第五層 episode.3
イチャイチャが足りない!というか一回ラブコメ書いてみたい
「これで大丈夫かな……」
一通り傷口を治療し終わる。先程まであった出血も治療が終わった今、一滴の血も傷口から出ることはなかった。
それからここではさっきは着ぐるみが来なかったとはいえ、危険と考えて更衣室に運び込み、内側から鍵を閉めた。
やはり…さっき私を助けるために走った疲れが怪我による貧血でより疲れているのだろう。
ショウマさんは熟睡してしまっている。
「……ありがとうございました。あの時助けてもらって無ければ私は死んでいました」
そして私たちが初めて出会った時も。
寝ているショウマさんの頭を撫でて前髪を上げる。
ゆっくりと呼吸するショウマさんの顔を見つめる。
まじまじと見る事はなかったがショウマさんは結構良い顔立ちをしていると思う。
「……ちょっと…かわいい…かも?」
そんなことを呟き、「何を言っているのか…」と呟き前髪を上げている手を下ろす。
「あ…セルフィーさんの作ってくれたお弁当忘れてた…」
鞄の中からお弁当を取り出す。彩り豊かな野菜と卵が挟んであるサンドイッチがいくつか入っていた。
それらはどれも美味しそうで食欲をそそる。
「美味しそう……あとでショウマさんと一緒に…」
ショウマさんはまだ目を覚さない。つい心配になって何度も彼の胸に耳を当てる。
大丈夫。ちゃんと動いてる。まだ…生きてる。
脚を抱えて座り込み、ショウマさんの顔を覗き込む。
「早くおきないかな…」
すると寝ていたはずの彼の目がうっすらと開く。少し涙で潤んだ瞳がこちらを見つめる。
「ん……ん?どうしたエル?」
「おはようございます。ショウマさん」
「……おはよう」
俺は目を擦り、エルを見つめる。なんだか母親に見守られている様な慈愛に満ちた目で見られた様な気がした。
「もうケガは大丈夫ですか?」
「あぁ……少し痛むが…もう平気だ」
「でも動いちゃダメですよ。怪我が治っても流れた血は戻らないんですから」
「分かった。今日は少し狭いがここに泊まろうか……」
「賛成です。そうだ、セルフィーさんのお弁当がありますよ。食べますか?」
「あ…食べたいのは山々なんだが…少し後で食べる」
「…分かりました」
「なんだ、お前は食べていいんだぞ?」
「………?一緒に食べないのですか?」
「……わかった」
なんだかこの一件からエルが一段と普通の人間らしくなった気がする。だが、かすかな微笑みは見たことがあるが…やはりちゃんと笑った所を見た事はない。
「……まあいっか」
「何がですか?」
「いや、なんでもない」
するとエルは「むぅ」と若干のしかめっ面を作ると俺の方へと四つん這いで近づいてくる。そのまま俺の前にぺたん座りをした。
「言ってください。かくしごとしないで下さい」
いつものエルだったら「そうですか」の一言で済ませていた。だが、今のエルはいつもと少し違う様だ。なんというか…人間味を取り戻している。
「……珍しいな。いつもなら『そうですか』で終わらせるのに」
「……そうでしたか?」
「………変わったな、エル」
「……別に…変わってません」
ふといつもの無表情の仮面を顔に貼り付けるとそっぽを向いて隣に座った。
「そうか?」
「そうです」
まあ…いい。いつかコイツは他の普通の14歳の少女と同じ様に笑って友達と遊んだり、学校に行ったりするのだろうか。そんなことが気になったりしたが……今はいい。
「ご飯…食べれそうですか?」
「……うん。食べれそう」
「そうですか」
差し出されたサンドイッチを掴もうと腕を上げようとするが力が入らなかった。
まだ身体が弱っているみたいだ。
「どうされましたか?」
「……手に力が入らない」
「…じゃあまだ……」
そうエルが言った瞬間。俺の腹の虫が「腹が減った」と言わんばかりに音を上げた。
「……お腹すいてるんですね?」
「……まあ…そうだけど…」
「……では、仕方ないですね。どうぞ」
「……これは?」
「分かりませんか…?あ…あーん……です」
目を伏せがちにしてあらぬ方向を向きつつ俺にサンドイッチを突き出す。
心なしか耳が赤いのは気のせいだろうか。まあどっちにしろせっかく差し出してくれたのだ。食べなければエルに悪いだろうと思い、サンドイッチにパクつく。
「ウマッ……」
一言呟き、そのまま一つ食べ切ってしまった。
「そんなにお腹すいてたんですか?もう一個食べますか?」
「……いや。残りはエルが食べろ」
「でも…」
「お前が食べてくれ。頼む」
「………わかりました」
エルが小さな口で一口サンドイッチを食べると小さく「おいし…」と呟きパクパク食べ始める。
なんだか小動物を見ている様な気分になってくる。
「……なんですか。私の顔に何かついてますか?」
「いや……なんでもない」
決して少し可愛いいななんて思ってたなんて言えない。でも何故だろう。エルにも同じ様なことを思われていた様な……気のせいか。
それからセルフィーの作ってくれた弁当を食べきり、いろいろ雑談することにした。
まだまだ陽は高い。時間はたっぷりある。
「あの………ショウマさん…」
「どうした?」
「昔のことは……何か思い出せましたか?」
「……いや、何も思い出せてないな」
だが……あの時見た夢が気になる。あの時俺の腕で息絶えた同年代ぐらいの男子は一体誰だったのか…
「そうですか。いつか全部思い出せたらいいですね」
「………そうだな」
実は、昔の事を思い出すのが俺は怖い。何故、記憶が消えているのにも関わらず、ライフルが使えたのか。何故、ナイフの使い方を知っていたのか。
つまり…俺は。何かを殺すためにそれらを使っていた。と言うことは…軍人か…もしくは………いや、何も分かっていないのだから決めつけるのは早い。もっとゆっくり考えてもいいだろう。
「どうかしましたか?」
「……別に」
「そうですか」
暇になったのでエルに更衣室の中を漁らせたりしていたらすっかり暗くなってきてしまった。
「非常用のライト見つけましたけど……点けますか?」
「…いや、節約しておこう」
「それもそうですね」
そう言ってエルはまた俺の横に座った。
バッグから毛布替わりのバスタオル……の様なものを身体に巻く。
「俺それ出来ない…」
「身体動かないんでしたね…では」
そう言うとエルは座りながら毛布を片端を俺の肩に掛けた。
伸びた金髪から花の様な香りが漂う。
ダメだ。これじゃまるで俺が変態みたいじゃないか。
「………いや、別に自分ので」
「2人の方があったかいですよ」
「……そうだな」
跳ね除けようとしたが力が身体に入らないので諦めて一緒の毛布で寝ることにした。
「おやすみなさい。ショウマさん」
「……あぁ、おやすみ」
べ、ベツニロリコンジャナイシ…




