第四層 episode.4
6人の設定考えるの疲れた。
「次は4層か……お前ら誰が死んでもおかしくないからな。死んだ奴は見捨てろ。怪我人は助かるような怪我だったら救助」
「助からない奴も見捨てろ。でしょ?隊長。分かってるって!現にここまでそうしてきたじゃん」
「……そうだったな」
「心配性だなぁ隊長は」
「違いねー」
狭苦しいエレベーターの中で笑いが起きる。
第20層から下に降りてきて現在第5層。25人で編成された特殊部隊。通称『カウンタースタブ小隊』
この部隊には人間は1人しかいない。
隊長のショウマ、ただ1人だ。他は全員ヒューマイドである。
「しかし……最初は25人もいたんだよなーって思うと少し寂しいけどね」
少し感慨深い顔をした黒い髪と金色の目をもつ少年はタクミ。ひょうきんな性格をしているが現場では小隊1つを簡単に壊滅出来るアグレッサー相手に1人で勝ったという優れた戦績を持つ。
「どんな精鋭部隊でも誰も死なせないのは無理だ」
「だからさー結局の所、どんな精鋭部隊でも無理なものは無理なんじゃないかなー20層から徒歩で1層まで移動して敵の本拠地破壊なんてさ。大体本拠地には準主力級が何体もいるんでしょ?勝てる訳ないじゃん、前どっかの中隊は準主力級1体だけで全滅させられてたじゃん」
「命令だからな。まあ上の奴らは俺たちの事なんてどうでもいいんだろう。ヒューマノイドだけを前線に駆り出して戦わせるのは良くないって言ってる俺たちが邪魔だったんだろ」
「なるほど!確かに」
「隊長。もうすぐ着きますよ」
「了解。さて、キヨタカみたいにエレベーターの中に内臓をぶちまけたくなかったらちゃんと警戒して外に出るんだぞ。カズト、ドアの前で待機よろしく」
大きなライオットシールドを持ったカズトが頷いてドアの前にシールドを両手で構える。
カズトのライオットシールドは縦に拡張できて、全身を守ることが出来る。ただし、背後が無防備になるのとサブのリボルバーを使用できない難点があるが、正面からの攻撃は人体を真っ二つにしてしまうほどの威力の12.7mm弾をも防ぐ耐久性を持つ。
そして何よりカズト自身の肉体の強さも軍の中では有名だった。
アグレッサーの中では特にずる賢いことで有名なゴブリンと呼ばれる小鬼がいるのだが、そのゴブリン4.5体を相手に肉弾戦で勝利したという噂が軍で流れていたりした。
安心して前衛を任せられる頼もしい仲間だ。
「隊長お母さんみたい」
「確かに」
「子供が面倒くさい奴らばっかりしか居ない親なんて嫌でしょ」
「お前らちゃんとその辺自覚してるんだな…」
エレベーターの扉が開く。幸い少し前の階層のように出待ちして魔法を放ってくるアグレッサーは居ないみたいだ。
「よし、クリア。いいぞ外に出て」
「了解。周囲のクリアリングに移ります」
それからエレベーター付近の安全を確保したあと、第5層から第4層へのエレベーターの場所へと移動を開始した。
少し歩いて狭い路地の入り口ようなところに来た。
「アグレッサーを視認。おそらくオーガかと。こちらには気付いていないようです」
「了解。じゃあよろしく頼む」
「了解です。隊長」
おもむろにその体には似合わない大きさのスナイパーライフルを構える彼女はナナセ。7.62mmのボルトアクションライフルを愛用し、有効射程の800m以内だったらどのような条件下でも命中率はほぼ100%という驚異的な記録を持つ。
そして銃声が1発。辺りに響き渡った。
着弾。オーガは床に力なく倒れ込んだ。
「ヒットです」
「よくやった。各位移動の準備」
それからその狭い路地の中に入っていくと家らしき建造物が見えた。
その近くでアグレッサーであるゴブリン数体が何かにたかっていた。
しばらく見ていると女性の声で「やめて!」と叫び声が聞こえた。ゴブリン達の間から人間の女性らしき姿が垣間見えた。
ゴブリンにはメスが極端に少なく、それ故に多種族のメスを使ってその数を増やす。
普通ならば別の生物と別の生物との子供は作ることができない。だが、彼はそれらを可能とした。
5年前の異世界からの大規模侵攻の時、大量の女性がその苗床とされた。そのほとんどは救出出来たものの、今でも行方不明の女性は多い。
「たいちょっ!まさかあれって……っていない!」
タクミがショウマの居た場所に目をやると彼はいつの間にか居なくなっていた。
「またあの人は!おい!みんな援護しいに……行く必要もないか…」
ダガンッ!
