第四層 episode.2
書いてる時のバックミュージック
「fly me to the moon」SALLA.Rさんcover
「深海のリトルクライ」土岐麻子さん
「と………まあここまでが俺たちが出会ったここまでの出来事かな」
「そうですね……ブレンダさんは良い人だったんですけど……最初の方に髪を引っ張られたのが痛かったです」
「それを聞いたらブレンダは泣き出すかもしれないな。今度会ったら言ってやろうか」
「やめてください!」
「はははっ!君たち本当に面白いね!もう……余計に……離れたくなくなっちゃうじゃない……」
楽しそうな目が急に暗くなって寂しそうな表情になった。
「ずっと1人だったの。あっちの世界からこっち来てからずっと……ずっと…君たち以外の人間は私の事を不気味がって誰も話しかけようとはしてくれなかったのに………」
「………そうか。人間は自分の知らないもの。つまり未知のものや異形のものは嫌う習性みたいなのがある」
「そうですね……私も…いえ、なんでもありません。でも、セルフィーさんは良い人……人魚さんなのに話しかけないなんて残念な人たちしかいなかったんですね」
「うん……そうだね…そろそろ日が暮れちゃう。今日は私のお家に泊まっていかない?」
「良いんですか?」
「もちろん!あ!心配しなくても水の中にお家がある訳じゃないからね!水路みたいな所を通っていくんだよ!」
それからセルフィーはプールの中に入った。身支度を軽く済ませて
どうやら別のプールのところに通路があってその奥に家があると言う。
「ねえショウマくん…」
「どうした?」
「あのね。少し運んでもらえないかな?」
「………運ぶ?」
訳のわからない事を言い始めたと思ったら今日は大きなプールで泳ぎたかったとのことでその家のあるプールから這ってきたのだという。
なんともまあたかが泳ぐためにめんどくさい事をするなと思いつつセルフィーの肩と腰に手を回し持ち上げる。
華奢な肩に女性らしい腰のラインは17歳の男子にはちょいと刺激が強いが我慢する。
しかし………人魚は貝殻で胸部を隠しているのかと思いきや普通にTシャツを着ているとは………知らなかった。
「これでいいのか?ほら、首に手を回してくれ」
「分かった!それにしてもショウマくん力持ちだね!」
嬉しそうに笑いながらこちらを見上げるセルフィーの整った顔に少したじろぎ、顔を逸らせる。
「あー…なんで顔逸らすの?こっち向いてよ!」
そう言ってセルフィーは頬を膨らませてこちらを睨む。やめてくれ。多分マトモな17歳の男児には毒だと思う。
「前を向かなきゃ歩けんだろう。さあ、早くどこに運べばいいか教えてくれ」
「そっか…そうだね。よしじゃあ早速出発!あのプールの一個向こう側のプールだよ!」
「………」
「どうしたエル?」
「なんでもありません」
「………怒っているのか?」
「怒ってません!早く行かないと日が暮れちゃいますよ」
なんだか怒っているような気がするが……それは気のせいだろうか。でも最近エルが感情をよく表に出してくれるのは何故だかわからないが、まあ………いい事だと思う。
「よし、着いたぞ」
プールの中へとゆっくりセルフィーを下ろす。それにしても……ふと人魚は他にはいないのだろうかと思った。もしかしたら他にも仲間がいるかも知れない……聞いてみようと思ったが先ほどの話で仲間も恐らくいないだろうと察したので口に出さなかった。
「………ショウマくん?」
「あ、いや………なんでもない」
「………?」
それから水路の横の道をゆっくり歩いてゆく。徐々に日は落ちていき、足元が不安になってきた。
「なんだあれ………?」
「じゃじゃあん!ここが私のお家ですっ!」
そう言ってセルフィーは水路の奥を指さした。
そこには人間が使っていたであろう遺物を使って作られたセルフィーの家があった。
部屋の中に入った瞬間セルフィーのヒレが足になった。彼女曰く?この部屋には魔法が効いていてヒレを足にしたり、はたまたその逆もできるんだとか。流石は異世界の住民だ。何でもありだな。
「ちょっと待っててね!お風呂沸かしてくる!くつろいでていいよ!」
セルフィーのすらりと長い生足に目を奪われぬ様に目線をそっぽへと変える。しかし……上はTシャツ。下は履いていないとなると本当に男にとっては目に毒だ。
「お…おう………ありがとう」
そう言ってもう一つの部屋へと行ってしまった。取り残された俺とエルはポロリと声を漏らす。
「………しかし…あれだな……」
「そうですね………」
人魚が何故風呂に入る。多分エルも同じことを考えていただろう。
まあ……綺麗好きなんだろう…多分。
