第一層 episode.3
数秒間見つめ合う。
遅かったか。すまんエル。全部見てしまった。しかし綺麗な体をしているな。そこまで主張の大きくない双丘については何も言うことはないが胸から腰にかけてのラインがとても優美で綺麗だった。足もスラリと長く、少し濡れた長い金髪が天井の光に照らされて煌びやかに輝いている。それから少しして驚いたようにその透き通った蒼い双眸を見開く。しかし、それ以上に気になることがあった。
「………なあエル。お前………何歳?」
「………14です」
14にしてはなんだか背が小さい気がするが……その前にだ。なぜどこも隠さずに言うか。隠せ、目に毒だ。一応俺も男だからあまり見ていて気持ちの良いものではない。
「そうか…ほら、服。着ろよ」
「下着に触らないでください。出て行ってください」
「わかったからナイフを向けるのをやめろ。確かに自衛用とは言ったがアグレッサー相手にしてくれ俺の寿命が物理的に縮む」
「じゃあ出て行ってください」
「はいはいわかりました………」
そう言って俺は脱衣所を後にした。布ずれの音がする。服を着ているのだろう。
いや、しかし見て減るものじゃないし別にいいだろう見ても………というかナイフはないと思う。殺す気満々な目をしていた。というか最初に会った時からエルは表情筋が死んでいる。いつも無表情だ。だが今の一瞬だけは………
「顔……赤くなってたな…」
「ショウマさん?」
「うおっ!?………びっくりした」
「………さっきはナイフを向けてすみませんでした。本当に使うわけないです。しかし最初に声をかけてくれたらあんなことにはならなかったと思うのですが」
「そう言おうとしたらお前が上がってきたんだ」
「………すいません…でも…」
「でも何だ」
「………何か言うことはないんですか?」
拗ねているような目をして聞いてきた。何と言えばいいのかわからない……えっと……
「……ありがとう?ご馳走さま?」
「…もういいです」
「そうか。なあ俺もシャワー浴びていい?」
なんだか汗臭いような気がする。このままの状態ではあまり気分がよろしくない。
「どうぞ」
それからシャワーを浴びた。なんだか久しぶりにお湯を浴びた気がする。
………ところでどうしてここはお湯が出るのだろうか……まあいい。
それからシャワーを出た。扉を開け外に出ると俺の姿を見たエルがパタパタとこちらに走ってきた。
「………さっき鍵を見つけました。隣の部屋かと思ったのですが鍵が合わなくて………あともう一つ見つけたんですがこちらも使えなくて……」
「あー多分そっちの鍵は俺が持ってる。でその鍵なんだが………多分あっちの地下室への扉のなんじゃないかな?」
「そうですか」
「じゃあほかのドア開けてみるか」
「そうですね」
それから残りの二部屋の中に入り中を探索した。特にそこまで気にするものは無かったがついに俺たちはあるものを見つけた。
「………これだ…!蛇口!」
「さっきのシャワーから水を汲めたのでは?」
「………いや…なんか…あーもうその通りです!」
「………何を怒っているのですか?」
「怒ってない……ほらっ!さっさと水汲んでこんなところ脱出しよう!」
「………そうですね」
それからペットボトルと水筒に水を汲んでバックに入れた。これでしばらく水に関しては困らないだろう。あとは………
「右側の部屋に行こう。地下室にもしかしたら何かあるかも」
「わかりました」
それから右側の廊下に来たのだが………
「あ、ちょっと待て。地下室の前に少し回収したいものがあるんだが…」
「どうしたんですか?何かあったんですか?」
「いや、大した事じゃないんだが医薬品を取っておこうかと思ってな」
「それは大事ですね。またいつ怪我するかわかりませんからね」
「そうそうそれそれ」
それから二人で医薬品を手に入れた。あんまりたくさん持っていくとかさばるので止血剤。鎮痛剤。包帯。それらを数個ずつバッグに入れた。水と相まってかなりの重量になった。
「………重い」
「すいません欲張って……」
「いや、別にいい。気にするな」
「………そうですか」
「それより……死体がない」
「え?何かあったんですか?」
「ベッドで寝ている白骨死体があったんだが……まあいい。さっきの部屋に行こう。地下だ」
