第五層 episode.2
遅くなりました。誠に申し訳ない……
episode.30
さて……ショウマさんは先程走っている時に医務室があったと言っていましたが……一体何処にあるのでしょうか?
私は辺りを見回すが医務室らしき場所は見つからない。
「早く見つけないと……」
焦りと不安が思考を埋め尽くそうとするが、ふるふると頭を振って頭の中をクリアにする。
焦りは禁物だ。全ての失敗に繋がってしまう。
たしか入り口にこの層の地図があったはずだ。それを見れば何処に医務室があるかわかるはずだ。
それから私は入り口へと向かった。
「……やっぱり多いな…」
入り口までやって来ると先程ショウマさんを襲ったきぐるみが物騒に包丁を持ちながら何かを探すように彷徨っていた。
おそらく一緒にいた私を探しているのだろう。
いくら拳銃やナイフを持っているとはいえ、私はショウマさんのようには戦えない。
見つかったらなす術もなくやられてしまう。
「どうしようかな……」
とりあえず、見つからないように物陰の隠れつつ進む。
「……これじゃ埒が明かない」
そう思って辺りを見回す。するとそこには赤い消火栓があった。
(あれを撃てば……)
両手で拳銃を握り、消火栓へと向ける。1発の銃撃音が遊園地内に響き渡った。
すると消火栓から轟音を立てて水柱がたった。
その音に釣られて先程まで居たきぐるみが消火栓の方へとふらふらと歩き始めた。
「今の内に…」
私はきぐるみたちに見つからないように身をかがめて入り口へと歩みを進めた。
そのまま特に見つかる事もなく、入り口へと辿り着く。
「医務室は……あった!ジェットコースター横…」
そこはショウマさんがいるサーカスのテントと今私が居る場所の中間に位置していた。
私がここに来るまでに大体20分ぐらいだったから約半分。十分で到着できる計算だ。
だが、きぐるみたちが跋扈しているため10分ではつかないだろう。
「急がなきゃ…ショウマさんが…」
再び焦りに駆られた私は医務室に向かって走り出していた。
その足音に気づいたのか、またきぐるみたちが集まってきた。
「……焦っちゃダメ。慎重に行かなきゃ…」
私は歩みを緩め、足音を殺す。出来るだけ速く。静かに。
そしてとうとう医務室にたどり着くことができた。
「鍵かかってる……」
辿り着いたのは良いものの扉は固く閉ざされていた。
ここで足止めを食らうとは想定していなかった。
どうする?今から鍵を探す?いやダメだ。今から探していては間に合わない。扉を拳銃で壊す。これもダメだ。銃声できぐるみたちに気付かれてしまう。
「どうしよう」という不安と焦りが私の思考の邪魔をする。
「どうしよう……」
「きゅっ!」
その時。鞄からおもちさんが飛び出てきた。
一体何事かとおもちさんを見つめるていると、どうやら扉と床の僅かなスペースから中に入ろうとしている様だった。
「……なるほど…中から鍵を開けるんですね!さすがおもちさんです!」
「きゅっ!」
「行ってくる!」と言わんばかりに元気よく鳴いたおもちさんは扉の隙間からするすると中へと入っていった。
そして暫くすると「カチャリ」と小気味のいい音を立てて扉がゆっくりと開いた。
「やった!ありがとうございます、おもちさん」
お礼を言いつつ下の隙間から出てきたおもちさんを撫でる。
「きゅぅん」と可愛らしい鳴き声を上げたおもちさんは私の腕を上ってまた鞄の中に戻っていった。
「止血剤に造血剤…鎮痛剤もある…!」
それらを適量取り、鞄の中に押し込む。その他にも使えそうな物もついでにと入れ込む。これでショウマさんを救える。
だが、油断は禁物だ。要らぬ事態を引き起こさぬ様に慎重にテントまで向かう。
少し歩いたらテントが見えてきた。
あともうちょっとで……ショウマさんを助けられる。
そう思った瞬間だった。
物陰に立っていた私の影に別の大きな影覆いかぶさった。
「え……あ…」
背後に振り向くとその気は気味の悪いきぐるみが今にも私を斬り裂かんと包丁を振り上げて立っていた。
「ひっ…ぁ…」
私の声にならない悲鳴をあげて私はぺたりと地面に座り込む。
ここまで来たのに……あともう少しで助けられたのに……!
「助けて…ショウマさん……!」
思わず彼の名を口にして目を瞑り身を縮こめた。
そんな私に容赦なくきぐるみは振り上げた包丁を私に振り下ろす。
ザクッ!
振り下ろされた包丁が私の身を切り裂く…筈だった。
何故かそのきぐるみは力を失った様にばたりと倒れた。
「一体何が……?」
「やっぱり……1人で行かせるんじゃなかった…な」
「ショウマさん!?」
倒れたきぐるみの後ろから現れたのは腹部を血で紅く濡らしたショウマさんだった。
ショウマさんは私に力なく笑いかけた。
「傷は…」
「これぐらい…大丈夫……じゃ…ないかも」
急に脱力したショウマさんは私にもたれかかる様に倒れ込んだ。
彼の身体が倒れない様に慌てて支える。
「どうしてこんな無茶なことを……?」
「テントの隙間から…お前が来るのを見つけて…全力で走ってきた。もうその時には背後にきぐるみが立っていたからな…」
「……すみません。こんな時までショウマさんに迷惑をかけるなんて…」
ショウマさんはよろよろと私の身体から離れてゆく。
「気にするな……で、薬は取れたのか?」
「一応は…」
「きゅっ!」
「おぉ…おもち。ちゃんとエルの役に立てたか?」
「きゅぅ……」
しゅんとした表情になったおもちさんをショウマさんは優しく頭を撫でた。
「最後のは気にするな…あれは仕方ない………から……」
「ショウマさん!」
力尽きたのかショウマさんは気を失ってしまった。
動かなくなったショウマさんを多少雑だが引きずってテントの中へと運び込む。
「ショウマさん……」
ゆっくりと頬を撫でると人肌とは思えない冷たさをしていた。
まさかと思い彼の胸に耳を当てる。
大丈夫。心臓はまだ動いている。今のうちに治療を終わらせてしまおう。
そう思い、私は鞄の中の医務室から取ってきた止血剤や造血剤を取り出す。
「うぅ……仕方ないよね……?」
恥ずかしいがショウマさんの服をまくり上げ、腹部を露わにする。
すると痛々しい傷があった。
臓器まではダメージはいってないとは思うが、出血が少し治まったとはいえ、まだ傷口は塞がっていない様だった。
「治して差し上げますから…」
そう小さくつぶやき、私は傷口の治療を始めた。
誤字脱字は…(ry
あまり進展のない話になりましたが……申し訳ないです…




