↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺が適当に作った秘密結社が、本当に世界を支配し始めていた』  作者: Toi
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/22

1-20 『第三勢力』

第20話 第三勢力


「黒の王が現れたから、七王会を抜ける」


第三王の言葉に。


劇場の空気が少し変わった。


ガレスは表情を崩さない。


ヴァルドも、さっきまでの軽い笑みを少しだけ薄くした。


レオンだけが。


素直に聞いた。


「なんで?」


第三王が見る。


「理由は話しただろう」


「いや、七王会を嫌ってるのは分かった」


レオンは指を立てる。


「でも、それと俺が現れたことって別じゃない?」


少し間。


第三王は答える。


「お前が、本当に黒の王なら別ではない」


「まだ俺もそこ確認中なんだけど」


「だから近くで見る」


「近くで?」


「ああ」


レオンが嫌な予感のする顔をした。


「……どれくらい?」


「しばらく」


「ざっくりしてるな」


第三王は気にしない。


「お前が書かれた通りの存在なのか」


一歩。


レオンへ近づく。


「それとも、書かれたものから外れる存在なのか」


さらに一歩。


「自分の目で確かめる」


セラがすぐにレオンとの間へ入った。


「近い」


第三王の眉が上がる。


「お前に言われる筋合いはない」


「私が監視してる」


「なら私も監視する」


「増やさないで」


レオンが横から口を挟む。


「俺の監視役、勝手に増えてない?」


「人気者ね」


「嬉しくない」


ヴァルドが笑う。


「面白くなってきたな」


ガレスが睨む。


「お前は黙っていろ」


「また?」


「まただ」


第三王はセラ越しにレオンを見る。


「私はノクスに入るつもりはない」


ガレスが即座に答えた。


「入れるつもりもない」


レオンが二人を見る。


「仲悪いな」


「三百年敵対している」


ガレスが淡々と言う。


「今日『抜けます』と言われて、では仲間に、とはならん」


「それはそうか」


「それに」


ヴァルドが口を挟む。


「七王会を抜けるのと、ノクスを信用するのは別だろ」


第三王が頷く。


「その通りだ」


「お前も信用してない?」


レオンが聞く。


「していない」


「即答」


「ノクスも私を信用していない」


「それは見れば分かる」


劇場の周囲。


対王装備。


構えた構成員。


誰一人として。


第三王から意識を外していない。


「じゃあ」


レオンが聞く。


「抜けた後、どうするんだ?」


「お前の近くにいる」


「またそこ?」


「ああ」


第三王は迷わない。


「私は、七王として生きることに疑問を持っていた」


左腕を見る。


焼けた痕。


「そして今」


レオンのノートへ視線を落とす。


「自分の人生が、どこまで書かれていたのかを知った」


レオンの表情が少し変わる。


第三王は続ける。


「なら確かめたい」


「何を?」


「私が七王会を抜けるのも」


一拍。


「黒の王と出会うのも」


さらに。


「全部、書かれた通りなのか」


レオンは黙った。


それは。


自分にも刺さる。


自分が今ここにいるのも。


ノクスと出会ったのも。


七王と関わり始めたのも。


本当に自分で選んでいるのか。


それとも。


どこかに書かれているのか。


第三王が言う。


「だから、お前を見る」


レオンは少し考える。


「もし俺も書かれた通りに動いてたら?」


「その時は」


第三王が笑う。


「失望する」


「勝手だな」


「七王だから」


「それ言うの嫌いなんじゃなかった?」


第三王が止まる。


レオンは笑う。


「自分で使うんだ」


「……癖だ」


「王歴長そうだもんな」


「二十年以上だ」


「そりゃ抜けるの大変そう」


第三王は少しだけ。


苦い顔をした。


⸻


「ところで」


レオンが周囲を見る。


「ずっと気になってたんだけど」


ガレスが見る。


「何だ」


「ノクスって、どれくらいデカいの?」


「答えられん」


「ほら」


「当然だ」


「じゃあ、何してる人がいるかくらい」


ガレスは少し考えた。


ヴァルドが先に答える。


「色々いるぞ」


「雑」


「戦う奴」


セラを見る。


「断章を取りに行く奴」


エルドの方を指す。


「古い記録ばっか読んでる奴」


自分を指差す。


「七王と殴り合う奴」


「最後だけ急におかしいな」


「そう?」


「そうだろ」


ガレスがヴァルドを押しのけるように話を継ぐ。


「ノクスは、七王会を倒すためだけの組織ではない」


「前にも言ってたな」


「ああ」


「目的は」


レオンが少し考える。


「書かれた未来に、人が縛られるのを止める?」


ガレスが頷く。


「そのために必要なことをやる」


「断章の回収」


「ああ」


「研究」


「ああ」


「七王との戦闘」


「必要なら」


「他には?」


「未来に書かれた災害の阻止」


「情報操作」


「避難誘導」


「七王会が先に動いた地域への介入」


レオンが目を丸くする。


「普通にめちゃくちゃ仕事多いな」


「秘密組織だからといって、毎日戦っているわけではない」


