが、アグレッサーの強みは戦闘力ではなくその数である。

 実際の所、人類の現在の状況に至るまでの原因はここにある。

 例としては基本的にゴブリンは1群が約100で編成されており約大隊程度の数だ。そして常にゴブリンは3〜4群固まって行動している事が多い。

 そのため1小隊だけではいつも数で押されて壊滅、又は全滅を余儀なくされている。

 もちろんそれだけではない。主力級のゴブリンの中にも小隊長クラスのゴブリンは……非科学的な話だが魔法を使う。

 そう威力の高い魔法は使ってこないが頭や胴体、頸椎などを攻撃されたら即死は免れないだろう。

 基本的に杖を持ったゴブリンが1群(小隊)のボスであり、風や炎の魔法を使う個体が多いが稀に電気を使う個体も確認されている。

 風の魔法に関しては首や腕。脚などを吹き飛ばす程度の威力の風の斬撃を飛ばしてくる。

 炎も同じ程度だが即死ではない分死ぬまで時間がかかる。

 故に兵士からは風よりも炎の魔法の方が忌み嫌われている。

 だが、炎は風に比べて初速が遅いため避けやすい。

 しかし、今回のゴブリンは風を使用し、なおかつ数体いるようで20人近くの仲間が首や腹を吹き飛ばされ死んでいった。


「……救援は…まだなのか……」


「先ほど第2小隊に救援を要請しましたが…第2小隊も先の戦闘で大打撃を受けており、救援は………」


 タクミは小隊長に苦しそうに結果を報告する。

 

「……そうか。悪い。若いお前らをこんな死地に追いやってしまった」


「隊長……」


「いえ…これが……ヒューマノイドの運命ですから…」


 絶望の色を色濃く顔に浮かべるカスミが消えそうな声で呟く。

 最早これまでかと3人とも諦めかけた。

 その時だった。

 時代遅れなノイズ混じりの無線機がガッという音と共に通信が入ったことを伝える。


『こちら第4大隊所属第2小隊。救援に向かう。座標を送ってくれ』


 ぶっきらぼうな少年の声が無線機から聞こえて来る。


「第2小隊!生きてたか!今から座標を送る!」


 座標を腕につけるタイプのレーダーにポイントし、第2小隊へ送る。

 これで助かるとは思ってはいないが少し生存への希望が出てきた。


「悪いな2人とも。あともう少しだけ頑張ってもらうぞ」


「「了解!」」


 あまり弾の残っていないアサルトライフルを正確になるべく早く頭を射撃する。もう狙っている場合じゃない。

 鼓膜が破れそうなほど大きな銃声とゴブリンの鳴き声が耳から通して頭に響く。


「とにかく撃て!足止めさえできればいい!撃t……」


 不意に小隊長の声が途切れた。

 何事かと思って小隊長の方を向くと、彼は頭がなくなっていた。

 首から大量の血液が噴出し地面を紅く彩る。

 そして首をなくした身体だけが力なく前のめりに倒れた。

 魔法を使うゴブリンの攻撃が遠距離から的確に隊長の首を吹き飛ばしたのだと判断するのは容易だった。


「隊長!あぁ……」


「ボサっとするなスミカ!撃たないと死ぬだけだぞ!」


「う、うん!ごめんタクミ!」


 それからもどこからか風の刃が何度も飛んできた。

 2人は死に物狂いでそれを避ける。

 しかし奮闘も虚しく遂に全方位から囲まれてしまった。


「ここまでかよ……」


「そんな…」


 ゴブリンの群の中から杖を持ったゴブリンが3体出てきた。

 嬲り殺そうというのか。他のゴブリンは全く手を出そうとはしてこなかった。

 男のタクミはまだいい。だが、女のスミカがゴブリンに捕まってしまったら悲惨だ。

 おそらく奴らの欲望の対象になるだろう。

 救援も間に合わなそうだ。

 流石にここまでかと諦める。

 諦めようとした。


「悪い。待たせた」


 拳銃の発砲音が3発。

 顔を見上げると先程の杖の持ったゴブリンが倒れていた。

 

