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第三層 episode.2

「さて……ここはどう行こうか…」


先ほどの歩道から20分程度歩いたところに川があった。上に登ってきたので結構高い。元々橋がかかっていたのだろうが橋が向こう側へと上がっている。これじゃ渡れない。

 向こうにあるレバーを引けばおそらく橋が降りてくると思うが残念ながらレバーまで到達するのは難しいだろう。


「どうしたもんか…あそこから行くしかないか…」


「きゅうぅ…」


だが、そこには「危険。立入禁止」と書かれた鉄の扉がある。この扉は川の水の出入りを監視する施設に繋がる扉みたいだ。               

 その施設は川を跨るように建っているのでここを通れば向こう側に渡れるだろう。


「……さて、この扉をどうやって開けるかなんだが…」


「きゅっ!」


「どうした?っておいっ!」


謎の生き物は俺の肩からドアノブに飛びつき下に降りていった。すると扉の下のちょっとした錆びて欠けている隙間から中に入っていってしまった。

 しばらく待っているとさっきの隙間から鍵が出てきた。カギ単体が動いてるわけではなく、どうやら謎の生き物が鍵を咥えて持ってきてくれたらしい。


「マジか。お前なんでもできるんだな」


「きゅっ!」


そう言って頭を撫でてやる。すると気持ちよさそうにきゅぅ〜んと鳴いて頭を手に擦り付けてきた。


「……さて、これで中に入れるな」


持ってきてくれた鍵で扉を開く。すると扉は錆びていたのかなかなか開かなかった。


「急いでるのに!邪魔だ!」


扉に思いっきり体当たりする。錆びていた扉が勢い良く開き、鉄製の橋に転がり込む。そのまま床に身体を強くぶつけたが特に痛みも無かった。

 それからその橋を渡り、水の監視所に入る。鍵はかかっておらず、すぐに入ることができた。中はもう長く使われていないのか埃っぽい匂いがした。


「……急ごう」


それから水の監視所を早々に抜け、血の跡を追って行く。特に大きな事件もなく進むことができた。

 進み始めで10分ほど走ると大きな建物があった。かなりの高さがあり、三層の天辺にある広い床へと通路で繋がっていた。


「……さて…早く…早く助けないと……」


そんな独り言を無意識に口から溢すと、俺はその建築物へと足を踏み入れた。

 幸い扉は閉まっておらず、簡単に中に入ることができた。中に入ると広い部屋があった。コンクリートでできた壁と壊れたコンクリートブロックが散乱していた。


「……なんだ…?あれ……」


「きゅっ?」


部屋の中を見渡すと壁の右端に監視カメラがついていた。左端にはでかいスピーカーもあった。こんな破壊された建物なのにも関わらずカメラがついているのはおかしい話だ。しかもしっかりと動いている。


『こんにちはショウマくん!君は懲りない男だなぁ……さっき殺したはずなのにどうして生きているんだい?』


件のスピーカーから凶器染みた声が砂嵐の様な音と共に流れてきた。


「……そんな事はどうでもいい。エルを返せ」


『まあまあ……そう焦るな…そうだ。じゃあこうしよう。僕たちは今この建物の最上階にいる。ここまで来れたら君にエルを返してあげよう」


「……いいだろう。だが、エルの安全を確認させろ」


『やれやれ…君は疑い深い男だな……ほら』


それから声の主が変わる。そこからはいつもより安堵に満ちたエルの声が聞こえてきた。


『ショウマさん生きていたんですね!』


「…心配をかけて悪かった。もう大丈夫だ。それより…あいつに変な事されてないか?」


『私は大丈夫です…それよりもショウマさんこそ撃たれたのに……」


『ああ…それは…まあこの事は後で説明する。少し待ってろ、すぐに助けてやる』


はいっ!』


『……それとショウマくん、もうひとつだけルールを作ろう。君が最上階に生きて来れたら……エルを返してあげるよ……』


「……どういう事だ」


そう聞くとぶつりとそのスピーカーは切れてしまった。


「……多分トラップがあるな」


どうやら俺を最上階に辿り着くまでに罠で殺す予定らしい。よっぽどエルのことを気にいってしまったのだろう。素直には返してくれなさそうだ。


「きゅぅ……」


心配そうな表情で肩から俺の顔を見つめてくる小さい生き物。


「……心配すんな。死んだりしないから」


「きゅっ!」


わかったと言わんばかりにコクンと頷く小さい生き物に心が癒される。


「……大丈夫。絶対助け出してやる…だから……待ってろ。エル」


「きゅっ!」


それから部屋の奥にあった階段で上の階へと移動した。

 するとそこにはオフィスがあった。しかし、ずいぶんと使われていないせいか荒れ果てている。そしてもうひとつ気になるものがあった。


「……あれに捕まったらゲームオーバーってことか……」


そこにはぎこちない動きでオフィスの中を歩くロボットがいた。長く使われていたせいかギシギシと音を立てて歩いていた。そしてその手には真っ黒なリボルバーが握られていた。あれに撃たれたら間違いなく死ぬだろう。

 もしかしたら小さい生き物が治してくれるかもしれないが、その保証はない。やはり撃たれないようにするのがベストだろう。

 しかも今は弾薬が1発もない。あるのはナイフ。それだけだ。拳銃をエルに渡していたが……おそらくダミアンに取り上げられているだろう。


「やるしかない。出来るだけ見つからないようにして…見つかったらナイフで対処する」


「きゅっ!」


それからオフィスへと足を踏み入れる。中にあるデスクは破壊された物。埃まみれになっているものと様々だった。


「……侵入者……排除スル」


敵意を露わにするロボットを尻目に俺はデスクの下に隠れつつ進む。しかし、一体どこに階段があるか分からないのでまずは階段の位置の特定が先だろう。


(………どこだ階段…全く、ここもテロ対策ように階段がバラバラに……テロ対策?)


よく考えたらこの建物はテロ対策のように階段がまばらに設置されているのだろうか?


(試す価値はありそうだな)


それからさっき来た道を戻り、下へ続く階段へと帰ってきた。そっとその階段の後ろに回る。


(階段あるじゃん)


そこには上へと続く階段があった。だが……


(……トラップか)


階段の3段目以降に赤外線センサーが取り付けられていた。電気がついていないのでよく目立つ。流石にこれに引っかかる馬鹿はいない。


(さてここをどうしようか……)


取り敢えず考えは二つある。1つ目はこの赤外線センサーの破壊。もしくは無力化させる。2つ目は諦めて別の階段を探すかだ。


(………ぶっ壊してやる)


結局考えた挙句破壊することにした。多分ダミアンは俺がここを通ろうなんて思わないはずだ。裏をかいて奇襲する。


(……どうやって壊すか…)


おそらく赤外線センサーで感知して壁の横側についている怪しい機械が爆発。爆発でなくとも何かしら妨害をしてくるだろう。

 むやみやたらに壊すとそのトラップが発動するかもしれない。


(………やるしかない)


俺はナイフをその機械と壁の隙間に入れてテコの原理で引き剥がした。メリッという音を立てながら機械は壁から離れる。


(特に……何もないな)


支障なくそのトラップを外すと俺はそのまま階段を一段飛ばしで登って行った。



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