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第二層 episode.4

episode.15

それから先ほどのシャッターのところまで戻ってきた。さっきまで閉まっていたシャッターが空いておりその先に地下への階段が続いていた。


「これでもうすぐ着くな……」


「どうされましたか?顔色が悪いですよ。それにさっきより目が…紅くなってます。」


「大丈夫だ。先を急ごう」


「はい……」


若干ゾンビウイルス(?)が効いているのかもしれない。自分で手足に命令したことがうまく実行できていない。

 少しゾンビのヨタヨタ歩きに少し似た様になってしまっている。


「……着いた。ここが地下の研究室か?」


「そうだな。でも研究室はこの廊下の先だ。とっととワクチン取って上に行こうぜ」


「分かった……」


「お前本当に顔色悪いな…大丈夫かよ……しかも目も真っ赤だぞ。ゾンビウイルス感染者によく見られる症状だな。」


「……問題無い。まだ1時間はある」


身体の中が熱い。まるで発火しているのではと錯覚するレベルの熱さだ。そんな熱と闘いながら目を歩く2人に追いつこうとする。

 だが、その足も自分の動かしたいように動かせない。気が狂ってしまいそうだ。


「………ショウマさん…」


「なんだ……?エル」


呼びかけられたので下に行っていた目線を上へと上げる。そこには端正に整ったエルの顔があった。

 その瞬間だ。物凄い食欲が自分の中から溢れ出そうになる。今、目の前にいる少女を食べたい。食べたい。食べたい……肉…肉……


「ショウマさん!」


「っ!………どうした…?」


「今……とても苦しそうにしてました…本当に大丈夫ですか……?もしかしてゾンビウイルスが……」


「心配するな……今…戻ってきたから」


さっきの俺はやばかった。一瞬でもう気が緩んでいたら目の前の少女。エルの血肉を貪っていたかもしれない。そう考えるとゾッとした。

 ゾンビになるまであと2時間もあるのにこんなにも効いてくるものだとは思わなかった。


「さあ……行くぞエル」


「……すぐに…治してあげますから」


「よろしく頼む」


それからウイルス研究室を見つけ、中に入った。

 中はなにやら得体の知れない赤いの液体が入ったフラスコや割れたフラスコ。試験管や血痕が大量にあった。どうやらここにもゾンビが入ってきたようだ。


「さて、どっかに生成済みのワクチンがあるはずなんだが……ピンク色のやつだ。手分けして探すぞ。おら、てめえも休んでねーで探せ!おめえのために探してやってるんだろうが!」


「……すまん」


ブレンダに叱責された。しかしそのおかげで気のせいかもしれないけど意識がはっきりしてきた。燃えるような熱も少し引いた気がする。おつつけ、俺。間違えた。落ち着け。


「血の方はあるんだがな……」


「どういうことだ?」


「あん?あー…言ってなかったっけか?まあいい。ワクチンの作り方はワクチンの…緑色のやつだ。でその原液にまだゾンビになってねえ人間に血液を1:3で混ぜて振ると出来るって…やっぱ言ってなかったみたいだな」


「聞いてないぞそんなこと……」


「わりぃわりぃ」


「ったく……で検討はついているのか?」


「まあな。多分この部屋の奥にある冷凍庫にあるはずなんだが……そこはいつも鍵がかかってたからな……」


「もう壊したらダメなのか?」


「アラームが鳴るぞ?」


「それはヤバいこともなりそうだな」


「だから出来ねえんだよ」


困った。あと30分程度しか残っていない。さっき少し良くなった体調も先ほどの熱と暴食が復活しかけていた。またエル。ブレンダを食おうとしかねてしまうかも知れない。


「急ごう……早くその鍵を見つけないと……」


「この部屋のどこかにあるはずだ。探すぞ」


「わかった」


それから20分程度探したが見つからない。そして俺の体調もそろそろ動くのもきつくなってきた。もう……間に合わない。あと……10分……


「エルちゃん…拳銃を貸して」


「……いやです。まだ1時間あります」


「知ってるか?エル……最後の1時間はな……一番キツイ時なんだ。もう死んだほうが楽だと思ってしまうレベルのな。しかもショウマは殺せと言ったんだろ?」


「……ショウマさん………いや…そんな…」


「早く……拳銃を貸して」


それから長い沈黙が流れる。そしてついにエルは震える手でゆっくりとポケットから拳銃を取り出した。


「…初弾は入っています……でも!」


「なに?」


「私に………私に撃たせてください」


ブレンダは眉を潜める。エルにショウマの撃たれる姿を見せたく無い一心で渡せと言ったのだが……


「わかった…」


「それじゃあ……ショウマさん」


「ああ」


エルはその震えた両手で拳銃を握り、こちらへ銃口を向けた。銃口が震えちゃんと視線が俺に向いていない。


「エル」


今すぐに目の前の少女を噛み殺してしまいたい欲望を必死に押さえながら俺はエルに声をかける。


「まず……俺の頭を狙え。そして右手でグリップを持ってその手を左手で包み込むように持ち右手を押し出す。そして左手でそれを抑え込むようにして持て。脇を閉めて……いい感じだ」


「……ショウマさん……」


「最後に1つだけいいか?」


「……なんでも言ってください。なんでも聞きます」


「今まで……短かったけど…ここまで連れてきてくれてありがとう。これからも元気でやってくれ」


俺の言葉を聞いた瞬間先ほどまで潤んでいたエルの目から涙が溢れ始めた。嗚咽を漏らしながら涙を零すエル。


「ブレンダ…お前にも頼みたいことがある……」


「…言ってみろ」


「エルを……エルを頼んだ……」


「……」


少し驚いたように目を見開いたブレンダはその首をゆっくりと縦に振って言った。


「まかせろ。先に逝け、ショウマ」


「待ってるぞ……じゃあエル……」


未だ泣き続けるエルの方に向き直り無理やり笑顔を作る。多分笑えてない。いや絶対笑えてない。でもそれでいい。


「俺を……」


言葉が詰まった。何故だろう声が喉から出てこない。出てこい。それで……全てが終わる。


「殺してくれ」


「………わかりました」


両手で涙を拭い、いつもは見せてくれなかった決意に満ちた目をしたエルは俺に拳銃向けた。


「さようなら。ショウマさん」


「おう」


ダガンッ!


銃声が1発。空薬莢が地面にカランと言う音を立てて床に落ち、転がっていった。








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