「まずは一体。次…!」
まずは女の上半身に夢中になっているゴブリンの頭に銃弾を撃ち込む。
こちらを振り向きかけたゴブリンの顎にナイフをぶち込み、蹴り飛ばす。
後ろから襲いかかって来ていたゴブリンの脳天に発砲。
残り一体に足払いを掛け、空中に身体が浮いた瞬間。首をナイフで掻き切る。
ゴブリンの血がナイフとが俺のズボンを紅く濡らした。
「全く隊長はいっつも無理すんだからも〜」
彼は軍にいた時から強かった。入隊して1年で他の戦線でも指折りの人間しか入隊させられない第一次防衛線防衛小隊に入隊し、2年目にはその隊長にまで成り上がった。
そして今に至る。
彼の戦い方は誰にも真似できない。拳銃を左手に、ナイフを右手に持ち接近戦を行うその姿は命知らずやら猪などバカにされた事があったが、絶対に死ぬことはなかった。
昔、彼の居た小隊。約20人が中隊規模の敵と交戦し、全滅した。彼を除いては。彼は一人でその敵中隊を残らず皆殺しにしたと言う。勝てるはずの無い戦いだったはずなのに帰還した彼は英雄として軍で名を馳せることとなった。
「隊長〜?大丈夫ですか?怪我は…してる訳無いですよね」
「ああ、無事だ……あんた大丈夫か?」
「あ……はい…」
そこには薄い桃色の髪を腰まで伸ばし、蒼い瞳をぱちぱちとさせ、今気づいたのか、急に顔を赤くして衣服が破れ露わになった身体を隠しこちらを見上げている少女の姿があった。
「助けてくれてありがとう…」
「気にするな。仕事だからな」
ナイフについた血液を振り払ってから鞘にしまう。
すると先程まで怯えていた少女も少し安心したようでホッとした表情になっていた。
「怪我はして無いか?」
「うん、大丈夫。それより君は怪我してない?」
「大丈夫だ」
「隊長?隊長!ちょっ何裸の女の子とイチャコラしてるんですか!?もしかしてたいty」
「こら!バカばっかり言わないの!それより私の替えの服を取り敢えず着させてあげましょうか、さすがにこのままじゃ…」
追いついてきたのかスミカがカバンから自分の服を取り出していた。
「そうだな。頼む」
「じゃあ君、こっちきて。服着させてあげるから」
「う、うん…ありがとう」
「いいのよ別に」
「男子がいると着替えられないから」と男子はその場から離れることになった。
「それにしても可愛かったですねあの子」
「知らん」
「隊長はこういう話全く興味無いのおかし〜ですよ!なあ?みんな」
カズトは一人で俯いている。っておい何顔赤くしているんだ。
そのほかも「確かに」等々の同意を示す返答をする。
そんなにおかしいとは思わないのだが……
それから着替え終わってから少し話をしてむることにした。
「じゃあ君たちは一番上のところからここまで来たの?」
「そうだな」
「どうして?」
「そりゃあアグレッサーにこの都市取られちゃったからねー。んで上の奴らに最下層にあるアグレッサーの本拠地を叩き潰してこいって言われたんだよ。ね?たいちょー?」
「少し雑だがまあそうだな。そういえばアンタの名前を聞いていなかったが…」
「そうだったね、私はセルフィー。君たちの言う所のアグレッサーで人魚だよ。大丈夫!敵意はないから。ちなみにヒレないじゃんって言われたけどこの近くは私の家に近いから魔法で人の足にしてるんだよ」
「そうか。しかし人魚か…まあ今まで明らかに地球上の生き物とは思えない奴らばかりに遭遇してきたからなんだかあんまり驚いたりしないな」
「そうですね〜でもこんなに可愛いアグレッサーは今まで一度も見たことgっ!?」
「気持ち悪いこと言わないの!セルフィーが少し引いてるじゃないの!」
タクミの頭をポカリと叩いたのはスミカ。うちの隊ではかなり背が高くすらっとした脚にブロンドの髪を後ろでまとめていてなおかつ顔立ちも良い。