「少し気になりますが………そうですね。行きましょう」
「おー」
それから隣の部屋に行く。中に入り地下への入り口であろうところにさっきの鍵を差し込む。
………入らない。じゃあ二つ目。今度は入った。横に回して鍵を開ける。
「お!開いたな。行こう」
「分かりました」
それから引き戸を開け、地下に入った………が真っ暗だ。何にも見えない。どうしようか………
「どうするかな」
「………ライト…探しましょうか」
「まじか、ここまで来てライトとは……」
「仕方ないですよ、諦めて探しましょう」
「はいはい……ったく」
まさかの光源不足でまた探索である。もう飽きた。というかここに何時間ぐらいいる?かれこれ3時間ぐらいいる気がする。いや、もっとか。ライト。ライト………ライト………
「あ」
「………?何かあったんですか?」
「外の死体にさヘッドライト無かったっけ?」
「そういやあった気がしますね……取ってきましょうか」
「よし、行こう」
それから二人で死体からまだ電池の残っていそうなヘッドライト二つとそのほかの死体から電池を抜き取って予備を作った。これで暗い中でも行動できる。
それから地下に入り、ライトをつけた。
「暗いな」
「そうですね……向こうになんかありますよ」
「……なんだこれ?汚れて見えない…」
赤黒いシミのようなものがプラスチック製の看板にベットリとついていて何か文字が書かれているようだが読むことができない。
「どうしましょうか?」
「………待って雑巾作る」
バッグから包帯を取り出しナイフでいい感じに二枚切る。これで布切れになる。これで……
「ほらここを拭いて」
「はい」
それから少し拭いていると読めるようになった。
「………メインゲート開閉レバー…?」
「そうみたいですね。ここのレバーを下げれば………」
ガコン!
「………上で音がなったな。多分あのデカイ扉が開いてるだろ…行こう」
「そうですね……」
「マテェ……!」
「「っ!?」」
後ろから急に声がした。急いで振り向きミアを背に庇う。そこには不気味な骸骨がゆらゆらとした動きで立っていた。
「「「………」」」
しばし無言で向かい合った後、俺はライフルを構えた。ボルトハンドルを引き、次弾をセットする。
「マッテ!ゴカイゴカイ!キガイハクワエナイ!!」
「本当か?」
「ホントウ!カミサマニチカウ!」
「………わかった」
そう言って俺はライフルを下げる。
「………もしかして……さっきショウマさんの言ってた白骨死体の方なのでは?」
「あーなるほど。この建物の前で出くわしたあいつと同じ原理か」
「そうみたいです。でも敵意は感じませんね」
「で………何の用だ?」
「ソノ………カギヲカエシテホシイ」
そういや取ったままだった。腰のベルトについたジャラジャラとついた鍵とポケットに入ったマスターキーを………マスターキー?そういえばこれ一回も使ってないな………
「あー……ごめん。返す。急に取って悪かったな……つかカード使うところなかったんだが………」
「アー、ソレハカードヲツカウトコロハゼンブアケテルカラナ……シカシ、ヒサシブリダ……イキテイルニンゲンニアウノハ」
「やっぱりもう第1フロアには誰もいないのか」
「ココニハオレシカイナイ」
「そうか………そういえばここの施設の設備は生きていたな。あんたが直したのか?」
「ソウ。シンダハズダッタノニナゼカイキカエッタカラ………」
「そっか。それはさぞ驚いたろうな」
「マア………ビックリシタ。ソノヨウスダトキミラハカベノムコウガワニイキタカッタンダロウ?イクトイイ。シカシ、ソトニハアグレッサーガマダケッコウイタカラ………キヲツケテナ」
「わかった。色々ありがとう」
それから一階に戻り、先ほどの扉を確認した。予想通りというか当たり前か。開いていた。
「さっきのお方いい人でした………お陰でようやく先に進めますね」
「長かったな………」
グゥーー………
2人同時に腹が鳴る。思わずお互いの顔を見合った。
「腹減ったな……」
「そうですね…」
「この先なんか食いもんないか探してみるか?」
「そうしましょう」
こうして俺たちは約5時間かけて壁を突破することに成功した。




