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第三層 episode.6

ノベルバの方もどうぞよろしくお願いします

「はぁ…はぁ……」


「おい!死ぬな……死なないでくれ…」


「ショウマ……じゃあな…またどっかで会おうぜ……」


「おいっ!〇〇〇!」


 意識が覚醒し始める。ゆっくりとその双眸を開く。するとそこには今は見慣れたエルの顔がそこにはあった。だが………近すぎる。反対側を向いて寝ていたにもかかわらず今は向かい合って寝ている状況になっている。


「………なんで……なんだこれ?」


 その腕はエルの頭を抱え込むような形になっている。よっぽど寝癖が悪くなければこんなことにはならない筈だ。

 エルの顔が近すぎたインパクトが強すぎてさっきまで見ていた不思議な夢のことが飛んでいっていた。

 一体あれは誰だったのだろうか。俺はそいつを抱えていた。腕に抱えていた。そして…俺の腕の中で息絶えた。仲が良かったんだと思う。あっちも俺の名前を呼んでいた。俺もあいつの名前を呼んでいた……でもなんという名前かは思い出す事が出来ない。ようやく思い出せそうになったらすぐに消えてしまう。


「んっ………ぁ……」


 横で寝ていたエルが涙でとろりと蕩けた寝起き特有の瞳をしながら起きた。

 ……なんだかいたたまれなくなって目を剃らせる。


「起きたか。悪いんだが少し頭を持ち上げてくれ。もう腕の感覚がないんだ」


「え……あ、はい。すいません……?」


 眠たげな目で頭を持ち上げる。長い金髪が耳からはらりと落ち俺の手にかかる。

 相変わらず綺麗なブロンドの髪をしている。だが寝癖がついており所々髪が跳ねている。


「いや謝る必要はないぞ。多分俺がやったからな」


「そうですか……一体なぜ?」


「聞くな。馬鹿らしくなるだろ」


「………?」


「………なんだ」


「……いえ、なんでもありません。それよりも早くこの層を出ましょう。目標は今日中ですよ」


「分かった」


 それから簡単に身支度をしてから外に出た。


「………なんだ?花弁?」


「これは……桜の花弁ですか?」


「桜……桜って名前なのか」


 昨晩寝た建物から出て2時間ほど歩いたら上から花弁が降ってきた。小さくて上から中心にかけて切れ込みが入った薄桃色の花弁。どうやら桜という花らしい。木に咲く花で春になると咲き、桜の花を風が運んでくることを桜吹雪だとエルは言う。


「………桜か…綺麗だな」


「そうですね。もしかしたら上の方に木が咲いているのかもしれません」


「そうか。じゃあ行ってみるしかないな」


「わかりました。では急ぎましょうか」


 それからまた1時間ほど歩くと遂に塔の近くに着いた。


「ありましたね、桜の木」


「そうだな………綺麗だ」


「綺麗ですね」


 そこには人の何倍もありそうな高さの桜の木があった。横に縦に広く伸びた木の枝にはもうはちきれんばかりに桜の花が咲いていた。


「ん……っ」


 風が吹いてきて風に乗って桜の花が舞ってくる。暖かな風と桜のふわりと心地よく独特の上品さを感じさせる香りが鼻腔をくすぐった。


「エル。ついてるぞ」


「あ、ありがとうございます」


 先ほどの桜吹雪のせいでその緩やかに伸びたブロンドの髪に桜の花が乗っていたので手で払って落とす。

 ………なんだかいたたまれない空気になってしまった。年端もいかない少女に気安く触れるのはどういうことか改めて感じた。


「……さて行こうか」


「そうですね」


 それから塔の前までやってきた。今回は扉が開きっぱなしだった。これならすぐに上に登れそうだ。


「次は4層か……何があるのか分かるか?」


「4層は確か……水産系を主にしている産業地帯だった気がします」


「そうか……水か」


「端的に言えばそうですね」


「喉渇いたなと」


「そういえば昨日から何も口にしてませんね」


「荷物が流されちまったからな仕方ない」


「上の層に行ったら水と食料が欲しいですね」


「そうだな。じゃあ行こう」


 それから塔内部へと足を踏み入れた。今までの真っ白な部屋ではなく、色々な店が廃墟となってあった。


「……そういえば服が必要だったな」


「そう言えばそうですね…何かここにないでしょうか……」


「探してみるか」


 それから2人で廃店の中を探した。中には服屋。1層で見つけた食べ物が置いてあった店らしき残骸などがあった。


「きゅっきゅ!」


「なんかあったのか?ってマジか」


 小さな口に乾パンの入った袋を加えてやってきた。もしかしたら鼻もいいのかもしれない。


「何かありましたか?おもちさん」


 ………おもち?おもちってなんだ、おもちって……


「おもちってなんのことだ?」


 何のことかエルに尋ねると「しまった」という顔を作り、拗ねたように顔をこちらから背けた。


「あ……この子の名前です」


「おもちか」


「……なんですか?何かご不満でもおありですか?」


 今度はむっとした顔でこちらに向き直る。別に何かしたわけではないので誤り義理はないのだが……


「いや…何もありません……」


 得体の知れない迫力に気圧され何も言えなかった。…おもちか。おもちなのか。………かわいい。


「それで…服はどうするんだ?」


「そうでした。服を探していたんでしたね。こっちに来てください。一緒に選びましょう」


「分かった」


 それから服のある店の残骸までやってきた。残骸とまではなってないものの人が使っていた形跡が無いくらいまでは風化していた。


「……なんだこの服。こんな奇抜な服は俺には似合わないぞ」


「想像以上に似合わなくてびっくりしました……」


「自分で着ろと言ってそれはあんまりじゃないのか」


「すみませんでした」


 その服は白いタンクトップに黒いコートという奇抜な格好だった。悪いがこんな服着られない。


「悪いが自分で決めさせてくれ……」


「……わかりました…私も選んできますね…」


 ようやく服を見つけたのにも関わらずえらい目に遭ってしまった……




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