セラが言う。


「私も普段は調査や護衛の方が多い」


「夜哭ぶっ放してたけど」


「あの日が特殊」


「なるほど」


レオンは少しだけ。


ノクスの見え方が変わった。


今まで。


黒い服。


地下拠点。


七王会との戦い。


そんな派手な部分しか見えていなかった。


でも。


実際は違う。


情報を集める人間。


古い記録を調べる人間。


現地で人を逃がす人間。


七王の能力を分析する人間。


対王装備を作る人間。


そして。


ヴァルドのように。


七王そのものと戦える人間。


「だから三百年残ってるのか」


レオンが呟く。


ガレスが見る。


「何が」


「俺の設定だと」


少し笑う。


「ノクスって、強い奴が集まって七王会と戦うだけだった」


セラが呆れる。


「単純」


「十三歳だから」


「便利ね」


「でも」


レオンはヴァルドを見る。


「実際は、一人が弱くても関係ないんだな」


ガレスの目が少し細くなる。


レオンは続ける。


「一人で勝てないなら、装備作って」


対王装備。


「情報集めて」


エルドたちの研究。


「人数集めて」


周囲の構成員。


「それでも足りなきゃ」


ヴァルドを見る。


「こういう変なのぶつける」


「最後だけ雑じゃない?」


ヴァルドが笑う。


「だいたい合ってる」


第三王が静かに言った。


レオンが振り返る。


「ノクスは」


第三王は対王装備を見る。


「七王より弱い人間が多い」


「だが」


視線がヴァルドへ向く。


「七王と同じ場所に立てる者もいる」


ヴァルドが肩をすくめる。


「持ち上げても何も出ねえぞ」


「褒めていない」


「冷たいな」


「そして」


第三王はノクスの構成員たちを見る。


「足りない力を、何世代もかけて埋めてきた」


レオンが少し笑う。


「七王会より、そっちの方が俺は好きかも」


ガレスが眉を寄せる。


「簡単に信用するな」


「好きと信用は別だろ」


ガレスが止まった。


ヴァルドが笑う。


「こいつ、分かってるじゃん」


「だから仲良くならないで」


セラが言う。


「なんでそんな嫌がるんだよ」


「疲れる未来が見えるから」


「未来を決めつけるの、ノクス的にいいの?」


セラが黙った。


レオンが笑う。


「勝った」


「何に?」


⸻


空気が少し緩んだところで。


レオンが口を開いた。


「一つ」


第三王が見る。


「聞いていいか」


「何?」


「俺は、なんて呼べばいい?」


「第三王じゃないのか?」


「七王会を抜ける」


「じゃあ第三王じゃなくなる?」


第三王は少し黙る。


「王位そのものを捨てられるかは、まだ分からない」


「面倒だな」


「七王とはそういうものだ」


「じゃあ名前」


第三王の目がわずかに動く。


「名前?」


「ああ」


「あるだろ?」


「当然ある」


「じゃあそれでいいじゃん」


周囲が。


少し静かになった。


レオンには意味が分からない。


「何?」


第三王は。


しばらくレオンを見ていた。


そして。


小さく息を吐く。


「リゼ」


「ん?」


「私の名だ」


レオンが瞬きをする。


「リゼ?」


「ああ」


第三王。


灰の王。


七王会の一角。


そんな肩書きではなく。


ただ。


リゼ。


レオンは少し笑った。


「じゃあリゼで」


「軽いな」


「名前呼ぶのに覚悟いる?」


「普通、七王をいきなり名前で呼ばない」


セラが言う。


「本人が教えたんだろ?」


「そうだけど」


「ならいいじゃん」


リゼは。


少しだけ呆れたように笑った。


「やはり、お前は私の知っている黒の王とは違う」


レオンの表情が止まる。


また。


その言葉。


第七王も言った。


「待って」


「何だ」


「今の」


レオンが一歩近づく。


「第七王にも言われた」


リゼの目が細くなる。


「何を?」


「俺の知ってる黒の王とは違うって」


劇場の空気が変わった。


ガレス。


セラ。


ヴァルド。


全員がリゼを見る。


レオンが続ける。


「お前も」


少しだけ声を落とす。


「俺以外の黒の王を知ってるのか?」


リゼはしばらく黙った。


そして。


胸元から一枚の紙を取り出した。


古い断章ではない。


その写し。


「知っている、というのは正確ではない」


「じゃあ何」


リゼは紙を差し出す。


そこには。


短く書かれていた。


《黒き王は、必要ならば千人を捨て、一万人を救う》


レオンの笑みが消えた。


自分の《黒王戦記》には。


そんな文章はない。


「これが」


リゼが言う。


「七王会に伝わる黒の王だ」


レオンは紙を見る。


必要なら。


千人を捨てる。


自分とは。


違う。


「第七王もこれを?」


「おそらく」


だから。


《俺の知っている黒の王とは、少し違う》


レオンは。


自分の鞄へ視線を落とした。


自分が書いた黒の王。


ノクスが待つ黒の王。


七王会に伝わる黒の王。


そして。


自分。


全部が。


少しずつ違う。


「……黒の王って」


レオンは小さく呟いた。


「結局、誰なんだよ」


今度は。


ヴァルドも。


笑わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。