いろんな男に言い寄られたらしいがそれを全て突っぱねると言うストイックさも持ち合わせている。
「少々叩く力が強すぎじゃありませんかね…スミカさん?」
「タクミがキモいこと言うからでしょ」
「相変わらず仲が良いなお前らは」
いつもはあまり喋らないカズトが珍しく声を出した。
「「仲良くない!って今カズトが喋ったの!?」」
「ふふふ……面白いね君たち…」
2人で言い争っているのを見ながら先ほどまでの警戒していた表情を少し緩めクスリと笑うセルフィー。
「いや、何というか悪かったな。時間を取らせて申し訳ない」
「ううん。私こそ助けてくれたのに何も出来なくて…ごめんね。
「別にそれについてはいいんだ」
「そっか……」
それからいろんなことをセルフィーと話した。上の階層のこと。死んだ仲間の話。セルフィーの元いた世界の話。
そうしたら話し込んでしまった様でもう日は落ちかけていた。
「まずいな……このままだと危ない。取り敢えずエレベーターまで急ぐぞ」
「待って!」
準備をして下へのエレベーターのところで野宿をしようと思ったのだがセルフィーからの待ったがかかった。
「なんだ?少し急いでいるんだが……」
「私のお家で今日は寝ていかない?」
そう言ってもらい、全員の了承を受けて俺たち一行はセルフィーの自宅へ一晩泊まらせてもらうことになった。
どうやら先ほどの家のような建築物は
「結構良い部屋だな……まあ多分女子しか入らなそうだし男は外で寝るか」
内装はあまり華美なものはなく、シンプルかつこじんまりとしていた。
「さてと野営の準備だ。さっさと準備するぞ、怠けた奴はレーション無しだからな」
「了解〜」
とは言ったものの準備のほとんどはカズトがやってくれた。カズトは見た目とは裏腹にテキパキと準備する。
「よし…サンキューカズト。やっぱりお前が一番真面目だな」
「………」
少したじろきこくんとうなずく。図体は大きいのにこの小動物みたいな行動のギャップが強い。
そのおかげでたまにペット扱いされるのが最近の悩みなんだとか。
「カズト…なんかいつもより表情硬い?緊張してるのか?あっ、もしかして女子が1人増えたから緊張してるのか?」
「…………!」
「なるほど……まあでセルフィーはかなり可愛いからな〜」
またまたたじろくカズトをさらにいじめるリク。
リクはこの隊の最年少隊員だ。素早く行動し、敵の急所を的確に狙うその様は他の隊員から暗殺者と渾名されている。
その割には人をからかったりするのが好きだったりする。
「それ以上虐めてやるなリク。カズトが困っているだろう」
凛とした声が後ろから飛んできた。その声の持ち主はアサミ。声の通り凛とした佇まいに腰のあたりまである黒い髪の少女だ。
「そうだ。お前カズトがいなかったら戦闘で活躍できないだろ?」
「すいませーん。まあ実際カズトがいなかったら俺戦えないし!いつも感謝してるよ肉壁!」
「確かに!頼りにしてるよ肉壁!」
肉壁というフレーズにツボを押されたのかいきなり笑い始めたタクミはカズトの背中をバシバシと叩く。
「人の事を肉壁って言わないの!」
「確かに。うちの隊の最強の肉壁だな」
「隊長!?」
「そうだな。確かに敵の攻撃を一身に受け止めるその背中はやはり信頼に値するものがあるな」
「嘘!アサミまで!?」
心なしかカズトも嬉しそうな表情になっていた。いつもは無表情だがそういう奴が表情を表に出すとやはり嬉しい。
「やっぱり面白いね君たち!」
わちゃわちゃ騒ぎながら夜は更けていく。そこには軍人ではなく歳相応の少年少女の姿があった。
誤字脱字と変な言葉遣いは許してください……本当に