「これより第4大隊第2小隊は第3小隊を掩護する」


 そこには大量の返り血を浴びて赤黒く染まった元灰色のパーカーにGパンを履いた少し小柄な少年が右手に逆手でナイフ、左手に拳銃を持って立っていた。

 現代戦では近接戦闘などは実際全く必要な訳ではないがほとんど要らない。

 それなのにも関わらず彼はナイフを携帯していた。


「俺が前に出る。2人は援護を頼んだ。俺を撃つなよ」


「わ、わかった!」


 正直な話をすると10人程度は来るだろうと予測していた援軍がたった1人だったのでだいぶ絶望した。

 大間違いだった。

 そこからの彼の戦い方は凄まじかった。

 まず標準装備のアサルトライフルを使用していないのにも驚いたが何より近接戦闘用のアグレッサーナイフを使用しゴブリンを雑草を刈るが如く斬り殺していく姿はまるで戦闘狂の所業だった。

 ナイフが届かないところにいる敵には拳銃で対処している。


「え……?」


 あっ気に取られながら腕についてる小型レーダーを見るとたった一つの味方を示す青いグリップが真っ赤に染まった敵のグリップの群れをマップ上から消し去っていっていた。

 

「こんなに……たくさん…」


 もうすでに50体近くは倒しただろうか。マップ上の敵を示す赤いグリップは先ほどと比べて少なくなってきていた。


「え…援護を!俺たちであの人の負担を少しでもいい!減らすんだ!」


「わ、わかった!」


 残りわずかな弾薬を節約しながら撃つ。

 残弾40。もう1マガジンと少ししか残っていない。

 だが、今あの人がやられてしまったら本当に終わりだ。

 何としてでも彼を生き延びさせこの戦いに勝利しなければ俺たちに未来はない。


「っ………!」


 背後に回り込んでいたゴブリンに気づかなかった。

 そのゴブリンがタクミに向かって棍棒を振り上げた。

 殴られる。そう思って目をきつく瞑った。


「おい、気をつけろ。今危なかったぞ」


「……ごめん!」


 無線機からタクミの無警戒を咎める声が聞こえた。

 後ろのゴブリンの頭に彼の撃った銃弾が命中した。

 あんなに離れて、しかも近接戦闘をしながらも頭部に直撃させた。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 弾のなくなったアサルトライフルを捨て拳銃に持ち替え安全装置を外して構える。

 射撃。射撃。ひたすら射撃。もう人差し指の感覚がなくなるぐらいトリガーを引いた。

 そして遂に。


「……敵の撤退を確認。これより帰投します」


『了解。別の隊の支援までお疲れ様。今回も……君1人か…』


「気にするな。以上報告終わり』


 無線機に向かって戦闘終了を伝える第3小隊の少年。

 彼は自分の積み上げたゴブリンの屍の山の上にたちこちらに目を向ける。

 そういえば……彼以外の第3小隊員はどうなったのだろうか。先程の無線から察するに彼以外は全員戦死してしまったのだろうか…


「おい、2人とも大丈夫か?」


「大丈夫……ありがとね…救援に来てくれて」


「別に。気にしなくていい」


 顔についた返り血を手の甲で拭きながら立ち上がる。

 彼は血で汚れた手をポケットから取り出したハンカチで手を拭く。

 それからゴブリンの屍の山から飛び降りる。


「悪いんだけど…拳銃の弾余ってたらくれない?なくなった」


「あ、うん」


 俺とスミカが持っていた拳銃のマガジンを全て渡す。


「じゃあ俺は帰るから」

 

 2人に背を向けて立ち去ろうとした。


「あの!せめて名前教えてくれないかな


 スミカが彼を呼び止めると彼は振り返ってこう言った。


「ショウマだ」


 短く伝えると軽く手を振り走っていった。

 これが今後自分達の部隊の隊長になるとは今の2人には知る由もなかった。

ちなみにショウマくんの使ってるボルトアクションライフルは38式を参考にしています

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