そんな言い訳で自分を納得させると俺はリビングであろう部屋を見渡す。古いソファーやベッド。キッチンに錆び付いたストーブ。欠けたコップが金属のテーブルの上に乗っている。
そして棚の上にはナイフが一本置いてあった。なんだか見覚えがある様な気がするが気のせいだろうか。
「それにしても………人魚も普通に生活するんだな」
「そうですね……」
しばらくしたらセルフィーが帰ってきた。その手にはボロボロのスポンジが握られていた。
「お風呂洗ったから入っていいよ〜。どっちから入る?」
「えっと………」
エルはこっちの表情を伺った。多分どっちが先に入るのかを尋ねようとしているのだろう。
「エル、お前が先に入れ」
「えっと………はい」
「じゃあ一緒に入ろう!エルちゃん!」
「え…ええっ!?」
「いいじゃない!女の子同士だもん!一回誰かと一緒にお風呂入ってみたかったんだ〜」
「あの…ショウマさん?」
「自分の事は自分で決めていいんだぞ。でも、いい機会だから一緒に入ってこいよ」
「……はい!」
風呂場へ向かう2人を見送る。しかしなんだろうか。美少女2人が一緒に風呂に入り、しかもその横に居れるって言うのはなんだか落ち着かない気分になるものだな。
「で……エルちゃんは下の層からやって来たんだよね?」
「そうですが……」
「やっぱり大変だった?」
「そうですね……まあ色々ありましたがショウマさんが居てくれたので」
「ふぅ〜ん……」
服を脱ぎつつセルフィーさんの問いに答える。
セルフィーさんの体は凄くすらっとしていて肌は艶が良く、張りもある。肌の手入れも怠る事なくしているのだろう。
しかし………同じ女性であるためその大きな胸に少し嫉妬してしまう。
「どうしたの?」
「……なんでもありません」
「そっか。じゃあ入ろうか」
「はい…」
お風呂はあまり大きいとは言えない大きさで、2人はいるのがやっとな大きさであり、バスタブではなく長方形の1世代前のお風呂がそこにはあった。
「電気はどこから来ているのですか?」
「私が魔法で作ってるんだよ!」
「凄いですね……魔法」
「そうでしょっ!」
それから湯船にゆっくりと足をつける。柔らかい暖かさがつま先からふくらはぎを通して伝わってくる。
軽く掛け湯をしてからお風呂に入る。第2層からせいぜい水で身体を洗うぐらいしかしておらず、お湯に触れる事が無かったのでなんだか懐かしい気分になった。
「気持ちいい?」
「はい……とっても……気持ちいいです……」
「良かった!じゃあ私は先に身体洗うね!ゆっくりあったまってね!」
「はい……ありがとうございます…」
それからひと通りセルフィーさんが体と髪を洗い終わった後に交代して私も体を洗う。
「ねえエルちゃん?」
お風呂の縁に腕を置き、その上に頭を置いてこちらを見てくるセルフィーさんの方へと目線を向ける。
「なんですか?」
「ショウマくんの昔のこと知らない?」
「昔のことですか………すいません。あの人昔の自分に関する記憶がないんです…」
「そうなの……それじゃあ仕方ないね」
何故そんなことを聞くのか不思議に思ったけれどあまり深追いしないほうがいいと思い、質問はしなかった。
「じゃあ……エルちゃんは?」
「私……ですか?」
「そう、エルちゃんの昔のこと。言いたくないのなら無理に言わなくてもいいんだけど………」
「私は……私は………」
言葉に詰まった。まだセルフィーさんには自分がヒューマノイドだとは言っていない。でもすでに首筋の所を見られているはず……どうしよう…もし彼女がそれを知った上で私に聞いてきていたら……
「………ヒューマノイドなんです…私」
罪悪感に耐えられずに口からポロリと漏らしてしまった。これでもう仲良く話すのは無理かもしれない。嫌われるかもしれない。そう考えただけでゾッとした。
「………そっか。言ってくれて嬉しいよ」
そう言って項垂れている私の頭に手を載せる。と彼女は私の頭を撫で始めた。
まるで母親が子を撫でる様に慈愛に満ちた表情だった。
「……セルフィーさん…」
「あっ……ごめんね!子供扱いされたみたいで嫌だった?」
私はゆっくりと首を横に振った。そしてまた下を向き、顔を手で覆った。そうしないとすぐに泣き出してしまいそうになったからだ。
「そう?じゃあ遠慮無く〜♪」
そんな私に構わず撫で続けるセルフィーさんの優しさに甘えてしまいそうになった。
「ありがとう……ございます」
「えっ!?私何もしてないよ!なんで?どうしたの?」
「なんでもです」
ゆっくりと顔を上げ、セルフィーさんの方へと向き合う。今の私はうまく笑えていたでしょうか?
誤字脱字?知らんなそんなもん。大変申し訳ないのですが見逃してくださいw
友達に言われたので一応言っときますヒロインは変わりません!w




